ルーヴル・アブダビ。誰もが知る有名作品も!見どころと行き方

グランドモスク、エミレーツパレスに加え、新たなアブダビの観光名所となったのが、このルーヴル・アブダビ美術館。

名前の通り、本家フランスにあるルーヴル美術館の国外初となる分館だ。

巨額の資金を投じて、アラビア半島の一角につくられた美術館とは一体どんなものなのだろうか。

芸術がないなら金で買っちまえ。アブダビの観光戦略

アブダビの中心地から車で20分ほどの場所にある、サディヤット島。ここに、ルーヴル・アブダビはある。

ルーヴルアブダビ美術館
ルーヴル・アブダビの「光の雨」。フランスの建築家、ジャン・ヌーベル氏による設計

ほとんどの観光客は知る由もないが、このルーヴル・アブダビには莫大な費用がかかっている。

アブダビの威信をかけていそうな、この一大プロジェクト。その費用感がわかると、ますますルーヴル・アブダビのすごさがわかる。

まず「ルーヴル」という名前の使用料として、525万ドル(約530億円)。しかも、名前の試用期間は30年間。一方で建築費用は108万ドル。いかに、ルーヴルの名前が”お高い”かが分かる。

そもそもアブダビには、パッとする歴史も芸術もない。しかし、金はたんまりある。

そこで思いついたのが、ルーヴルの分館なのだろう。いくら有名で高額な美術品を集めた美術館を作ったとはいえ、単なるアビダビ美術館としては、人が来ない。

そこで、ルーヴルの名前を借りれば一躍有名になり、世界中から人がやってくることを目論んだ。確かに、アブダビは正しかった。ルーヴルというだけで、人が本当にわんさかやってきたのだから。

きらびやかさとゴージャスさが売りのドバイに対し、アブダビはあくまでもお上品な金持ちを目指す。ドバイが六本木ならば、アブダビは田園調布なのだ。

いくら世界一が好物なドバイとはいえ、アブダビのような豪華絢爛なモスクはないし、インテリをアピールするような高い芸術性をもつ美術館はドバイにはない。両者ともこの辺のすみ分けを心得ているらしい。

知られざる歴史ヒストリーに触れる

ルーヴル・アブダビは、美術鑑賞の場というよりも、人類の壮大な歴史を感じる場じゃないか、と思う。

いわゆる、我々が芸術といって想像するルネッサンス時代のヨーロッパ絵画やコンテンポラリーアートの作品はそれほど多くない。

12の展示室は、歴史ごとに区分され、異なる地域の作品や出土品が横断的に展示されている。


写真は取り放題

世界史などでも、ヨーロッパ史、中国史などとバラバラにされがちだが、同年代に各地域でどんなことが起こっていたのかを俯瞰的に見ることができる。

特に注目したいのは、アラビア半島をはじめとする中東作品の多さ。特にUAEがあるアラビア半島は、砂漠ばかりで何の歴史もないでしょう、と思われがち。

しかし、違うのだ。

日本の縄文土器の近くには、アブダビのマラワ島で出土した陶器の花瓶が展示されている。メソポタミアで作られた5,500年前のものだという。当時、メソポタミア文明とこの地域の人々が交流をしていたことを示すものだ。


3500年~2500年前のものと見られる日本の縄文土器(左)と5500年前のものと見られるメイド・イン・メソポタミアの花瓶(右)。


サウジアラビアで見つかった聖地メッカへの距離を示す石標識。700~900年頃のもの。メッカを訪れる巡礼者たちが、この標識を頼りにメッカへ向かった。

実際に、バーレーンには、ディルムン文明と呼ばれるメソポタミア文明やインダス文明に匹敵する文明があったともいわれている。

教科書に載っていない歴史。ディルムン文明の地を訪ねて

そのほかにも、人類最初の文字が発明された時代。文明と帝国が興った時代。宗教が広まった時代。人類が航海を始めた時代。人類が初めて交易を行った時代など。

まるで赤ちゃんの成長記録のごとく、人類の歴史が淡々と語られる。

中には、我々でも見たことがないような日本のお宝も展示されていた。1690年頃に書かれた地図や江戸時代の歌舞伎俳優を描いた浮世絵など。

日本の美術品を改めてみると、世界でも例を見ない、ユニークさと繊細な感覚を持っていることが分かる。

一度は見たことがあるあの有名作品も!

人類誕生から始まりようやくたどり着いたのが、我々が一般的にイメージする美術品が展示されているモダンワールドの時代。

教科書で見たことがある「アルプスを越えるナポレオン」やレオナルド・ダ・ヴィンチ「ミラノの貴婦人の肖像」。モネやゴッホといった名だたるアーティストの作品もずらりと並ぶ。


ジャック=ルイ・ダヴィッド「アルプスを越えるナポレオン」


レオナルド・ダ・ヴィンチ「ミラノの貴婦人の肖像」

こうしてみると、我々がすげえ!と興奮する有名作品が生まれたのは、人類史の中で言えば、ごく最近のことだったのだということが分かる。

しかも、単に有名&評価されているというだけで、すごいと思われているものが多い。歴史的価値を考えれば、もっとすごいものがこの美術館には展示されているのだが。


美術関連書やオリジナルグッズなどが充実したショップ

美術館での滞在時間は?

1度目の訪問では3時間ほどでまわった。

数時間でまわれる場所だと思っていたが、想像以上に情報量が多く、楽しめる場所だということが判明。特に文化人類学や歴史に興味がある人にとっては、たまらない場所だろう。

ルーヴルアブダビ_夜
暗闇にぽっかりとうかびあがるルーヴル・アブダビ

私もそんなに歴史に熱心な人間ではないが、知っている歴史の鱗片を美術館で発見すると楽しくなるものである。そんなわけで、次回は世界史の教科書を軽く復習していこうと思う。

やはり作品1つ1つを見たり、カフェでお茶したり、お土産屋を見て回ると、半日以上は欲しいところだ。

入場料とチケット予約方法

チケットは、当日チケットカウンターで購入することもできるし、事前に公式サイトで買うこともできる。価格は同じだが、当日券の場合だと列に並ぶ可能性もある。

チケット料金は、AED 60(約1,800円)。13未満のこどもは無料。その場合は、IDを求められるので必ず持って行くべし。

これに加えて、「マルチ・メディア・チケット」というものがある。要は音声ガイド。美術館の受付で、iPad miniを受け取り、作品の詳細をチェックすることができる。チケット料金は、AED 20(約600円)である。

受け取りには、パスポートや免許証など身分を証明するものが必要。残念ながら日本語はない。

個人的には、音声ガイドなどどうでもいいと思っていたのだが、結構使っている人が多かったり、作品が興味深かったので借りればよかったなあと少々後悔した。

そのほかにも、展示作品や建築ツアーなどが定期的に開催されている。こちらも英語のみ。日程が限られているので、あからじめ公式サイトでチェックしておくべし。

ルーヴル・アブダビへの行き方

エミレーツパレスやドバイアブダビ間のバスが発着するセントラル・バス・ステーションから、車で約20分。

バスは頻繁にあるわけではないので、タクシーが便利だ。ルーヴル・アブダビ前には、タクシーが閉館間際まで何台も待っているので、帰りも困ることはない。

営業時間

火曜〜日曜:10時から20時まで(木曜と金曜は22時までの営業)
毎週月曜日は休館日

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