恐怖の時間!トルコ警察に職質され震えた日

どういうわけか、海外にいるとたまに職質される。日本では、一度も職質など受けたことないのに・・・

知らない国のポリスに、「おい、警察だ」と声をかけられるのは、本当に心臓に悪い。

声をかけられた時は、「どこからどう見ても無害かつ非力な善良な市民なのになぜ!?」と、恐怖と絶望と悲しさが入り混じった、なんとも言えない感情になる。

おそらく、日本に住む外国人や外国人風の日本人が、警察に職質されるのと同じシステムなのだろう。どこの国においても、見慣れない外国人は怪しいのである。悲しい事実である。

過去には、ドバイ、サウジアラビア、イラクなどで職質を受けている。

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今だから言える話だが、いわくつき旅行だったイラクの首都バグダッドで職質された時は、もう尋常じゃないぐらい震えた。

団体ツアーだというのに、ホテルを抜け出し1人で観光していたところ、警察に出くわしたからである。単なる職質ではなくパスポートを取り上げられ、15分ぐらいの放置プレイを受けた。

パスポートが返ってこなかったらどうしよ・・・

ツアーの引率者に無断外出がバレたらどうしよ・・・

なんでよりによってイラク警察なのだ・・・

その時は、放置プレイのみの刑で解放されたが、万が一何かがあったことを考えると、あの時の自分をフルボッコにしてやりたい。

そして今回はトルコである。トルコといえば、日本人旅行者も多く、治安も良い。まさかこんなところで、職質を受けるとは思いもしなかった。

1回目の職質は、トルコ中部の都市カイセリでの出来事だった。週末に、タラスと呼ばれる小さな街を一人で歩いていた時のことである。

「ブブー」

ポリスカーがこちらに向かって、クラクションを鳴らしているではないか。

ひえっ!?

過去の職質がハイライトでよみがえり、顔がひきつる。

「きみい、ちょっと身分証明書見せて。学生?仕事は何やってるの?」

魂が抜けた身体で、パスポートを渡す。2人組のポリスがパスポートチェックを行っている間、虚空を見つめた。

何かとがめられるのだろうか、と思いきやポリスの反応は意外だった。

「ふ〜ん、日本から来たの。トルコ人はねえ、日本人に対してものすごくシンパシーを感じているんだよお☆」

友好的な反応である。

適当に「はあ・・」と相槌をうっていると、助手席に座る別のポリスがパスポートを眺めながら、「へえ、いろんなところに行ってるんだねえ」と、運転席ポリスときゃっきゃと談笑している。

しまいには、「君って、何歳なの?う〜ん、27歳ぐらいに見えるかなあ」などという、どうでもいい年齢当てっこゲームが始まる。

くっ。暇な警察め。

人がどんな思いで職質に答えていると思ってるんだ!といいたかったが、ポリスなので何も言えない。かといって、ポリスに友好的に答えるコミュ力の高さもなく、ひたすらアホみたいに「はあ・・」と生返事を繰り返す。

これまでの職質の中でも、これはずいぶんとマシな方である。

次の職質は、トルコ南東部の都市ガジアンテップでの出来事である。ちなみにガジアンテップは美食の街としても知られ、ご飯を食べるためだけにトルコ人も旅行するような観光地である。

そんなガジアンテップのバスターミナルでのこと。お金を引き出そうとATMに並んでた時に、それは起こった。

「警察だ!身分証明書を見せろ」

と男が、ポリスと書かれたIDカードを見せつけてくる。

は?

ここで2択クイズである。

1.彼は本物のポリスである
2.彼はポリスを語る偽物野郎である

正直、2だと思っていた。

なぜなら男はポリスっぽい格好をしていないし、IDカードもよれたズボンのポッケから薬物を見せるような感じで、チラ見せする程度だ。IDカードもなんだか安っぽいし。

何より職質しているのに、片手にタバコである(トルコは、みんなどこでもスパスパやっている)

片手間で職質・・・

モノホンの警察にしては、悪過ぎやしないか?

絶対に偽物だ。

今度はこちらの職質ターンである。

「本当にあなたポリスなんですか?」

すると男は目配せをし、ポリスと書かれたブースを指す。

げげっ。

これは本物のポリスやないか。とは言え、偽物より本物ポリスの方がまだマシだ。しょうがないのでポリスブースについていき、他のポリスがたむろしている場所で、パスポートチェックを受ける。

チェックしている間も、ひたすら男はタバコをスパスパやっている。

この人、委託警察なのかしらん。

そんなことを考えていたら、チェックが終わりパスポートが返却され解放された。

職質というのは、不思議な時間である。

「警察だ!」

フラッシュモブのごとく、突然投げかけられるその一言で、アクションが始まる。

圧倒的な権力でその場に立ち止まることを余儀なくされ、こちらは主に動揺、恐怖そして、ほんの少しの悲しみと怒りがトッピングされた感情を一気に飲み込まされる。

身分証明書を見せている間は、地獄行きか、天国行きかという死後の審判を待つかのような気分になる。

そして、何もなければ権力者は何も言わず立ち去っていく。

「引き止めて悪かったね」などという、人間として当たり前のコミュニケーションは発生しない。そう、これは人間対人間のやりとりではない。権力と人間のやりとりである。

解放されたのちも、解放の喜びと「なぜ自分が・・・」という疑念、そして恐怖の残り香がまとわりつく。

これは、職質された人間しか分かり得ない、不思議な時間なのである。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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