サウジアラビアがあるアラビア半島といえば、世間では石油と砂漠というイメージぐらいしかない。
よって、多くの人は、そんな場所にたいそうな歴史があるとは、思ってもいないだろう。むしろ、成金の新興国じゃん?と、揶揄されることの方が多いかもしれない。
というのも、この地域で歴史的な遺跡が見つかるようになったのは、ごく最近のことだからである。
石油が見つかるまでは、この地帯をのさばっていたのは、砂漠の遊牧民たちであったし、「まさか、あんな砂漠にねえ?」と誰もが思っていた。
けれども、フタを開けてみると、古代交易の跡地だったり、メソポタミア文明に匹敵する文明が存在したり、ホモ・サピエンスの化石が見つかったりと、先史時代以前の歴史があったということに気づかれされる。
1万年以上前の人類が残した岩絵
世界遺産となったハーイル地方の岩絵もその1つである。ハーイル地方は、サウジアラビアの北西部に位置する。
首都リヤドからは車で、6時間ほどかかる。岩絵があるのは、ジュッバと呼ばれる町だ。
ジュッバはこじんまりとした町で、辺りは広大な砂丘に囲まれている。道すがら、砂漠の遊牧民であるベドウィンたちのテントを見かける。
もはやこの地域で、べドゥインというのは、 “昔の人”や”過去の暮らし”という位置付けであるが、現役で遊牧民をやっている人もいるらしい。
ジュッバの町外れにあるのが、旧石器時代から青銅器時代にかけて、人類が描いた岩絵である。現在の人気の無さからは想像しがたいが、この地が砂漠化する前、この地は水が豊かなオアシスだったという。
岩絵を見るには、ビジターセンターに立ち寄り、鍵を開けてもらう必要がある。
岩絵がある岩山。周りはフェンスで囲まれている。このあたりの岩山一帯に、岩絵が描かれている。
敷地内に点在する岩山には、様々な場所に岩絵が書かれている。それらは、当時の人々の生活スタイルだけでなく、信仰や死生観なども伝えるという。
ラクダや牛が描かれている
どう見てもダチョウなのだが、ダチョウもこの地にいたのだろうか
牛と人。その昔、牛は豊穣の象徴であったらしい
現地の人々がマリク(アラビア語で王という意味)と呼ぶ岩絵。他の岩絵に対して、かなり高い場所に描かれており、王冠をかぶったような姿なのでそう呼ばれている。
ジュッバの岩絵を見ていて思い出したのが、イエメンにあるソコトラ島で見た同様のものである。私が訪れた数週間前に発見されたという。
一応、古いことは古いののだが、いつの時代のものかははっきりしない。
ハーイル地方の岩絵。人っぽい?
イエメンのソコトラ島で発見した岩絵。先の岩絵となんか似てる。
サウジアラビアとイエメンという近さを考えると、同様のものがあってもおかしくはないはずだ。
そんな遠くの歴史へ思いをはせることができるのが、このハイール地方の岩絵だろう。
岩絵を見に行く時の注意点
ジュッバの岩絵近くには、ビジターセンターがあり、ここの係員に岩絵のゲートを開けてもらう仕組みになっている。ビジターセンターは、金曜日は休日。その他の曜日は、9時から15時までオープンしている。
ジュッバの岩絵を見に行くには?
岩絵があるジュッバへは、公共の交通機関はなく、移動手段は車のみ。最寄りの町であるハーイルからは車で1時半の場所にある。
ジュッバは小さな町なので、タクシーなどはない。よって、ハーイルでタクシーをつかまえ、岩絵で待機してもらい、再びハーイルに戻るという形になる。
SAPTCOのバスステーション横にタクシー乗り場があるので、ここでタクシーをつかまえる。ジュッバに行きたいといえばOK。
ウーバーの運ちゃんは、遠すぎて嫌がるので、おとなしくここでタクシーを拾った方がいい。タクシー料金は交渉制で、待ち時間も含めて、300~400リヤル(約9,000円から1万2,000円)ほど。
岩絵は長くて1時間、30分もあれば見て回ることができる。岩絵トリップは4時間もあれば十分だろう。
最寄りの町ハーイルとは?
ハーイルはこじんまりとした町だが、市内にはモールがいくつかあり、遺跡や博物館もある。ただし、シーズン中以外は閉まっているケースも多々。特に見どころとなる場所があるわけではない。
岩絵目的ならば1泊で十分。市内の中心地にバスステーションがあり、市内から20分ほどの場所に空港があるので、他の都市間とのアクセスは便利。