海外生活でストレスを感じている人へ。日本人が海外適応するのに絶対的に不利な理由

どんな国であっても、日本人が海外生活で苦労する、ストレスを抱えるという話はよく聞く。深刻な場合だと、移住先の国にうまく適応できずに精神的な病気にかかってしまうというケースもある。

これは日本人のみならず自国意外の国で暮らすすべての人に当てはまるのだろうか?それとも個人の性質によるものなのだろうか?

そうしたことを考えながら海外で暮らしていると、どうも日本人であるがゆえに海外生活の適応に苦労している点も多いのではないかと思うようになってきた。

今までの海外適応プロセスの中で感じた「日本人だからこそ」ストレスを感じるのではないかという点をまとめてみたい。

1.過剰な物質と便利さ

文化や言葉の壁が一番の壁と感じる人が多いかもしれない。けれども、気づかぬうちにモノに囲まれた日本の暮らしが、海外に出た時のストレス要因になるのではないか。これは、「日本人の海外不適応」の著者、稲村博氏も指摘しているところである。

同書は海外で生活する日本人をいくつかのパターン(駐在、駐妻、留学生など)に分けた上で、日本人が海外で適応できない理由を学術的に論じている興味深い本である。

発行は昭和55年とかなり古いが、現代の日本人の海外生活にも通じるところがあり参考になる。

あらゆるものが短時間で、身近に手に入る日本。コンビニはその主たる象徴だろう。日本(特に東京)であれば、大概安くてうまい飯がどこでも食べられて、コンビニに走れば、夜中でも早朝でも大概のお目当てのものが手に入る。

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自宅の冷蔵庫にしたいセブンの品揃え

こんな日本では当たり前の生活が海外では当たり前ではなくなる。些細なことだけれども、意外とストレスになる。むしろ小さすぎて、潜在的にはストレスになっていてもストレスと認知していない人もいるのではないか。

それは現地で日本食が調達できないというレベルにはとどまらない。

私の場合、日本食はおろか安くてうまい飯は近所にないし、コンビニにいっても失礼ながら食欲が全くわかない1回食べたらもう食べたくないと思うデリカッセンしか並んでいない。

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乾いたパサパサのパンとケチャップが真ん中に堂々と君臨するドバイのとあるコンビニ

スーパーで食材を買うにしても、1つのスーパーですべてが揃うことはない。肉はこの店で、野菜はこの店でと複数掛け持ちしてようやくお目当てのものが手に入るのである。

さらには、同じ店の同じ商品であってもクオリティは行く日によってまちまちで、先週はきれいな野菜だったのに、今週は萎れている、もしくは半分腐っているということもよくある。だから毎回が運試しなのである。

そのうちに、このスーパーは何時頃仕入れをするから、新鮮な野菜を買うには何時頃行くべきという戦略的スーパー通いをしてしまうのである。

在庫システムがうまく作用していないのか、しょっちゅう品切れがあり、あてにしていた店でも、しばらく在庫切れでいつもの商品が手に入らないことも日常茶飯事だ。

さらに日本にはアマゾンという、すでに日本人の大半がなくしては生活できないであろう素晴らしいインフラがある。

ドバイにも一応それまがいのものがあるが、何せ商品の選択肢が初期のアマゾンみたいに特定のカテゴリしかないし、サイトもイマイチで購買意欲がわかない。

食料品意外で、あれが欲しいと思ってもネットの選択肢は少ないし、とにかく世界一でかいモールをヘロヘロになって探す勇者になるぐらいじゃないとお目当てのものが手にはいらないのである。1つモノを買うのがこんなに労力のかかることだとはということを思い知らされる。

このようにあげればキリがないのだが、決してこれがドバイのせいだとは思っていない。世界は多分大体こんなもんなんだろう。むしろ日本が異常すぎるほど便利なのだと考えるべきだ。

そうあまりにも便利すぎる生活に慣れてしまった日本人は、普通レベルの生活をするにもいちいちストレスを感じるのである。

2.内向的な性格の日本人
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驚くなかれ。16personalitiesの調査によると、日本人は世界で一番内向的な人が多い国なのだ。内向的な人間は社交的な場が苦手であるし、苦痛にすら感じる。

