日本よりも中国の方が圧倒的人気!?親中の国パキスタンで中国人のフリをした結果

世界で日本は中国よりも好かれている。そう思って、これまでの人生を生きてきた。実際に、これまで訪れた地域で日本人だというと、「日本車壊れにくいから最高!」だとか「日本人は礼儀正しい」などと言われ、大抵チヤホヤされてきた。

が!

ここパキスタンは事情が違う。中国のマブダチであるパキスタンでは、中国への好感度がとんでもなく高い。

世界ではあんなに好感度が低い(と思っていた)中国が、パキスタンでは大人気なのである。

こんなことって・・・

パキスタンでどれだけ中国が特別扱いされているのか、その実態をご覧いただこう。

中国人専用レーン

これまで何度か書いてきたが、パキスタン空港の入国審査では、中国パスポート専用レーンが存在する。通常の空港であれば、外国パスポート、自国民パスポートという区分けが一般的。しかし、パキスタンではそれらに加え、中国専用のレーンを設けているのである。

時間がかかる外国人レーンに並びながら、中国籍の人々がさっさと審査を終えていく姿を見るのは、なんとも悲しいものである。中国がどれだけパキスタンに特別扱いされているかを知るには、十分すぎる教材映像である。

日本人?ふーん

海外にいると、「どこ出身?」とよく聞かれる。日本と答えると、大体好意的な反応をしてくれるので、それが当たり前のよっちゃんになっていた。

美人が「美人ですねー」と言われることが、当たり前のような感覚である。ちなみに、当方は生きていて一度もそんな言葉をもらったことはない。

カラチからラホールへ向かう機内で、若いパキスタン女子に話しかけられた。

「え?もしかして中国の方ですか?」

「いや、違うよー日本だよー」

「ふーん」

会話終了。

ひえっ???

目をしばしばさせ、私は一人動揺した。「えー日本なのー!?」という黄色い声を期待していたのに、現実はふーんである。こんな淡白な感想は聞いたことネイ。

この時、私が7つの大罪「傲慢」を犯していたことは認めよう。

私は、慌てて聞いた。美人で言うところの、「え?ちょ?私のこと美人だと思わんの?」である。我ながら恥ずかしい行為である。

「えーと、なんで中国人だと思ったん?」

「実は私たち、中国が運営している医療系の学校に通っているんですー。クラスメイトにも中国人がたくさんいて、もしかしたらと思って・・・」

そう、中国はパキスタンで教育支援にも力を入れている。パキスタン国内には、中国語を教える学校がいくつかあるし、パキスタンから中国への留学支援制度も充実している。彼らからすれば、中国は大事な教育の機会を与えてくる恩人なだろう。

日本もパキスタンに対して教育支援をしているはずである。しかし、目に見える形かつ広い範囲における支援となると、中国の方が圧倒的に幅を利かせているのだろう。

SPつけます

ラホール空港に到着した時のこと。のそのそとその辺を歩いていると、警察らしき人間に声をかけられた。

「オマエ、中国人か!?」

2021年7月にパキスタン北部でバス爆発が起こり、中国人エンジニア10名以上が死亡する事故が起こった。パキスタンと中国はマブダチだが、全員がそう思っているわけではない。中には、その関係をぶち壊してやろうと言う輩もいる。

というわけで、パキスタン政府は、大事なマブダチである中国人に何かがあってはいけない、と言うことで、かなり敏感になっている。先の確認は、中国人であれば警察のSPをつける、という意味だということを知った。

こういう場面に出くわす度に、中国人以外はどうでもいいんだな・・・と少し悲しくなる。

同時に、これはパキスタンならではのことかもしれないと思った。パキスタン人は、自分に有益な人間に対して、あからさまにえこひいきをするクセがあるように思えた。これは、知人のパキスタン人も証言していたことである。

あっけにとられる私の横を颯爽と横切ったのは、中国人ビジネスマン。誰もスーツなんか着てない国だと言うのに、スーツをビシッと着こなしている。私と同年代か少し若いぐらいと見える。

「すげえな・・・」

観光でのそのそやってきた私とは違い、こんな場所でビジネスをしようと言う気概。ソマリアにしろ、スーダンにしろ、外国人をほとんど見かけない場所でも必ず会うのが中国人だった。彼らに会う度に、そうした海外進出精神に驚かされるのである。

