それは予兆もなく突然やってきた。ベルリンに引っ越してきて1ヶ月ほど経った時のこと。あ、やばい、これはあれや・・・というわけで、噂の冬季うつにかかったらしい。
ベルリンは寒いのはもちろんのこと、晴れの日がとにかく少ない。日中はほとんど曇天で、16時になると日没がやってくる。歌舞伎町の住民のごとく、ほとんど夜中に生活しているようなもんである。
冬季うつの症状
ドイツでは秋から冬にかけての10月から11月ぐらいに、冬季うつにかかる人が多いという。症状としては、気分が落ち込むというのは、通常のうつと同じだが、通常のうつが寝れない、食欲が失せるのに対し、冬季うつでは、過食、過眠といった症状が現れる。
私もまさしくこの症状であった。やたら眠くなる、早く寝ても結局早く起きれない。寒さでエネルギーを消費するからか、マレーシアにいた時の2~3倍は食っている。おまけにエネルギー補給として、チョコやクッキーなども食べるようになった。これだけならまだ良いが、メンタルへの影響は特にしんどかった。
なんでドイツにいるんだろ・・・
寒すぎてここは人間が住む場所じゃない・・・
などと悶々と考え、なぜか悲しくもないのに涙が出てくる。寒さと暗さから逃れるため、「イタリア 移住」、「スペイン移住」などとスマホで検索してしまっている。早くもドイツはギブアップというわけだ。
ちなみに絶賛メンタルが落ちている時は、なんとなくわかっていても、頭が混乱しているようで、自分は冬季うつになっている!という認識がつきにくい。
冬季うつを撃退するためにやったこと
このままじゃあかん!ということで、私はdm(ドイツのドラッグストア)に駆け込んだ。ビタミンD錠剤をゲットするためである。私は天然素材信者なので、サプリや錠剤に頼ることに少し抵抗があった。
しかし、そうも言ってられないし、1日1回飲めばいいだけなので、やることに。ビタミンD錠剤は、ドイツでは定番の対処法で、ドラッグストアやスーパーにはいろんな種類のビタミン剤が置いてある。プラシーボ効果なのか、錠剤を飲んでからは、精神は安定している。
そして先延ばしにしていたジム通いもこれを機に始めた。とにかく体が冷えてたまらない。ボディメイクというより、血流の巡りを良くするためである。運動をし始めると、寒すぎてたまらん!と場面は減ったような気がする。
冬季うつ対策とは関係ないが、気晴らしに寿司を食べることもやってみた。スーパーで売ってる寿司は8ユーロ(約1,300円)以上で、普段の買い物ではなかなか手がでない。おまけに寿司といっても、サーモンがメインである。とはいえ、馴染みの寿司を食べることは、いくらか精神的にも良い効果をもたらしてくれた。
朝早く起きれないというのも、課題であった。私は冬の早起きが大の苦手である。しかし、仕事で早起きしなければいけないことが多々あるので、フィリップスのウェイクアップライトとやらを買ってみることにした。目覚ましを設定すると、その時間に合わせてライトが点灯する仕組みである。これを導入してからは、少し起きるのが楽になったような・・・
普通に太陽がある国だったら、これ全部無料なのにな・・・
メンタルや体を平常に保つために、ドイツではそれなりの投資が必要らしい。
冬季うつの同士たち
どん底からは数日で立ち直ったが、このことを語学学校のクラスメイトに話すと、同じような意見が返ってきた。彼らもまた私と同時期にベルリンにやってきて、ちょうど冬季うつの真っ最中だったらしい。
「俺も、先週はやばかったなあ・・・」
陽気なエスパニョール君でさえも、冬季うつの餌食になるのか・・・
韓国人のクラスメイト、ハナは、かなりひどかった。いつもは笑顔なのに、ぼーっとしたり、泣きそうな顔をしている。ちょうど韓国で戒厳令が出されていた時期とかぶり、自国の情勢もあって余計に精神が不安になっていたらしい。
「来年の7月にビザが切れるし・・・学生だからお金もないしどうしよう・・・」
というわけで、フランス人のクラスメイトも誘い3人でとりあえずお茶をすることにした。励まし合いのおかげ?か、翌日の彼女の顔はとてもすがすがしかった。どうやら山場を乗り越えたようである。
私もイスラエルに留学していた時、同じ悩みを抱えていた。一人で抱え込みすぎたせいか、部屋の中を荒らしたり、紙に火をつけてぼーっと眺めるなど、ガチで発狂寸前になっていたことがある。それが今では年齢も重ね、同じような悩みを持つ人に「大丈夫だよ」と声をかけられるようになったのだから、辛い経験も決して悪くはない。
クラスメイトたちが口をそろえて言ったのは、
「なんでドイツにいるんだろ・・・」
である。私のように特にドイツに因縁も、思い入れもない人間だから、このような思考になるのだと思っていたが、実は意外とみんな一度は思うというのは面白い発見であった。
しかし、まだ先は長い。冬が明けるまでに数ヶ月はあるのだ。というわけで、日々寒さに抵抗するための方法を模索中である。