スウェーデンの危険エリアに潜入。移民問題について考える

白夜もオーロラも、犬ぞりもない夏のスウェーデンで、やりたいこと・・・は特にない。よって、苦し紛れに叩き出したのが、脆弱エリアに行くことだった。脆弱エリアとは、一言で言えば犯罪率が高いエリアである。

ほう。スウェーデンにもそんなエリアがあるのか。ここ近年で、スウェーデンではテロや銃撃事件なども起こっており、スウェーデンの安全な国神話は、もはや過去のものになりつつある。

とはいえ、隣にいるエリクソン氏も、今ではまっとうな善良市民の面構えをしているが、過去にはパクられたり、友達と色んな”トリップ”した時のことをちょいちょい語ってくる。トリップ中の思い出を残した手書きの絵を見せられた時は、反応に困るものがあった。

このあたりから、なんだスウェーデンも人間の国なんだな、と思う。マリア様みたいに純潔で高潔な国などありはしない。とはいえ、私が脆弱エリアに行きたいぜ!とやる気満々でいたら、エリクソン氏はどういうわけか気乗りしなさそうであった。そう、引いていたのである。”フツー”の”スウェーデン人”が行かない場所、それが脆弱エリアらしい。

こう書くと、危険な場所に行きたいだけの迷惑人間と捉えられるかもしれない。それは構わないが、私はどうしても主流とは逆を行きたいだけなのである。危険、やべえと思われている地域では、なるべく良い面を探そうと努める。これがそれまでの旅だった。一方で、今回は光しかない眩しい国なので、逆に闇を探そう、というのが魂胆である。こうすることで、バランスよくその国を理解してみたいのである。

気乗りしないエリクソン氏を引き連れやってきたのがTenstaである。一体どんな場所なのかとドキドキしていたら、なんと拍子抜けである。そこは移民街。単なる移民ではなく、中東や東アフリカなどの移民たちが暮らしていた。そこはもはやスウェーデンのイメージとは程遠い場所であった。パツキンも青い目もいない。


ショッピングモールに入っている店も店員もみな中東をテーマにしている。北欧の気配は全くない。


静かなストックホルムから一転、ここでは、おしゃべりをする人々が多くいた

うわあ・・・・懐かしい!

旅でいったソマリアや中東での見覚えのある顔ぶれがそこには集結していた。オールスター感謝祭である。

彼らの顔ぶれを見ていると、アフリカ、中東の内戦絵巻を見ているような気分になる。ソマリア内戦、アフガン戦争、イラク戦争、シリア内戦。移民たちの顔ぶれは、そうした地域の歴史を語っている。

ちなみに先日ストックホルムでのこと。

「彼らを見てごらん。脆弱エリアに住む人は大体あんな格好しているんだよ」

日本のヤンキーみたいな格好なのだろうかと思い見やると、そこにはH&Mの広告に出てきそうなオシャーなアフリカンメンズがいた。

スウェーデンではワルでさえもめちゃくちゃオシャーなんかい。

“スウェーデン人”のエリクソン氏は、そこでは浮いていた。そして、顔が終始、強張っているため、こちらにも緊張が伝わる。しかし、私はというと、パツキンで高身長にあふれるストックホルムよりも、居心地良さを感じていた。懐かしい、親しみがある場所、それが私が感じた脆弱エリアだった。

脆弱エリアを散歩しながら、エリクソン氏はポツポツと語り始めた。

「ストックホルムでタンクトップを着てた時に、男たちにゲイと勘違いされて襲撃されたことがあったんだけどさあ、襲撃したのはやっぱこういう人たちだったんだよねえ。はっきりいって、ストックホルムの夜より、東南アジアの夜のが安全だと思うよ」

「”スウェーデン人”のマブダチで移民っぽい顔の子がいるんだけど、彼は逆に”スウェーデン人”から嫌がらせされたこともあってさ」

そこには確かにスウェーデン人VS移民の対立構造があった。どうやらエリクソン氏は移民のことをあまりよく思っていなかった。そりゃそうだ、襲撃されたんだもの。

それに、税金の大半が、移民が暮らすための施設やサービスに使われていることもやや不満に感じていた。


税金を使って建てられたという移民向けの集合住宅

「移民たちがスウェーデン社会にちゃんと適合してくれれば問題ないけど、実際は問題ばかり起こしてるし」

というのが彼の意見である。とはいえ、これは何も移民だけの問題ではないだろう。スウェーデン国家がどれだけ移民の社会統合をサポートしているのか。そこも疑問の余地はある。また、先日のザリガニパーティー事件のように、スウェーデン人と仲良くなるのは、激ムズなのである。そんなスウェーデンの壁を前にして社会とうまくやれ、というのも難な話ではないか。移民たちに同情もである。

スウェーデンの一部の政党では、移民に反対しているところもあり、移民に対する無料通訳者の手配などのサービスをやめる、といったことを公約として掲げていた。ただ、建前は”移民に優しい国”のためか、そうしたアンチ移民政党を支持していることは、公で言うのはタブーらしい。

「最近若い子の間ではさあ、アラビア語とスウェーデン語を混ぜた言葉なんかも使われてるんだよ。上の世代からすると、行儀が良くない言葉って捉えられるし」

移民はその存在だけでなく、スウェーデンのカルチャーにも大きく影響を与え始めているらしい。確かに、国としては大きな問題である。

この記事を書いている途中、タイムリーなニュースが飛び込んできた。スウェーデン政府は、自主帰国を決めた移民に対し、1人当たり最大で500万円を支給すると言うのだ。金をあげるから、とっと出て行けと言うことで、スウェーデンは移民に対し、もはやお手上げの状態となっているらしい。

ここ数年前までは、私も日本も積極的に労働力と人口を増やすため、移民を受け入れるべきだと思っていた。しかし、こうした話を聞くとやはり日本はそのままで良いのではないかと思う。そもそも移民にとっても、社会統合がしづらい国だろうし、日本人としても苦労するだろう。人口の大半が日本人で構成されているが故に、日本独特のカルチャーを生み出しているのであれば、日本はこのままそっとしておく方が良いのではないか。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。

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