誰もが一度は思うんじゃないだろうか。有名人になってワーキャー言われたい。
そんなささいな願望を叶えてくれるのが、パキスタンである。
パキスタンはインド並みに観光資源が豊富だが、危険だとかテロだとかいうイメージが先行しているため、訪れる外国人は少ない。
なんの観光資源もないのに、観光立国になっているドバイとは大違いである。
とあるソースによれば、2018年度に観光ビザでパキスタンに入国した外国人は1.7万人。2億人以上の人口を誇る国からすれば、ほぼゼロに等しい数字である。
というわけで、パキスタンにいると外国人は非常に珍しい生命体と化す。多くの観光客が訪れる北部はともかく、ラホール以南ともなるとその数はぐっと減る。
ラホールの観光スポットやモヘンジョ・ダロなどへ行くと、中国人でなかろうがなんだろうが、とにかく人々の注目の的になるのである。
ただ歩いているだけで、人々が「えっ?」というような顔でこちらをみてくるし、中には背後からやってきて勝手にスマホで、写真撮影を始める輩もいる。ずっと後をつけてきて、「写真を撮ってください!」という人もいる。
5分ほどその辺にアイドリングしてると、人だかりが発生する。スマホを持ったキッズが大量に押し寄せて、次から次へと「写真を撮ってくれい!」「スロモ!スロモ!」などと言って、動画を撮影し始めるのである。
全盛期のマイケルジャクソンさながらである。
よって観光地では、写真撮影に30分ぐらい費やされることになる。次々と写真撮影に応じるのだが、向けられるスマホ画面に映っている自分が大幅に加工されて、もはや誰?という感じである。技術の進歩を感じる。
この国では貧しい人々が多いとは言え、スマホだけは誰もが持っている。安全な水や空気が簡単に手に入らないと言うのに、スマホだけはある。そしてそのスマホは、OppoやRealmeと言った中国ブランドの格安スマホである。
日本は、世界的に見ても以上にiPhone所有率が異常に高い国である。ブランド好きなのか、アメリカ好きなのかは分からない。
他の国では、よほどのガジェット好きか金持ちぐらいしか持たないiPhoneを、あらゆる層の人間が持っている光景は不思議である。
よって、あらゆる場面がiPhoneユーザーに最適化されており、アンドロイド所有者にとっては、少々生きづらい環境にもなっている。例えば、コロナ禍に帰国した際に、アプリのインストールチェックがあるのだが、案内資料がiPhoneだけになっていたり。世界基準で見れば、アンドロイドユーザーの方が多いというのに。
そもそもなぜ外国人であるだけで、こんなに人気になってしまうのか。それは、多くのパキスタン人が、生で外国人を見たことがないからである。外国人と言えば、映画やテレビの中の人。つまり、日本で言うところの芸能人に当たる。
そんな映像でしか見たことがない人間が、リアルにいる!となると、そりゃあ人だかりもできる。システムとしては、日本と同じなのだ。
これが団体で旅行をしていれば、写真撮影のお願いは分散されるので、一人当たりの負担は減ることだろう。しかし、外国人1人でノーガードで歩いた場合には、すべての写真撮影に1人で応じなければいけない。
あまりにも人数が多くて、「すまん!次の移動先があるから撮影は無理だわ!」と言う、レッドカーペットセレブにしか許されない、セリフまで吐いてしまう。
ちなみに現地のパキスタン人と行動していると、話しかけられることはほとんどない。
しかし、楽しいのは初めの数日だけで、慣れてくるとやはり負担になる。外に出るのすら億劫になる。なにせ外に出るだけで、ジロジロと見られるのだ。
パキスタンでは有名人体験もできると言うことで、1つの観光体験としてお勧めしたい。