BTSがサウジでコンサート。中東でのK-POP人気を考えてみる

サウジアラビア観光ビザ解禁前後に、サウジビザに関してTwitterやブログを通していくつか質問を受けた。

世の中にはサウジ旅行に熱心な人もいるものだと思いきや、どうも彼女らのお目当ては、サウジアラビアではなくコンサートらしい。

そのコンサートというのが、韓国のアイドルグループBTSのコンサートである。

中東、特に湾岸諸国でのK-POP人気は相当である。韓国にさほど興味を持っていない鈍感な人間ですら、気づくレベルである。

例えばドバイでは、ドバイ名物の噴水ショーで、EXOの曲が使われている。もはやドバイ政府公認といっても過言ではないだろう。

ちなみに他は、マイケルジャクソンやディズニー、ピンクパンサーといった世界でもなじみがある曲である。

そんな顔ぶれの中に、K-POP。

これはもう、K-POPが世界的に認知されているということの証左でもあろう。

韓国人男性のルックスは、いわゆる筋肉やヒゲがあって男らしいマッチョメン☆が好まれるこの地域の傾向とは真逆である。それでもこの人気ぶりだ。

韓国というのは、とにかくグローバル志向である。人口が少なく、今後生き残るには世界で戦っていくしかないと覚悟した彼らは、とにかく世界で売れるための戦略を展開した。

再びドバイの例になってしまうが、ドバイには現在1万人以上の韓国人が住んでいる。その数は増加する一方で、日本の在住者は約3,000人とほぼ横ばい。

莫大な広告費を使い、サムスンは各国で広告を展開している。

ドバイのサムスン広告
ドバイにあるサムスンの巨大広告。車の大きさから、広告の規模感を察していただきたい。

サウジアラビアメッカにあるサムスン広告
サウジアラビアのメッカにあるサムスンの広告。世界中からイスラーム教徒がやってくるという、認知度向上にはもってこいの場所。キャッチコピーは「神はあなたの祈りを受け入れるだろう」という神がかったもの。

K-POPが世界中に広まるようになったのも、世界でうけることを意識したサウンドやダンスを取り入れたものだからだろう。

一方で、J-POPは、国内需要だけでもまだやっていけるので、そこまで世界を意識する必要もないという姿勢。

世界を意識したファンサービスもすごい。イスラーム教徒にとっては大事なラマダンの時期には、「ラマダン・カリーム」とアラビア語で、ラマダンのお祝いビデオを公開。

若干読まされている感はあるものの、それすら消し去るカリスマ性。たったこんだけのことなのだが、自分たちの言語を話してくれた!というのは、ファンにとっては嬉しいものなのである。

話は戻ってBTSのコンサートである。ファンのいるところにアイドルありといわんばかりに、BTSはサウジでコンサートを行う。前回開催された別のK-POPグループのコンサートチケットも即効で完売していた。

一方で、世界的な歌手たちにとってサウジでコンサートを行うことは、一筋縄でいかないこともある。

たとえば、アメリカの人気歌手ニッキー・ミナージュは、今年7月にサウジで予定されていたコンサートの中止を発表した。

知らない人のためにいうと、ニッキーという人は、林家パー子を40歳ぐらい若くして、ものすごい強そうなパリピにした感じである。

中止の理由は、「うち、まじで女性の人権とかLGBTについて真剣に考えてるんで。その意味で、サウジでコンサートなんかできまへんて」ということらしい。

改革やなんやと表向きはいい顔をしているサウジだが、人権団体からは「なっとらん!」と批判を浴びている国である。ちなみにドバイがあるUAEもその対象になっている。

人権侵害を指さされる国でコンサートを行うことは、その国の姿勢を認めることにもなるらしい。

その点についてはBTSも、「サウジアラビアでコンサートをする決断は、容易ではなかった」と話している。

ともかく今回のコンサートは、無事開催されるようで何よりである。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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