イランのナマック塩湖で見た幻想的世界とカヴィール砂漠の魔力

絶景というものには、あまり興味がない。

けれども、なぜかいい場所を案内してやるぞお、というイラン人のホスピタリティにより連れてこられたのが、このカヴィール砂漠&ナマック塩湖である。カシャーンから車で1時間半ほど行った場所にある。

所違えば砂漠も全然違う

正直言うと、「砂漠かあ・・・」と思っていた。もともと砂漠だった都市に住んでいる上、時々砂嵐の被害を被るほど、砂漠は日常生活において身近なものだからだ。

そんな砂漠をわざわざ見に行くなんて、鳥取砂丘近くに住む住人に、わざわざドバイで砂漠を見せるようなものである。

と思っていたが、それは砂漠の奥深さを知らない浅はかな人間の見識だったのだということを思い知らされる。

砂漠の人気動物、ラクダもドバイのラクダとは様子が違う。同じヒトコブラクダなのだが、色がずいぶんと異なる。

ドバイでラクダといえば、「こちらに用意したラクダに乗ってくださいね〜」と、観光客は準備された行儀の良いラクダに乗るだけである。

砂漠ツアーに出かけた観光客たちは、一列に並びラクダ乗り体験の順番をいまかと待つ。ようやく自分の番がやってきたかと思うと、ラクダ使いがその辺をくるっと一周させ、3分ほどでラクダ乗り体験は終了する。これがドバイにおける観光客とラクダの一般的な関係だ。それ以上でもそれ以下でもない。

ここキャヴィール砂漠では、そんな白々しい演出で観光客を喜ばせることなど断じてしない。だから、「ラクダ?ああその辺にいるかもね?」という感じで、我々はその辺をのそのそ歩いているラクダを見るぐらいである。


その辺をウロウロしていたラクダの群れ。「たいめいけん」の茂出木シェフを思い出す色合い


ベビーラクダとママラクダ。ラクダのベビーもお乳を吸うということを学ぶ

砂漠のど真ん中に突如現れた、白銀の世界

イラン人のおっちゃんが鼻を膨らませながら、「ここの一番の自慢は、でっかい塩湖なんだ。それはもう巨大で・・・」という。ふうん、どんなもんかねと行ってみると、眼前に現れたのは、一面海のような光景。さらに近づくと、一面塩の結晶で覆われた真っ白な白銀の世界が広がっていた。


イランの塩湖といえば、国内最大のウルミア塩湖も有名だが、ここでも十分じゃないか。空と塩湖が一体化して、限りなく白の世界が続いている。しかも、ほんの5分前はラクダがのそのそ歩く砂漠だったのに、というギャップ。


塩湖に行くと人はジャンプしたくなるようです

さらにこの近くには、砂漠なのに「井戸」があり、井戸の中では魚が優雅に泳いでいた。一体なんなんだこの不思議砂漠は・・・

なんの変哲もないドバイの砂漠でさえ、あんなに観光客を集めているのだ。この幻想的世界と不思議に満ち溢れた砂漠こそもっと注目されるべきだろう。

定番の砂漠アクティビティのはずが・・・

もうこの辺でお腹いっぱいになってきたのだが、イラン人のホスピタリティはとどまることを知らない。砂漠のど真ん中にあるキャラバンサライ(隊商宿)で休憩していると、なぜかイラン人カップルが乗っている4WDに乗せられ、再び砂漠へと連行される。

運転手は100キロ超えと見えたる、巨漢イラン人。タレントの松村邦洋のごとく、お調子者感がにじみ出ていた。ここでは仮にイランの松村ということにしよう。


丸ごとメロンをかかげるイランの松村(左)。キャラバンサライで飼われていたウサギ(右)に「メロン食うか?」と丸ごとメロンを差し出す、動物への優しさも持ち合わせていた

イランの松村は、街中でないことをいいことに、100キロほどで4WDを操る。

この時ほど日本車がイランで普及されていないことを残念に思ったことはない。とにかく揺れが激しいのだ。尻も痛い。ソマリアでさえ4WDといえば、中古のトヨタである。日本車ではない4WDで、砂漠を走り回ることの恐ろしさをこの時改めて実感した。

さらに調子に乗って、イランのポップソングみないな曲を爆音で流し始める。鼻歌で歌い始めるイラン人カップル。車内はもうよく分からない状況になっていた。

砂漠にかりでた一行が何をしたかというと、砂丘で豪快ドライブである。ドバイでも定番のアクティビティ。通常は、「砂丘でドライブ〜」と4WDが砂丘をのぼってますよ、という画像とともに、ちょっとしたハラハラアクティビティと紹介されているが、これがまあ全然違うのである。

ジェットコースター並みである。しかも、オンボロ4WDでイラン人カップルの女性がひたすら断末魔の叫びをあげる。半ば地獄の門に入りかけたような空気に車内は包まれていた。

その後、砂丘で休憩。


謎のセンスで写真撮影に励むイラン人たち

若きイラン人カップルは、とてつもない高さの砂丘を上りつめていった。砂丘から帰ってくると、なぜか女性が半泣きしていた。一体砂丘で何が起こったのか。

不思議な場所には不思議な人々がやってくる。この謎に満ちた砂漠に一種の魔力を感じたのは私だけだったのだろうか。

イラン旅行のおともに

イラン出身の吉本芸人が書いた本。イランについてこれほど面白く、軽やかにかいた本を他に知らない。イラン人が面白すぎるというより、この本が面白すぎる。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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