海外でも美容院は日系の方が安心、という声は多い。これは日本だけに限った話かと思いきや、そうでもないらしい。
語学学校のクラスメイトに話を聞くと、韓国人のクラスメイトは、韓国系の美容院で切ってもらっただとか、フランス人のクラスメイトは、高いから自分で切っている。スペインのクラスメイトは、「やっぱりドイツで切るのは不安、スペイン系じゃないと・・・」などという。
アジア人は髪質が大きく異なるでわからなくもないが、スペインの彼に関しては、どっちでもよくね?というのが正直なところである。しかも彼はメンズの短髪なので、どこで切っても同じじゃないか・・・と思った私は失礼だろうか。
とにかく、国籍に限らず同じ国の人に切ってもらう方が安心、というのが人の心のようである。
海外ローカル美容院に通うメリット
一方で私は、あえてローカル美容院を選択している。日系美容院は安心はあるが、数が少ない、住んでる場所から遠いという物理的なデメリットがある。それに加え、どうも日本の丁寧すぎる接客が苦手だからである。
海外ならスーパーに行くノリで美容院に行けるが、日本の美容院はちょっと気合を入れる必要があるので、どうも気が重くなる。服装やメイクを見られてジャッジされているのではないか、という過剰意識が働いてしまうのだ。
ローカル美容院の最大のメリットは、失敗するかもしれないというドキドキ感を味わいつつ、うまくいけば通常よりも増量された嬉しさが込み上げる。つまりギャンブル的な楽しみがある。それにその国でトレンドになっている髪型になるので、その国の人っぽい、そして新たな自分を発見するチャンスにもなるのだ。
とはいえいつも成功するとは限らないのだが、エンタメ的に楽しめば良い思い出になる。かつてのローカル美容院遍歴はこちら。
ノリが軽すぎるマレーシアのローカル美容院
カラチで美容院に行ったら衝撃の金額になった
予約が取れないドイツの美容院
ドイツでも美容院を探すのだが、ここで問題が。ドイツにはホットペッパービューティーのようなシステムがある(初回割引などはない)のだが、良さげな美容院をあたっても予約が1ヶ月先まで埋まっているところが多い・・・
これは一体・・・
よく見るとほとんどの美容院が、少人数精鋭で運営している。1もしくは2人といった夫婦や個人での経営が多いためすぐに予約が埋まってしまうらしい。またナチュラルをよしとするドイツでは、日本のように頻繁に美容院へ通うことが少ないと言われていることも影響しているのだろう。
ドイツの美容院に行ってみたら
近所の美容院ですぐに切ってもらえるところがあったので、そこへ行くことにした。ドイツの美容院というのは、個人商店のようにこじんまりしているところが多い。予約時点では英語でやり取りができたので、てっきり英語が通じるかと思いきや、「英語は話せないわ〜」とドイツ語で言われる。
私の前に髪を切っていた先客が英語が分かるらしく、「翻訳して伝えようか?」などと言ってくれたので、先客を交えて3人でこういう髪型でお願いします、と合意にこぎつける。ドイツでは、見知らぬ人の小さな親切に出会うことが多い。
美容師のおばさんは、めちゃくちゃ日に焼けており、どちらかというとイタリアの健康的なマダムみたいに見える。こちらがドイツ語が分からないのに、お構いなく話しかけてくる。こういう人はありがたい。
「あら、お客はんの髪はとっても太くてしっかりしてるわね〜」
そう。ドイツ人の髪の毛はふわふわで細いのだ。日本のように髪をすくという習慣はないらしく、ただひたすら髪をザクザクと切っていく。しかし、私は密かに己の剛毛を晒すことで、「この美容師はこのイノシシばりの剛毛にどう立ち向かうのか・・・」という、挑戦状を美容師に叩きつけているのだ。同時に、しょせん同じ髪なのだから、どうにかしてくれるだろうという期待もある。
マダムはちょっとボケているのか、途中で何度もクシを落としていた。拾ったクシを交換するわけでもなく、水をシュッシュとかけて、再びクシは通常営業に戻った。
大丈夫かな・・・?
途中見たこともない技が繰り出されるので、心配になったが、伝えたイメージのはるか上をいく仕上がりとなった。
これは神回や・・・
大穴を当てた気分である。そしてドイツらしく、髪型にかっこよさがトッピングされている。その時私は、自分が希望するスタイルが必ずしもベストだとは限らないのだということを知った。いわば無知の知である。私が知らないかっこいい髪型がこの世にあるのだと(素人なので当たり前だが)。それはネットや雑誌でも探し当てられない髪型だった。なぜなら知らないものは探せないからである。
お会計はブロー、シャンプー、カット込みで70ユーロ(約1.1万円)。基本的にベルリンではカットのみで50ユーロ(約8,000円)ぐらいするので、平均的な値段である。当初はカット代の高さに怖気付いてセルフカットデビューしようと考えていたが、これなら大満足である。