イラクに観光客向けのお土産があるとは、まったくもって期待していなかった。
しかし、イラクは古代文明メソポタミア発祥の土地であり、バビロン、ウルク、ウルなど数々の古代都市が存在した場所でもある。
修復されながらも、保存が良い状態で古代遺跡が残されているので、観光地としてはめちゃくちゃポテンシャルが高い。というか、ポテンシャルの塊である。
そんなメソポタミアの意地なのか、イラクにはお土産っぽい土産が確かに存在した。そんなイラクで見つけた意外なお土産を紹介していこう。
サダム・フセイン時代の紙幣
紙幣をお土産として売る国がどこにあるだろうか。
いや、つい20年ほど前は、サダムフセインの独裁政権時代だったイラクだからこそ成立する、イラク土産なのだろう。もしかしたら、独裁政権時代に土産物として販売され、その”残り物”なのかもしれない。
硬貨バージョンもある
単に紙幣をそのまま売るのではなく、イラクの見所を紹介するブックレットとして販売しているのがポイント。ものにもよるが、だいたい10~15枚の紙幣がワンパックになって売られている。値段はおおよそ15ドル。
誰かさんの切手アルバム
繰り返しだが言いたい。古切手を土産として、堂々と売る国がどこにあるのだろうか。
斬新すぎるコンセプトだが、切手を眺めながらイラクの歴史や名所が伝わってくるので、これはこれでよいとしよう。
古切手は、大量製造されたものでなく、誰かが集めていたであろう切手アルバムをそのまま横流しにして売っている模様。よって、中に入っている切手の種類や数が、それぞれ微妙に違う。値段はおおよそ20ドル。
ちなみに切手アルバムと紙幣は、バスラ空港の土産物屋で売られていた。バスラの街では、お土産屋さんらしいショップは見つからなかった。
観光土産の定番、ご当地マグネット
これまで人生において、ご当地マグネットなどに興味を持つことすらなかったが、なぜかイラクは違った。
なんかセンスがいいのである。
イラクの国土をかたどったマグネット上には、イラクの名所や人、動物たちが可愛らしく描かれている。マグネットでありながら、地図にもなっているのがポイント。
イラク各地の名所が描かれたマグネット
世界有数の産油国でもあったイラク。多くの油田がイラク南部に集中しており、イラク第2の都市であるバスラには、イラク最大規模の製油所が存在する。そんなバスラをフューチャーしたマグネットも。
土産の定番であるマグネットは、その他の種類でも展開している。イラクの遺跡スポットをプリントしたものや、かつては「中東のヴェニス」と言われたバスラをモチーフにしたものもある。
イラクの名所ミニチュア置物
歴史的な名所を写真だけでなく、実物としてそばにおいておきたい人に。サマラにある螺旋ミナレットやバビロニアにあるイシュタール門のミニチュア置物などがある。
シリアせっけん
市場やスーパーでは、手作り感まんさいな石鹸が売られている。
多くはトルコやアレッポ石鹸で知られるシリアの石鹸である。イラクの石鹸はほとんどないが、シリア石鹸を手に入れるチャンスでもある。
アラビアンナイトなお菓子
スーパーなどで売られている庶民的お菓子。作っているのは、イラクのメーカー。
中に入っているのは、ピーナッツやひまわりのタネといったごく平凡なものだが、アリババやシンドバッドがプリントされているため、アラビアンナイトの舞台となったイラクのお土産っぽさがある。
シンドバッドお菓子。イラク南部のバスラは、シンドバッドが船出をした場所ともいわれている
美味しいデーツはイラクにあり
アラブ諸国ではよく見かけるデーツだが、イラクのデーツは格別だ。かつてイラクのデーツは、世界にあるデーツの4分の3を占めていたとも言われ、デーツの出荷量世界一を誇る国だった。
アラブ世界でも、「デーツといえば、やっぱイラクだよねえ」。そんな共通意識があった。しかし、湾岸戦争以降、デーツの生産量は激減。今では、お隣のイラン産のデーツが多く出回っている。
街を歩いていても、デーツを見かけることは少なく、かつてデーツ大国の面影はほとんどない。そんなわけで、貴重なイラク産のデーツを探してみるのもよいかもしれない。
ちなみに、日本人からするとデーツはあまり馴染みがないものだが、広島のお好み焼きソースに使われていたりする。
殉教王子グッズ
イラクにいて、目にしない日はないであろうというぐらい、どこにでも出没する「殉教王子」ことフサインの肖像画。
フサインが没して早1,300年以上が過ぎようとしているが、彼の肖像画は、イラク各地でみられる。イラクに住むシーア派の人々にとっては、悲劇のアイドル的存在である。
そんなわけで、街中にもいたるところに殉教王子グッズがまんえんしている。王子のファンでなくとも、みているうちについつい親近感がわいてしまう。
その結果、私が2,000ディナール(約180円)で購入したのは、王子のナップサックであった。
聖地巡礼グッズ
イラクには、イスラム教シーア派の聖地があり、隣国のイランやアフガニスタン、パキスタンなどからも巡礼者がおとずれる。
聖都ナジャフやカルバラでは、土を素焼きに焼いた「モフル」や「タスビー」と呼ばれる数珠などを売る店が多くある。
手のひらサイズのモフル。シーア派の聖地や殉教王子フサインの名前が浮き彫りになっている
カラフルなタスビー。暇な時にいじったり、祈りの回数を数えたりするのに使う
イラク土産どこで買う?
私がみた中では、観光客向けの土産物屋というのはなかった。それもそうだ。観光客がほとんどいないのだから。
そんなわけで、お土産を買うとしたら、スーパー、空港、ナジャフやカルバラなどの聖都、バグダッド市内のお店になる。
どこか一箇所にすべてのものが集まっているわけではないので、よさげなものを見つけたら、その場で買うのがよいだろう。
食べ物類のお土産は少ない。私が空港で見かけたのはたった1種類しかなかった。湾岸戦争後の経済制裁や、戦後の進まぬ復興ゆえに、製造業があまり発展していないとみえたる。
代わりに、イラクでは街のいたるところで、みかんやザクロなど新鮮な果物を見つけることができる。市場に行けば、スパイスやナッツ類、なつめやし、なつめやしシロップなどが見つかる。
メソポタミアの地で取れたフレッシュな果物たち
それらは、メソポタミア文明が発達した肥沃な三日月地帯を感じさせる、新鮮でみずみずしい味。
お土産というなりをしていなくとも、土地の魅力をダイレクトに感じることができるものだ。