キリマンジャロ登山のチップの相場は?なぜ払う?知っておきたいチップの考え方

キリマンジャロ登山で頭を悩ませるのが、チップじゃないだろうか。なにせ日本にはチップ文化などというものはない。

私自身、事前の下調べ不足ということもあってか、もうちょっと払っておけばよかったなあと少し後悔した。

チップは単に登山客の心づけというよりも、キリマンジャロのポーターの生活にも影響する問題である。そんなわけで、登山前に知っておきたいチップの相場やそもそもなぜ高いツアー代を払っているのに、チップを払うのかという点について考えてみる。

ポーターたちの働く環境

まず知っておきたいのが、全登山客がお世話になるポーターたちの労働環境。

はっきり言ってブラックである。

20キロ近くの荷物を持って、好きでもないのに山を登らなければならない。かたや登山客が自分で持つ荷物は、せいぜい5キロ程度である。

登山に必要なテントや食料などは、すべて現地のポーターが運んでくれるのだ。

5~8日ほど登山して、ポーターの日給は約900円程度である。深夜のコンビニバイト時給よりも低い。

そうしたブラックな環境を改善しようとしているのが、KPAP(キリマンジャロ・ポーターズ・アシスタンス・プロジェクト)KIATO(キリマンジャロツアー協会)と呼ばれる現地のNPO団体。

どちらもキリマンジャロポーターの労働環境改善や啓発につとめている団体だ。

KPAPによると、ポーターの労働環境の目安は、以下のようなものだという。

キリマンジャロポーターの労働環境

 

・1日あたりの最低賃金は20,000シリング(約900円)
・給料は、登山終了後の2日以内に支払われる
・登山中は1日3食付き
・運ぶ荷物は20キロ前後
・会社が登山中に発生した病気や怪我の医療費を保障
・会社が登山に必要な登山用具の支給

ブラック企業を避けるべし

とはいえ、上記は目安にしか過ぎない。観光業が盛んなタンザニアには多くのツアー会社がひしめいている。中には上記を守っていない会社もある。

だからこそ、まず我々にできることは、労働基準をちゃんと守っているツアー会社を選ぶことである。

安さを追求するあまりに、ブラック企業を選んでしまっては、登山客の安全にも関わるし、ポーターたちも過酷な状況で働かされることになる。

だからこそ、登山客には単に登山をするだけでなく、ホワイトな環境で登るという、それなりの倫理感が必要とされる。

じゃあどうやって、ホワイト企業を見極めるのか。

目安になるのが、先ほどのKPAPやKIATOが公表しているホワイト企業一覧だ。ここに掲載されている会社は、団体が設定する基準を満たしていることになっている。

KIATO ツアー会社一覧

KPAP ツアー会社一覧

私が利用したトップクライマーズ・エクスペディションもこの一覧に入っている。

チップの相場は?

チップは、登山の日数と同行するポーターやガイドの人数で決まる。それを登山客の人数で割ると1人あたりのチップが算出される。

こちらがツアー会社や、KPAP、他の登山客の証言をもとにまとめたおおよそのチップの相場。

キリマンジャロ登山チップの相場(1日あたり)

ガイド: 20ドル
アシスタントガイド:12~15ドル
料理人:12~15ドル
ポーター:6~10ドル

私の場合は、6日のチップの合計が800ドルとなった。1日あたり133ドルの計算である。3人グループで行ったので、800ドルを3人分で割ると1人あたりのチップは約266ドルである。

とはいえ、チップにはそれぞれの考え方がある。見知らぬ人とグループで行った場合は、どのようにチップを捻出するか話し合うとよいだろう。

同じポーターでも、登頂専門のポーター、登山客にご飯を出したりモーニングコールをするウェイター、ポータブルトイレをレンタルした時につくトイレ専門ポーターなどもいる。

いずれも彼らは荷物を運ぶという通常の仕事に加え、プラスαの仕事をしている。よって通常のポーターよりかは、チップ代を上乗せすべきだろう。

チップの渡し方

基本的にチップは、封筒などに入れて現金で、1人ずつに渡すべし。同じ現金でも現地通貨より、ドルやユーロの方が喜ばれる。

モシの町でドルやユーロをおろすことはできないので、現金を十分に持っていくべし。また、タンザニアのATMは引きおろし限度額が2万円弱であり、手数料が毎回400~700円ぐらいかかる。

チップをまとめて大きな額で払ってしまうと、受け取る側もちょっと困る。例えば、ポーター2人分のチップを100ドルで払うとか。

チップを支払うタイミングは、登山最後の食事時や下山ゲート、登山後にオフィスに戻ったときである。

あまり好ましくないが、ガイドに代表して渡す際には、必ずポーターたちの前でガイドがいくらもらったかを発表してもらうとよいだろう。ガイドによる横領を防ぐためである。

私は事前にポーターたちの人数を把握しておらず、現地で予想の5倍以上もいるポーターの人数におののいた。3人グループだったのだが、2人のガイドと13人のポーターがつき、総勢15名となった。もちろんグループの人数が増えれば、ガイドやポーターの人数も比例して増える。

チップ授与の儀式でも、大きい紙幣しか持っておらず、やれ細かい金額がない!分けられない!などと言って、グダグダになるのであった。

そうならないためにも、事前にポーターやガイドの人数を確認し、細かい現金と封筒を持っていくと、スマートなチップ授与が行えるだろう。

いずれも彼らの仕事ぶりは目をみはるものである。それに登山客は、ポーターやガイドなしでは決して登頂することはできないのだ。

これは私自身の考え方でもあるが、チップは彼らの仕事のモチベーションにもなると思う。ただでさえ、こちらからすると、ブラックすぎる環境で働いているのだ。いいサービスをしたら、それなりの報酬を受け取ることができる。それがなければ、過酷すぎるこの仕事はやってられない。

チップは決して義務ではないけれども、キリマンジャロでは単なる心づけというよりかは、彼らの生活を支える重要な資金になることも忘れないでおきたい。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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