関連記事:もう絶対行きたくない国、スーダン旅行の悲劇

ソマリア編に関しては、自著「ソマリアを旅する」を参考。

レストランでの特別待遇

どう考えても、日本人より中国人を名乗ったこの国ではお得だ。そう気づいた私は、いつからか「中国人?」と聞かれて、否定しなくなった。

ラホールのレストランで食事をしていたこと。店のオーナーらしき人物が、食後の感想を尋ねてきた。フツーにうまいで、と答えると、「ところでお客さん、どちらからお越しに?」と聞く。

「中国だYo」

論理的に考えればおかしい。なぜなら、中国人はパキスタンにビジネスをしにやってくるっが、観光には来ないからである。パキスタン観光に来るのは、イギリス、アメリカ、ドイツ人、日本人ぐらいである。

どうみても観光客な私が、「中国から来た」と言うのはおかしな話であった。

しかし、オーナーはそんなことをおかまいなしに、「中国はパキスタンのフレンドですからな」と、微笑んだ。

それから5分後。

頼んでもないケーキが運ばれてきた。

ひえっ!?

私は、自分がしでかしたことの重大さに気づいてしまった。同時に、この国でどれだけ中国が愛されるのかを知ってしまった。

中国人と名乗るとケーキがプレゼントされた・・・

もし日本人と名乗っていたら・・・?

同じことは起きなかったのでは・・・?

パキスタンで中国人と名乗ること。それは、フツーの顔面をした人が、美女メーンやイケメーンの生活を疑似体験するのに、近いのではないかと思う。

またパキスタンで中国人が日本人を名乗ってみた、という実験動画も存在するらしい。中国人だということを明かすと、「中国人からはお金を受け取らない」と屋台の商品が無料になったという。

パキスタン現地に住む日本人のブログでも、「中国人を名乗ったら、お金はいらないと言われた」というエピソードを見かけた。

とは言え、日本人と名乗っても、そこそこ歓迎されることはある。しかし、中国と比べればその待遇は天と地の差があるのだ。

中国によるインフラ整備

パキスタンで過ごしてみると、中国がもたらすパキスタンへの影響を強く感じる。それが、インフラである。

ラホールからカラチまで1,200キロ以上に渡る距離を車で移動していた。日本で言えば、東京から熊本ぐらいの距離である。

旅の途中、奇妙なことに気づく。

道路のレベルが高すぎるのだ。おまけに立派なパーキングエリアもある。この国のインフラ状況と全くかけ離れている。ボロい一軒家なのに、ポルシェがおいてある光景みたいな違和感がある。

そう。

あれ?という違和感の背後にいつもいるのが、中国である。

このご立派な道路は、中国によって作られたものであった。もちろん、中国の利益のために作られたとは言え、私のような人間も恩恵を受けているのである。インフラ環境が整っていないパキスタンで、中国基準のインフラは、ありがたいことこの上ない。

この他にも、パキスタン初のメトロなども中国が作っている。また私が利用している通信会社Zongも中国の会社である。日本や欧米からすれば、「中国製?大丈夫なの?」という感覚だろうが、インフラ整備が遅れるパキスタンにいると、「中国製だ!ちゃんとしてる!やったあ!」となるのである。

ちなみにパキスタンの原発も中国の支援を受け作られ、パキスタンは全体の70%以上の武器を中国から輸入している。おかげさまで、町中には銃を持ったポリスがあふれ、パキスタン軍は世界でもトップクラスの軍事力を誇っている。経済、インフラなどの世界ランキングでは大体、下から数えた方が早いというのに。

こうしたパキスタン、中国のマブダチ関係は、「山よりも高く,海よりも深く,蜜よりも甘く,そして,鋼より硬い」と言われている。

なぜ親中なのか

パキスタンではなぜこんなに中国に対して、好感度が高いのだろうか。当初は、インフラも含め経済的な支援だと思っていた。

中国の目的がなんであれ、パキスタンが欲しくても経済的に手に入れられないものを、中国が提供しているからだと。

しかし、パキスタン人に聞いてみるとそうではなかった。

親中の事情はそれぞれあるだろうが、とあるパキスタン人はこんなことを言っていた。

「中国人に優しくするとな、運転手として雇ってもらえたり、仕事をもらえたり、何らかの恩恵があると思っているんだ」

日本人からすると、短絡的だなあと思うが、パキスタンでの生活事情を考えれば、わからなくもない。また、パキスタン人を見ていると、自分にメリットがある人間とそうでない人間をきっぱりと分けて、態度を変える傾向がかなり強いようにも見える。

というわけで、パキスタンという土地に立っている限り、そこから見えるのは、我々が見てきた世界とは反対側の光景なのである。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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