外国人に教えられた日本人が知らない日本の歴史

異国の人と話すことは、驚きの連続である。

そんな価値観があったんだ!という衝撃に見舞われることもあれば、日本とはまったく違う価値観により、日本ってどうなんだろう、と己の出自を見直す機会になることもある。

社会学者の上野千鶴子は、こんなことを言っていた。

価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれる

そう、200カ国以上の人々が住むUAEで働くことは、異なる価値観や文化、人への接触の連続であり、そうした視点で日本についてみてみると、また違うものが見えてくるのである。

日本人が知らなかった歴史認識

歴史もその1つだ。

私は大学受験の時に、日本史を選択したので、日本史に関しては人並みに知っていると思っていた。

が!

は〜ん?そんな認識は甘いぜよ、ということを異国の人々に知らされるのである。

例えば、台湾人と話していた時。中国との関係の話になった。

「中国とかマジで無理。なんなら日本に統治されとったほうがまだマシだったわ」

ひえっ!?

なにそれなにそれ。日本って台湾も統治していたの?満州に気を取られて、見落としとったわ。

というか、歴史でやったっけ?こういう重要なことは、ちゃんと教えといてくれよ。というか、自分が無知なだけなのか?などなど、いろんな考えが巡った。

仮にその事実を知っていたとしても、なんと反応すればよいのかわからない。

「あん時は、統治しちゃってごめん」なのか「そうか、中国に比べたら確かにマシかもね」などと、あいづちを打てばよかったのか。

結局、「へへっ」と言って痴呆を演じただけだった。気まずい話題である。

さらにある時。

何気なく、職場のフィリピン人に、フィリピンの食べ物について聞いていた時の話である。

「フィリピンにはさ、ハロハロっていう食べ物があるんよ。日本のスイーツがもとになっているらしんだけど。それも、日本が昔フィリピンを占領してたからねえ〜」

そんなん知りませんでした、とはいえない。日本人としてそんなことも知らないのか。ひと知れず恥をかいた。

注)後で、山川の日本史教科書をみたら、ちゃんとその事実は記載されていた(ただ、数行のみで授業などではフューチャーされなさそうな模様)。教科書よ、疑ってすまん。単なる私の不明ゆえであった。

単に私が無知なだけであったが、日本が東南アジアの国々を統治下において、現地でどのようなことをしていたのかは、あまり知られていないのではないか。

なにせ高校では受験の準備に忙しく、戦前戦後あたりは、「時間がないので、早めに行きま〜す」と、軽くなぞる程度だったような気がする。

時間がないなら、古墳や卑弥呼に時間をかけるべきではなかったのである。

しかし、このあたりは教師も生徒もやる気に満ち溢れている時期なので、勢い余って時間をかけてしまうのかもしれない。

映画なり文学なり我々が戦争について触れるとき、国のために命をかけて戦った人々や、戦時下でひもじい思いをした国民、といったあくまで悲惨な戦争に巻き込まれた日本人がフューチャーされているような気がする。

あらためて歴史の勉強を始める

この辺について知るため、導入としていくつかの映画を見た。知らないことばかりだった。

とあるイギリス兵の実体験に基づいて作られた「戦場のメリークリスマス」。インドネシアのジャワ島にあった日本軍捕虜収容所の体験を描いたものだ。

さらに、1987年公開の「ゆきゆきて、神軍」。これがドキュメンタリーだというから驚きだ。なんというか、ある意味でクセが強く、ツッコミどころが多い。とにかく主人公の奥崎謙三が、破天荒すぎるのである。

終戦宣言の後に、とある部隊で日本兵が上官の指令によって、殺害されたという事件をめぐり、奥崎が関係者を訪ね歩き真相を解明する、という話である。

驚きなのは、当時の上官や関係者から、

「あの頃は、今日は黒い豚、白い豚といって(人間を)食べたといってましたけどね。いや、うちの部隊では日本兵までは食べてませんよ」

「お尻や肩を削いで食べてたんでしょ。1等兵から順番に食べられていったんじゃないんですか?」

などという話が平然と飛び交うことだ。

というわけで、次に見たのが2014年に公開された「野火」である。よく映画として世の中に出たなあという衝撃作だ。

フィリピンのレイテ島で、窮地に追い込まれた日本兵が、人肉を食うというシーンがある。決して、それが映画のメインなのではないが、その狂気はいわゆる一般的な日本の戦争映画には、見られないものがある。

日本のことは、日本にいるだけじゃわからないと常々思う。特に戦争のような立場がまったく異なる場合は、一方的な歴史観に染まりがちだ。

別の視点で歴史を知らねばならない

佐藤優の「紳士協定: 私のイギリス物語」にこんな一コマが書かれている。ホームステイ先の子どもと、佐藤氏が映画「戦場のメリークリスマス」について語り合うシーン。

「どの国も、自分の国が他の国の人たちにひどいことをした話はしないものさ」

「どうして、隠しているの」

「それは人間の認識にかかわる問題だ。人間は自分が受けた痛みはいつまでも覚えているが、他人に対して与えた痛みについてはすぐに忘れてしまう。

それどころか、痛みを与えていることすらきづかない場合がある。自分で気づいていないことは記憶しない。国家や民族もそれと同じだ」

日本人として知るべきことは、まだ多くある。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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