スウェーデン人と友達になるのは激ムズ。ザリガニパーティーの惨劇

スウェーデン人が浮かれる時期といえば、サマーである。漆黒の世界に太陽がサンサンと降り注いでいる・・・これははしゃがなければ損と言うことで、6~8月にかけて夏祭りシリーズが相次いで催される。

代表的なものは、老若男女が花冠をのっけるミッドサマーであるが、私が今回参加したのは、ザリガニパーティーなるものである。子供の頃を思い出してザリガニを釣りましょう♪と言うものではなく、単にザリガニを食べましょう、と言うなんの捻りもないパーティーである。

スーパーに行くとザリガニパーティーセットが売られており、ザリガニのイラストが入ったエプロンや三角帽子などが置かれている。これらはキッズ向けではない。大の大人にも、着用が促されているものである。


スーパーで売られているザリガニパーティーセット

パリピのエリクソン氏は終始、浮かれていたが、”パーティー”が苦手な私は、憂鬱であった。エリクソン氏のマブダチと家族が大集合するからである。そしてその憂鬱は、トラウマ級の事件に発展することなど、この時は思いもよらない。

夕方からパーティーは始まり、続々とマブダチたちがやってきた。スウェーデン人だから英語でいけるっしょと思いきや、やはり普段は母国語で会話し慣れているためか、英語の会話だとどうもぎこちないらしい。

そう。ただ一人のガイジーンのために、英語で会話をするのは、彼らにとって違和感ありありな上、こちらも申し訳なくなってくるのである。それに気心知れた友人グループだから、私がいては、内輪の話ができない。というか、しても私が疎外されるだけ。

ああ、これなら私いない方がええやん?

と言うことで、行き場を失った私は隅っこで酒をホストのように煽りまくり、酔ったから休んでるわwと早々に退出したのであった。そう。私はザリガニパーティーだと言うのに、ザリガニを食べる前にギブアップしてしまったのである。

やってもうた・・・

と同時に私はこれをスウェーデンの壁と呼ぶことにした。あれは単なる国際交流とは毛色が全く違うものだった。ガイジーンと交流することに慣れている人々の集まりであれば、それなりに輪にも入ることができ、話について行けたのだが。私があそこで感じたのは、圧倒的なアウェー感。彼らも見知らぬガイジーンにどう接したら良いかわからない、興味がないと言う雰囲気を終始感じ取ってしまった。

ただ、ジョニーデップにくりそつなエリクソン氏の兄だけは、色々と質問を投げかけてくれたのが不幸中の幸いである。エリクソン氏の解説によれば、彼の兄は一人での旅をよくしているので、知らないガイジーンの取説も心得ているとのこと。一方で残りのマブダチは、旅行に行ってもマブダチグループで行くため、彼らの中だけですべてが完結するから、ガイジーンとのコミュニケーションを知らないのじゃ、とのこと。

一部の外国人からはスウェーデン人はココナッツとも言われる。そう、分厚い皮をむくのは容易ではない。同様に、スウェーデン人と親しい関係になるのはそれぐらい難しい、といった例えである。そして、多くの場合、スウェーデン人の交友関係は、幼馴染や学校の友達で形成され、それが核となって大人の友人関係まで続くのである。よって、大人になって、新しい交友関係を広げる必要がないのである。

エリクソン氏もその例であった。マブダチは学校の友達もしくは幼馴染で形成されており、その友人歴は、マントルのように深く固い。そして、エリクソン氏の人生は50キロメートル内にすべておさまっていた。自分が通った幼稚園(未だ現役で運営中)、学校、自分が手がけた仕事である建物(建築業で働いている)、家族、友人が車で10分圏内に住んでいる。

かたや私の人生といえば、地球上に散り散りになっている。幼稚園も学校も、友達も家族も数千キロ単位でガラスの破片のようにばらついてしまっているのだ。1つの場所にじっとしていられない、そうした生き方しかできない自分を嫌になることもある。だからこそ、対照的なエリクソン氏の生き方を羨ましいと思ってしまう時もある。

もう今夜はこのまま寝てしまえ、と思っていたが、エリクソン氏が突然叫んだ。

「オーロラが出てるってよ」

そ、そんなバカな。今は8月だぞ。ザリガニパーティー事件のことをすっかり忘れ、我々は外へ飛び出した。

そこには、ぼんやりと天女の衣のように薄いオーロラがいた。イメージしてたオーロラよりは随分薄いものだったが、それでも初めてのオーロラに感激である。

オーロラってアメーバーみたいに、形が数秒で変化するんだな・・・

「8月にオーロラを見たのは、久しぶりだな。ここ数年はなかったんだぜ」

ここスウェーデンでは、オーロラ通知みたいなものがあり、オーロラが出るとスマホにお知らせしてくれる嬉しい機能があるらしい。日本の嫌な地震アラートとは大違いである。

ザリガニパーティー事件からのオーロラ。ま、スウェーデンの酸いも甘いも知れたと言うことで、今日は良しとしよう。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。

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