イエメンは本当に危険?イエメンの現在と現地で感じたリアルな治安

イエメンというだけで、とにかく治安が悪そうである。2015年に始まった内戦は、今も続きもはや泥沼状態。

ニュースで流れてくるのは、空爆による一般市民への被害、食糧不足による飢餓、コレラ蔓延など「世界最悪の人道危機」とも呼ばれる悲惨な出来事ばかりである。

イエメンの治安は相変わらず危険

そうした状況なので、イエメンの治安は、イギリス外務省でさえも全土を真っ赤に塗りつぶし、退避勧告を出している。


イギリス外務省のイエメン治安レベル

一方で日本も同じく、危険度レベル4で退避勧告を出している。イギリスも日本も現地の大使館を閉鎖している状態である。


日本外務省のイエメン治安レベル

一方で、そうした中でも観光客がほそぼそとやってきている場所がある。それがイエメンに属する離島、ソコトラ島だ。かつては、ドバイからも直行便が出ており、最盛期では年間3,000人が訪れるほどの島だった。

本土の内戦のあおりを受けて、ドバイからの直行便はなくなり、観光客の足も遠のいた。

ソコトラ島の治安は比較的安定していて、過激派や内戦の気配はない。島民自身も、「この島には過激派もいないし、内戦もなかった」という。

ただ、危険レベル4のソマリアとイエメンに挟まれていることから、「ここも危険レベル4の赤でええやん」ということで、赤く塗りつぶされた感じはする。ただ、ソコトラ島に行くには、イエメン本土やソマリア沖近くを通過する必要があるので、安全とは言えない。

ソコトラ島のホテルで、テレビを見ていたら本土のニュースが流れてきた。イエメン北部の各地で、兵士たちが、ミサイルや銃をぶっぱなっていた。

ソコトラ島の雰囲気とは、あまりにも対照的。やはり本土では内戦が続いているのだ、と思いつつも、どこか気の抜けた島の雰囲気とギャップを感じる。


平日の真昼間から、お茶を飲みながらだべっているソコトラの島民たち

イエメンで今、ギリ旅行ができるとすれば、ソコトラ島ぐらいだろう。島には、島ならではののんびりとした雰囲気が漂う。昼間であれば、街中を歩くこともできるし、子どもや女性も多くいた。

観光客もちらほらみかけた。ヨットで世界一周中のポーランド人や、アメリカとカナダからやってきた団体客。グループ参加者の最高年齢はなんと85歳のおばあちゃんアメリカ人であった。いやはや、その意欲には頭があがらない。


ソコトラ島を訪れる観光客のお目当は、ソコトラ島の固有種たちが醸し出す不思議な光景

かといって、今の時期にソコトラ島観光を諸手をあげておすすめするか、といったらそうでもない。いや、むしろ物好きを自称するならば、どうぞ、という感じである。

今の時期に行くのはいい意味でも悪い意味でも、奇人変人臭を漂わせる人ばかりである。

団体客にしても、ツアーを組んでいたのは、アフガニスタンやイラクといったひとクセある旅先へのツアーを専門に組んでいる会社だったし、ソコトラ島まで同船していたブルガリア人カップルも、ややクセがあった。

治安以前にイエメン入国の問題

そもそも治安以前に、問題なのがイエメン入国には時間もしくは金を相当かけなければいけない、という問題がある。

入国は空路、陸路、海路と選べるが、どれも楽な道ではない。松竹梅となっていたら嬉しいが、どれも梅なのである。

空路は簡単そうに見えて、めちゃくちゃ金がかかる。中目黒の駅チカ1Kマンションが1ヶ月は借りられる値段である。

それに加え、イエメン自体が観光客をウェルカムしていない。いや、人が悪いという意味ではなく、「観光客などもはやイエメンにやってくるわけはない」という気構えなので、観光スポットの博物館などは軒並み閉まっていた。

イエメン_セイユーン
イエメン南部の町、セイユーン

それに加え、いたるところで人々の貧しさを感じる。サウジアラビアのジェッダにあるイエメン地区でもチラリと感じたのだが、その日暮らしに必死な人々の中に入るのは、心情的にも楽なことではない。

ソコトラ島の島民も貧しいといえば貧しいのだが、こちらは明るいビンボーという感じで、どこかおおらかな場所がある。

けれども、本土の雰囲気はそれと違い、結構シビアである。カフェで座っていると、物乞いの女性が代わる代わる、こちらに手を差し出してきた。

イエメン本土への渡航はおすすめしない

イエメン本土を旅したカナダ人バックパッカーのブログを読むと、イエメンに行っておきながら「あそこは行くもんじゃない」と書いていた。イエメンに行っておきながら何を言うと思ったが、今ではなんとなく彼の発言の意図がわかる。

ここは、容易な気持ちで入れる場所ではないな、と。内戦だけが理由ではない。人々はずいぶん貧しく、保守的な慣習もいまだ残っている。イエメンの観光をしたいという理由ならば、もう少し様子を見た方がよいだろう。

サウジの空爆により多くの市民が亡くなっている。さらには、アル・カイーダやイスラム国といった魑魅魍魎たちも、うごめいている。

こうした要素に加え、入国自体に不確定要素があり、ソコトラ島をのぞくと、土地が観光客を受け入れる余裕がないように見える。

おすすめの本

なぜイエメンとサウジは、ドンパチやっているのか?そもそもなぜサウジはイエメンを攻撃するのか?といった疑問にわかりやすく答えてくれるのが、この本。メインはサウジの話だが、イエメンについても触れている。

イエメンに関してまとまった本は、ほとんどないので、重宝する。

アマゾンのKindle Unlimitedの無料体験を使えば無料で読める。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

管理人をフォローする
イエメン
シェアする
進め!中東探検隊