政策や世間の批判はともかく、私は米トランプ大統領に好感を抱いている。
国を代表する大統領としてというよりも、世界にそのトリッキーぶりを発揮する奇人として好きなのである。
そしてそんな奇人を国のリーダーとして選んだ、奇妙なる国アメリカも好きである。
世の中正義や正しいことがまかり通るとは限らない。現実は小説よりも奇なり、そんな世界を見るのが好きなのである。
こんなトランプ大統領だが、英語に関しては「非常にわかりやすい」という噂を聞く。モチベーションの出所は一切不明だが、YouTubeで英語を勉強している私の母親も「トランプの英語はなぜだかわかりやすいのよねー」などと言っている。
なぜトランプ大統領の英語はわかりやすい?
確かに、ヒラリー・クリントンやオバマ前大統領と比べても、聞き取りやすい。なぜか。それは、彼が使う表現や単語がシンプルだからである。
シンプルといってもどれぐらいシンプルなのだろうか?
それを実際に調査した人がいる。
トランプ大統領がニュース番組に出演したときのこと。アナウンサーがトランプ氏に対して移民政策について聞いた。その時のトランプ氏の回答を書き起こしたのが以下である。
トランプの演説全文
トランプ氏が使った単語は1分間で220単語。その単語を、音節の数で分けていくと、172単語が1音節の単語だったのだ。音節とは、母音を中心とした音のまとまりで、1音節につき1つの母音が含まれている。
要は、音節の数が少ないほど短くて発音しやすく、かんたんな単語である。
誰でもわかる簡単な単語だけを表示したもの
単語を見ると、近頃の小学高学年でも知っていそうな単語が並んでいる。そのほか39単語が2音節、4単語が3音節であった。言い換えれば、小難しい単語がほぼ出てないということになる。
トランプ大統領の英語力は小学生レベル?
米タブロイド紙「The Globe」が、2016年の米大統領選の候補者の英語力を学年別で置き換えたのが、以下の図だ。
トランプ大統領は4th。つまり小学校4年生レベルで、もっとも低い学年の英語力になっている。ヒラリー・クリントンの英語力は7.7th。日本でいえば、中学生レベルの英語である。
我々の大統領はアホか、とアメリカ国内では嘆く声もあるが、このわかりやすさこそが、多くの指示を勝ち取るのに貢献したのではないか、と私は思う。ネイティブであっても、誰もが難しい言葉を理解できるとは限らない。
米ワシントンポストは、「40%以上のアメリカ人は、基本的な英語力しかない。他の政治家もトランプを見習うべきだ」とも言っている。
言葉よりも重要なもの
トランプ大統領といえば、独特のジェスチャーや体の動きも特徴的である。適切な言葉を使うことよりも、声のトーンやボディランゲージ、簡潔に話すことの方が重要だとする研究もある。
ボディーランゲージや声のトーンを加えた方が、聞き手にとって記憶に残りやすいからである。逆にいえば、いかにすばらしい言葉を選んで、たんたんとしゃべっても、ほとんど人の記憶には残らないということである。
コミュニケーションは伝わってなんぼ
ネイティブや英語が流暢な人々と仕事をしていると、無意識のうちに「もっとこなれた英語を使わねば」と思うようになっていた。
実際に、英語ネイティブの人々が使う表現は、聞きなれないものも多い。イギリス英語、アメリカ英語、インド英語など独自の表現を差し引いてもだ。
わからないと、こちらがアホみたく思える。一方で英語がわかりづらい、といって「よくわからない人」といってこちらから距離感を作ってしまうことがある。
けれども、英語が聞き取りやすい人だと、お互いにちゃんと理解ができるので、ぐっと距離が縮まる気がする。
ついつい、人間というのは知識を身につけるほど、それを発揮するために、自己満の表現法に走ってしまいがちだ。
けれども、英語力が小学生レベル!と言われながらも、大半の国民の指示を得ているトランプ氏を見ていると、表現は誰にでもわかりやすく、簡潔にしなければいけないと思うのだ。これは、ビジネスの場でも大いに役立ちそうである。