一方で世界一内向的な国からすると、すべての国が外向的人間が多い国になる。つまりには内向的人間にとっては行きづらい環境なのである。

内向的人間として、いかに日本は暮らしやすい国だったかとしばしば感じることがある。一人で行動する人が多くて、社会もお一人様を受け入れるあたたかく迎え入れてくれる。

週末家にテレビを見ていた、寝ていたというだけでも、「週末何した?」と聞かれて楽しい週末を演じる必要もない。

3.日本語というハイコンテキストな文化

日本語が「あ、うん」に代表されるように1を聞いて10を知るというコンテキストな言語に対し、英語やヨーロッパの言語はローコンテキストと呼ばれる。

つまりは1じゃわからんから10説明しろということで、なるべく多くの情報(というか全部)を言語化して伝える必要があるのだ。

下記の表を見ると、日本は一番といってもいいぐらいハイコンテキスト文化のトップに位置づけられている。一方で、対極的なのがアメリカやカナダ、オーストラリアなど日本人の間でも人気の移住先である。

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出典:The Culture Map: Breaking Through the Invisible Boundaries of Global Business

留学中アメリカ人に囲まれて、なんだか違和感とストレスが混じり合った気分になっていたのは、この対極のせいなのかもしれない。

私はアメリカに住んだことはないが、やはりアメリカ人というのはなんとなく苦手である。現在アメリカやカナダに在住している人は、かなり大変なのではないかと察する。

この文化の違いはよく語られているので、そうかと思われるかもしれないが、実際にやってみるとその違いを痛いほど痛感する。

具体的にいうと、日本語では1で済んだものの、10も50も言語化して説明しなければいけないのである。日本だと、「そんなに言わんでも分かるわ」と文句を言われるぐらいのことをするわけである。

まさに天皇の人間宣言を受けた日本人のような心境である。え、今まで神だと思っていた天皇を人間としてみなしていいのか・・・といった感じで、日本だとうざがられるけど、こんなに全部説明しちゃっていいんだろうかという気持ちになる。

コミュニケーションにやたらと時間と労力がかかる、そして時にはミスコミュニケーションが発生するというストレスはかなりのものである。

自分が当たり前だと思うことも、バックグラウンドが違う相手に対しては当たり前ではないので、いちいち説明して理解度を同じレベルにもっていかなければならないし、相手のいうことも日本流に推測するのではなく、何度も確認しなければならない。

私自身、このカラクリを理解して、実行するまでにかなりの時間がかかった。

これができるまでには、「なんで理解してもらえないの?」「なんでわかんないの?」といったストレスばかりがたまるばかりであった。

4.日本は世界からすれば変わり者

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よくも悪くもあるが、地理的にも島国という他国と隔離された土地で、日本はほぼ単一民族で成り立っている国である。またそれ故、異分子を排除し、同じであることを良しとする風潮もある。であるから、周りとそぐわない意見や行動は煙たがれる。

日本人は自分たちが特異であることに気づいていない。日本人は当たり前だと思っているが、実は自分たちこそが変わり者なのである。そして日本人が変!という人間こそが実は世界では普通だったりする。

実際、国際的な政治学者であるサミュエル・ハンチントンの著『文明の衝突』にて日本は極めて独自性が高い特殊な民族と言わせしめているぐらいだ。

大多数が普通だとすれば、少数派は変わり者である。世界的に見れば日本人は変わり者なので、そんな変わり者が普通の世界に溶け込むのに相当な労力を要することは見えている。

日本という社会で生きるために形成した習慣や考え方が実は海外での適応を阻む要因になっていたというのは、皮肉なもんであると我ながらに思う。

終わりに

日本社会に適応しようとして日本人であろうとすればするほど、世界の適応から離れていく。これが今に至るまで、日本の文化や習慣を引っ剥がしながら海外に適応していくプロセスで私が一貫して感じてきたことだ。

もし海外生活でストレスを感じている人がいるならば、不適応な状態は必ずしも自己の性質のためではないのだと知ってほしい(私も早く知りたかった)。

あくまでも日本文化や生活をしょっているがために、ストレスに感じているのだという見方もあるのだと。

こうした適応のストレスは具体的な解決策が見つからないがために苦しむこともあるが、日本文化が移住先の文化とどう違うのかということを客観的に俯瞰することもストレスを軽減する1つの策だということを知っていただければ幸いである。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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