F1といえば、なにやら金持ちの趣味というイメージがある。
高校生時代、小金持ちの友人は、「家族旅行でバーレーンにF1を見に行ったんだよお☆」などと言っていた。だから、F1は金持ちの趣味なのだ、と思い込んでいた。
それに、F1といえばモナコで、海外セレブたちが、邸宅で酒を片手に見ながらきゃっきゃ楽しんで見る、というイメージもある。
なので金持ちでもなく、車にすら乗らない人間が、まさかF1を見にいくなどとは、思いもよらなかった。
街中で時速300キロ越えのマシンが暴れまくる
ちなみにバーレーンに行った時も、偶然にしてかF1グランプリの開催時期とかぶっていた。その時は、会場が遠すぎて帰りの飛行機に間に合わない。というかそんなに興味もねえ、ということで、F1を見ることはなかった。
しかし、今回は不可避である。
なぜなら、F1の会場が観光地のど真ん中で行われているからだ。
街の至る所で”F1″を目にする
街のいたるところがバリケード封鎖されており、しかもバリケードの中からは、聞いたこともないような爆音が轟いている。暴走族どころの騒ぎではない。
F1マシーンの最高時速は300キロを超えるともあって、新幹線よりも速いのである。つまり新幹線よりも速い物体が、バリケートを隔てたわずか5メートル先で暴れまくっているのである。
狂ってる・・・
それが現在、私の置かれている状況である。
そんな状況に日常で、遭遇することがあるだろうか。いや、ない。
かつて体感したことがない世界がそこにはあった。隙間があるバリケードから中をのぞくと、車が火花を散らしている。なんだこの光景は。火花を散らしてまで、早く走りたいのか。
それよりも時速300キロのマシンたちが、市内をうようよしているのだ。高齢者の運転よりも危ない。
しかも、近くに行くと音がめちゃくちゃうるさい。花火の爆発音がすぐそこで発せられているような感じだ。
観光に集中したい人間としては、この爆音はこの上なく迷惑である。そして、正気の沙汰ではない。街中を封鎖して、新幹線よりも速い物体が、ぐるぐると周回しているのだ。暴走族よりもさらに迷惑な行為だが、F1という立派な国際スポーツともなれば、誰も文句は言わないらしい。
バリケードの上からレースを見ようとする人々
F1の撮影は素人には難しいので、F1公式サイトから拝借
街中で行われているものの、バリケードで覆われているためF1マシンを見ることはできない。レースを見るのには、チケットが必要なのだ。爆音の正体をはっきりと、この眼でみてやろ、ということで、チケットを70ドルで購入。
F1のチケットは、レースの日程や席によってもずいぶん違う。F1初心者の私は、とりあえず爆音の発生源を確認できればよい、ということで一番安いものをゲットした。
耳栓してみるスポーツ
国際スポーツらしく、F1レースの会場には地元の人々だけでなく、海外からの観客もいた。地元の人々は、カップルや家族連れが多かったが、海外組ともなると、おっさんトリオなど男性客が多いのが見受けられた。
のちに知ったが、熱心なF1ファンだという、クリスティーナ・アギレラも会場に来ていたらしい。
2重の鉄柵で囲まれたレース場内。300キロの物体や破片にあたったら、ひとたまりもない。相当な資金がかかっていると見えたる。
アゼルバイジャンF1グランプリ記念撮影コーナー
マシンは一瞬で走り去るので、酒を飲みながらモニター鑑賞できる場所も。ハイネケンという心強いスポンサーのおかげである。丸い物体は、アゼルバイジャン風のビーズクッション。
会場には、数メートルおきに監視員が立っている。みな、耳栓代わりのヘッドフォンをつけている。そうなのだ。この爆音。耳栓なしには、見ていられないほどの騒音なのである。
レースの様子。実際の爆音はこの100万倍ぐらいである。
この世に耳栓をつけて、鑑賞するスポーツがあるだろうか。300キロ以上という常識を越えた速度でマシンを操作するドライバーもそうだが、観客もまた常識を越えた速度で走るマシンの爆音に耐えながら、鑑賞するのだ。
そこまでしてやるもんかね?と思いたくなるが、逆に言えばそうした非日常を味わえるのが、F1の魅力なのではないかと思う。
はたと気づいたが、F1の凄まじさは、どうあがいても素人の動画や文字、画像では伝わらない。体感して初めて、わかるものである。
その後、すっかりF1の魅力に取り憑かれてしまい、近々ドバイかアブダビでF1マシンを運転してみようか、と画策している。最後に運転したのは、数年前のことだけれども。
アゼルバイジャンについてもっと知るなら
アゼルバイジャンだけを取り上げた旅行本はまだない。そんな中、アゼルバイジャンを知るのに役立つのがこの一冊。