パキスタンにある世界最大のスラム街で日本人観光客が警察に拘束

パキスタン最大の都市カラチには、世界最大のスラム街オランギが存在する。この事実を知った時、さして驚くことはなかった。カラチは、漫画みたいな世界である。この町では何があっても、何が起こっても不思議ではないのだ。

一方で、パキスタンに世界最大のスラム街があるということはあまり知られていない。よく知られている他国のスラム街に比べても、オランギは人口では群を抜いている。

オランギ/パキスタン・カラチ:240万人
ダラヴィ/インド・ムンバイ:100万人
キベラ/ケニア・ナイロビ:70万人
トンド/フィリピン・マニラ:60万人

正直、スラム街といってもあまりピンと来ない。なにせカラチの町自体がすでにスラム街みたいなもんだからである。

この状況よりもさらにひどい状況があるのか・・・おそらく彼もそんな好奇心にかられたのだろう。

2022年1月、オランギで日本人観光客が警察に拘束されるというニュースがあった。

しかもよくみると、実名&顔写真を大々的に公開しているではないか。

まじかYo

さらし首状態である。

ニュースの内容としては、日本人観光客が”間違って”、オランギ地区に紛れ込んだとか、”観光スポットだと思って訪れた”など、書かれていた。

カラチの中心街からオランギ地区はかなり離れている。なので、何をどう間違えても、知らないうちに迷い込む場所ではないのだ。

ただ彼の意図もわからなくはない。他の国では、スラム街ツアーがあったり、スタディツアーと称してスラム街を訪れることもある。単なる観光ではなく、社会勉強やリアルを知るために、外国人がスラム街を訪れるという感覚がある程度受容されている。

しかし、外国人観光客が少ないパキスタンでは、その認識がない。

ジモティーに聞いても、「は?なんであんなところ興味あるの?」「観光で行くところじゃないよ」という一点張りなのである。観光じゃなくて・・・という説明をしてもわかってもらえないのである。

地元のガイドに聞いても、「危険とかそういう理由じゃなくて、単純にいく理由がないじゃん」という。

そう。彼らにとっては、スラム街=外国人が見るべきではないもの、見ても意味がないもの、という認識があるのだろう。

逆にいえば、パキスタンで何をみるべきかは、我々ではなく、この国の感覚が決めることなのかもしれない。

だからこそ、彼は警察に”保護”されたのである。オランギ地区だけに限らず、パキスタン国内では、”外国人の安全のため”と称して、しばしば警察が登場する。

これは何もスラム街や危険地区に限ったことではない。観光地として知られるムルタンも、警察の護衛なしではホテルから出ることすら許されないのだ。

「ここは危険なのか?」

「いや、そうじゃない。お前たち外国人の安全のためなのじゃっ!」

この茶番がひたすら繰り返される。

そう、こちらからすれば護衛はいらないんじゃね?という場面でも、過度に警察や地元のガイドなどが、”安全のため”といって介入してくるのである。単独で行動している旅行客の中には、こうした謎の介入に悩まされる人も多い。

実際に私も、とある観光スポットで、”安全のため”と称したガイドがついた。しかし、こちとらゆっくり見たいのに、”安全のために”あっちへ行くな、こっちへ行くなと言われ、ガイドは早々に切り上げる。半日かけてやってきた上に、高い入場料を払ったのに、そりゃないよ。

パキスタンを旅していると、こうした”外国人安全親衛隊”にしばしば出くわすのである。パキスタンを自由に観光できる日は、まだ遠いのかもしれない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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