世界一親切な人々!?パキスタン人の最強ホスピタリティ

旅先での親切に感動した・・・ということは、旅をした人なら一度はあるだろう。ここパキスタンにも親切な人は多くいる。しかし、その親切レベルは、世界でも群を抜いている。イランやスーダンもそのずば抜けたホスピタリティで、旅行者を驚愕させているが、パキスタンはさらにその上をいく。

1人や2人ならず、かなりの人間が高度な親切レベルに達しているのである。もはやギネス記録レベルだ。

パキスタンを訪れた人間は、これまでに体感したこのない新たな領域の親切を実感することになるだろう。

おすそ分け精神がすごい

カラチ滞在中、私はエアビーの物件に住んでいた。ホストは隣に住むおじいちゃん。93歳の母親と住んでいる。いかに親切なエアビーホストでも、他の国であればホストとゲストのコミュニケーションは限定的。しかし、彼のおもてなしは、通常のエアビーホストのおもてなしをはるかに超えていた。

週に3日ぐらいは、「魚を焼いたよ~食べんさい」と、ご飯を差し入れしてくれる。カラチに来たからには、地元の美味しい果物を食べたほうがいいと言って、度々果物をくれたりもした。それ以外にも、「今週末こんなイベントがあるよ~」などと行って、度々どこかへ一緒に出かけたり、町を案内してくれるのであった。

「ごめん、本当はもっといろんなところに連れてってあげたかったんだけど、車の調子が悪くて」

こちとらもうすでに十分だと思っていたのに、彼にとっては納得のいくレベルではなかったらしい。おそるべし。パキスタン人のホスピタリティ。

それ以外にも、友達が自宅の食事に誘ってくれたり、「お腹空いてない?家から持ってきたご飯あげる!」などと、度々ご飯を恵まれた。水質が悪いため自炊ができず、毎日の食料確保が課題となっていた私にとっては、非常にありがたいものだった。

こうしたご飯のシェアは、パキスタン人同士でも一般的に行われているようだった。学校の校外学習で10人ぐらいで出かけた時のこと。大半のクラスメイトが、10人分の水や手作りのパイ、スナック、果物などを持参していた。

嘘だろ・・・

自分のことしか考えず、自分の分量しか水と軽食を持ってこなかった自分を恥じた。また、クラスメイトたちも、「わあ、すごい。ありがとう!」などと大げさに感謝することもなく、ごく当たり前のように、シェアされた食べ物を口にしていた。

また、カラチで滞在する家がなかなか見つからなかった時のこと。学校の先生が「前住んでいた家があるから、そこを使いなよ」と進言してくれた。この申し出はありがたかったが、衛生レベル的にちょっと難しかったので、丁重に断った。

ゲストに支払わせない

この国に旅人やゲストとしてやってくると、このようなイベントによく遭遇する。一緒にご飯に行っても、「あんたはゲストだから払わなくてもいいの!」と、こちらがお金を出すことを全力で阻止してくるのである。

とはいえ、パキスタンの平均所得を考えると、おごられるのは心苦しいものがある。これを誇張して、「パキスタンではすべてのものがタダ!」とまで吹聴する旅人もいる。

助け合いの精神

困ったことがあると、誰かがすっと手を差し伸べてくれるのが、パキスタン。重い荷物を運ぶのを見も知らぬ男性が手伝ってくれたり。車が砂にはまって動けなくなると、その辺を歩いていた5人ぐらいの通行人が、速攻でヘルプに来てくれたり。

なんなんだ。この国は・・・

カラチにおいて車は必須だ。しかし誰もが車を持っているわけではない。時間帯によっては、安全面を考慮してリキシャーやウーバーを使うのがためらわれる時もある。カラチでは、常に誰かの車に乗っけてもらっていた。

始めはためらいがあった。自分の足ぐらい自分で見つけなきゃと。しかし、それが無理ゲーだと知ってからは、ためらいもなく「あ、家まで乗っけて行って」だとか、「モールに行きたいんだけど、連れて行ってくれん?」などと、のうのうと言えるようになった。

日本であれば、図々しい、迷惑になる・・・と考えてしまうのだが、そうしないとガチで生きられないので、人に頼るしかないのである。一方で、パキスタン人たちは、嫌な顔をするそぶりも見せずに、「もちろん、送ってくで」と言ってくれるのである。

これは外国人の私だけでなく、パキスタン人同士のやりとりを見ていても、同様の事例が多発している。

この他にも、SIMカードの取得でトラブったり、海外クレジットカードが使えず航空券が買えない!といったトラブルの度に、周りのパキスタン人たちが「一緒にSIMカード屋に行ったる」だとか「旅行代理店で働いている友人がいるから、そいつ経由で予約しな」などと助け舟を出してくれるのであった。

パキスタン人は助け合いの中で生きている。そうしないと生きていけないからだ。そこはまるで、「ALWAYS 三丁目の夕日」みたいな人情社会がある。

ただこれはいいことばかりではなく、隣人やコミュニティとの距離が近づきすぎることで、プライバシーというものがなくなり、自分の一挙一動が井戸端会議の話題になったりすることもある。

こうしたパキスタン人のホスピタリティを、イスラーム教徒だからとみなすこともできる。確かにイスラーム教では、ゲストを歓待することが推奨されている。しかし、これまで多くのイスラーム圏を旅してきたが、パキスタン人の歓待はその比ではない。

むしろ、助け合わないと生きていけない社会ゆえだと思う。彼らにとっては、大したことのない親切でも、旅行者にはとんでもないレベルのホスピタリティに見える。同時にそれは、彼らが我々の想像をはるかに超えた、生きづらさを抱える社会にいることも意味する。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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