【入門編】中東・イスラーム・アラブを知るための推薦図書9選

中東やイスラームはとにかくわかりづらい。そんな風によく言われる。

確かにわかりづらい。けれども、その複雑な中東を簡単に紐解いてくれる良書に出会うと見方は変わってくる。むしろ、複雑だからこそ面白みがあるのだ。

そんなわけで、アマゾンでかたっぱしから買いまくった中東&イスラーム本の中でも、入門編にふさわしい本を独断と偏見でピックアップしたのでご紹介。

ちなみに9選ということで、縁起が悪いと思われた人もいるかもしれない。しかし、イスラームでは奇数の方が縁起がよいと言われている。だからあえて9選。決して、きりのいい10にするための残りの1冊が見つからなかった・・・というわけではない。

イスラム教の論理

今までのイスラーム関連本といえば、ちょっと小難しく、イスラーム教って素晴らしいよね☆といったテイストで書かれたものが多かった。そんな中、彗星のごとく現れたのがイスラム思想研究者である飯山陽氏。

イスラム教とはいかなるものか、を論理的に分かりやすく伝えてくれるのが本書。イスラームについてしっかりと知りたいという人には、一読をおすすめする。新書なのでさらっと読めるのも嬉しい。著者はツイッターでも積極的に発信しており、イスラーム界隈のインフルエンサーでもある。

ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門

イスラーム入門マンガ。漫画家である天川まなる氏の素朴な疑問に、イスラーム法学者である中田考氏が答えていくという対談をマンガで分かりやすく描いている。

コーランやジハードといったよく聞く単語の意味や、ムスリムの日常、モスクや中東料理、イスラームファッションまで、イスラームに関するテーマを幅広く扱う。イスラームについてサクッと知りたいという人に、おすすめ。

ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門
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サイゾー

イラン人は面白すぎる

筆者はイラン人で、吉本の芸人でもあるエマミ・シュン・サラミ。実体験にもとづいたイランの人々の生活を描いている。吉本の芸人だけあって、語り口は軽快。これほど誰もが気軽に読めるイスラーム関連の本はないだろう。

イランはシーア派が多数派を占める国である。そうした国は世界でも少ないので、その点においても興味深い視点を提供してくれる。

アラブのこころ

アラブ人について知るならまずこの本をすすめたい。筆者の曽根綾子氏は中東研究家ではなく作家だ。しかし、エジプト、リビア、レバノン、サウジアラビアなどアラブ諸国でのインタビュー取材と、独特の着眼点でアラブ人とはどういう人々なのかを描き出す。

アラブについてまったく知らない人間だからこそ、書けるもの。平易で気取らない。それでいて本質的。駐在員たちにインタビューしただけの表面的な本と批判されるが、少なくとも私はこの本から学ぶことが多くあった。

イスラームの日常世界

サウジアラビアで1年間遊牧民とともに生活をしたという民族学者、片倉もとこ氏が、イスラーム教徒の日常を描いた一冊。実際に学者として彼らと行動をともにした人間だからこそ書けるエピソードが満載。

肩ひじ張らずに読める、イスラーム教について知るのには最良の書である。

TRANSIT 美しきイスラームという場所

いまだに見返しても、学ぶものがある。それだけ情報量が多く、多様なイスラームや中東のエッセンスがぎゅっと凝縮されている。雑誌という体をしているが、新書1冊分ぐらいの情報量。

アフガニスタンやイエメンといった今では入国が難しい国の写真も掲載されており、ビジュアル的にも魅せてくれる一冊。

Pen アラブは、美しい

アラブで生まれた古今の美しいもの、優れたものに焦点をあてた特集が見どころ。建築、美術、自然、音楽、食など多角的にアラブ諸国を紹介。アラブの美術や建築に関しては、あまり書籍が多くないため重宝したい一冊だ。

日本人のためのイスラム原論

正直いうと、この本は平易ではない。どちらかというと専門書よりかもしれない。しかし、他の本だと小難しく書かれていることが平易で読めるというのがこの本の特徴である。筆者は中東やイスラーム研究者ではなく、戦後日本を代表する社会学者の小室直樹。

本書のはじめにはこんなことが書かれている。

日本人ほど宗教がわからない国民はいない。一神教の理解など、絶望的と言っていい。しかし、これからの時代は宗教の理解なくして、世界は理解できない。イスラムを理解すれば、世界がわかる。

こう言われて、読まないわけにはいかないだろう。

中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌

平易ではない本を紹介したついでに、こちらもおすすめしておこう。イランに留学経験があり、湾岸諸国の現代史にも詳しい高橋和夫氏による一冊。

中東というと、アラブ好きなアラビストやインテリな研究者が小難しく語った本が多いのだが、高橋氏は違う。冷めているのだ。熱くならず冷ややかな目で語られる中東論が魅力でもある。

中東にあるまともな国は3つしかない!それ以外は国じゃねえ!などとぶったぎるあたりが面白い。ISやシリア内戦など時事的内容も多いが、今読んでもためになる。

さらに湾岸諸国についてがっつり知るのであれば、「燃えあがる海―湾岸現代史」がおすすめ。

イスラーム&中東本の選び方のコツ

すでにお気づきかもしれないが、日本人滞在者によるエッセー本は含まれていない。確かに日本人が書いたその国の滞在記は平易で読み易い。ただ、そこに落とし穴がある。

アラブやイスラームというのは、その国だけのことではない。国をまたがって広がっている。

例えばイスラーム教やアラブ人全体に共通することなのに、オマーンやドバイの習慣などと言ってしまうことがある。間違いではないといえばそうかもしれないが、1つの国だけの体験をイスラームやアラブに当てはめてしまうのは、無理がある。

きちんとした知識を得ようと思うのならば、学者や専門家が書いた本を読んだ方がよいだろう。

記事をかいていて、なんだかマニアックな本も紹介したくなったのであえて入門編とした。次は個人の趣味に走りまくったマニア本を紹介したい。でも、読む人はいないんだろうなあ・・・と思いつつ。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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