道を歩いていると、フィリピン人たちがよくぶら下げている袋を見かける。
袋には、不敵な笑みを浮かべるキャラクター。
一体、何だあのキャラクターは?
不敵な笑みが一度見たら忘れられない
その名は「ジョリビー」。
本国フィリピンではマクドナルドより人気
ジョリビーとは、本国フィリピンでは絶大なる人気を誇るフィリピンのファストフード店のこと。
あの世界的王者マクドナルドさえ、フィリピンではジョリビーに勝てないという。
2017年時点の数字になるが、フィリピン国内におけるマックの店舗数は164店、ジョリビーは253店と、圧倒的な店舗数でマックに差をつけている。
UAEも例外ではない。インド、パキスタン、バングラディシュに次いでUAE人口を占めるのがフィリピン人である。
出稼ぎで多くのフィリピン人たちが、UAE、カタール、オマーン、サウジアラビアに住んでいるため、ジョリビーはこうした国でも展開されているのだ。
アメリカのマックやKFCのようなファストフード店と見せかけておいて、ローカル色が強く、独自路線をいくのがジョリビーである。
ジョリビーのメニューをみると、それが一目でわかる。
ジョリビーの主戦力は、ライス、スパゲッティ、チキン。
ハンバーガーは、隅の方に申し訳なさそうにある。ポテトは、もはやサイド中のサイドメニュー扱いで、バーガーやチキンの後ろに隠れてしまっている。
マックでは王道のメニューがのき並み、端に追いやられている。
それがジョリビーだ。
ジョリビーで食べるべきおすすめメニュー
ジョリビー初心者なので、とりあえずジョリビー・エキスパートのフィリピン人たちに、何を食べるべきか聞いた。
スパゲッティ&チキン
これが叩き出された答えである。
フィリピンのスパゲッティは甘く、フィリピーノ・スパゲッティやスイート・スパゲッティとも呼ばれている。
なぜ甘いのか。
それは「バナナ・ケチャップ」を使っているからである。ケチャップ=トマトで作られたもの、というイメージがあるが、フィリピンの「バナナ・ケチャップ」は、主にバナナや砂糖で作られたもの。
第2次世界大戦中にトマトが不足したことで、代替品として現地でよくとれるバナナを使い始めたのが、はじまりだと言われている。
スーパーにあるフィリピン食材コーナーをのぞくと、バナナ・ケチャップをはじめ、甘口、イタリア風、フィリピーノ風といったスパゲッティのソースが売られていたりする。
スーパーに売られているフィリピンのスパゲッティソース
「フィリピンのスパゲッティは、甘いのが特徴やで。うちのおかんは、スパゲッティによく練乳いれとったな。あれがおいしんやて。デザート?ちゃうて。もちろん主食や」
とあるフィリピン人は、思い出話とともに、甘いスパゲテッィについて語ってくれた。
甘いスパゲッティ・・・?
かつて私は、アラビア半島の甘いスパゲッティ、「バラリート」を食して、体が震撼したことを覚えている。
あの衝撃が再び再来するのか・・・?
インジェラを超えるツワモノ現る!甘いパスタ、「バラリート」の衝撃
なぜスパゲッティが甘い?
KFCやピザハットで閑古鳥がないている一方、ジョリビーは、フィリピン人たちであふれかえっていた。
人気店の雰囲気を醸し出すジョリビー
同時刻のKFCとピザハット
メニューを頼む際にも、一筋縄ではいかないのがジョリビー。スパゲッティとチキンメニューを頼もうとしたその時。
メニュー名をみて、固まる。
「チキンジョイとジョリビー・スパゲテッィ」
チキンジョイ・・・?
チキンとエンジョイを掛け合わせた、造語。謎にテンションが高い。普通にチキン&スパゲッティでいいじゃん?メイド喫茶のメニューか。
予期せぬ辱めを受けてしまった。
そして、いざ実食。
恐れていた甘いスパゲッティだったが、噂に聞くほど甘くはなかった。バラリートの1,000倍は、おいしいスパゲッティである。
バラリートは、体をのけぞりながら「きええええ」という奇声が出る甘さだが、それに比べればフィリピーノ・スパゲッティは普通に「うんまい」。
甘辛なエビチリの要領である。
さて。チキン。ジョリビーのチキンは、グレイビーと呼ばれる肉汁をつけて食べる。肉に肉をつけて食べる、という不思議な所作が、そこには生まれる。
本国でのジョリビーの味を知るフィリピン人からすると、「ドバイのチキンの味は少々落ちるとるで」と言っていたが、そんなことも気にならず美味しくチキンをいただいた。
日本のかき氷が発祥、「ハロハロ」
ジョリビー・エキスパートにすすめられたのが、「ハロハロ」。暑い夏にぴったりなメニューだ。「ハロ」はタガログ語で混ざるを意味する。
意味の通り、細かく砕かれた氷や果物、アイスクリーム、ゼリーなどを混ぜたものである。
「知っとったか。ハロハロって、日本の食べ物に由来してんねんで。氷をこまかく砕いた・・・なんやったっけ、あれ。そや、かき氷や」
と、とあるフィリピン人が教えてくれた。
諸説はあるものの、戦前、海外に出稼ぎに行っていた日本人移民が、甘味屋を開き、そこから広まったと言われている。
ハロハロを食べるのなら「チョーキング」やで、というフィリピン人のすすめに従い、チョーキングへ。
チョーキングは、中華料理をテーマとしたフィリピンのファストフード店で、ジョリビーと同じ会社の傘下にある。
私は意気揚々と「ハロハロ・スペシャル」を注文。
写真のハロハロ
そしてでてきたのがこれ。
実物ハロハロ。食べかけではない。
人間でもよくあるパターン。写真と本人が違いすぎるというね。
この場合、実物を責めるのではなくて、できすぎている写真の方を責めるべきである。写真とは、真実を写しとるものじゃなかったのか。明らかに、メニューの写真は虚像じゃないか。
虚像にこれ以上、怒ってもしょうがない。
ハロハロを食べると、なんだか懐かしい味が蘇ってくる。
シャリシャリっとした氷の食感といい、アクセントの甘味。目をつぶって食べれば、完全にあんみつである。
まったく赤の他人に出会ったはずが、懐かしさを覚えてしまう、そんな不思議な食べ物であった。