ドバイの驚きの結婚事情。高年収なのにローン地獄、お金がなくて結婚できない!

「俺もそろそろ結婚したいな」と同僚のアラブ人がぼやいた。24歳のアラブ男子。アラブ社会ではそろそろ結婚するお年頃だそうだが、アラブ社会では一般的な親、友人の紹介によるお見合い婚ではなく、恋愛結婚を望んでいる。

気になるお相手は、ウクライナ出身の美女らしいのだが、「アラブ人の方がいいんじゃないの?」と聞くと、「いやあアラブ人同士の結婚は大変だよ。何せ結婚するまでに結婚式、新居の費用、新婦が望むブランド物のドレスやカバン、金1kgとかを全部こっちで新郎側がもたなきゃいけないしね」

ちょっとまった。結婚するのになぜ金1kgというワードが出現するのか?解せない。

聞くところによると、アラブ社会では結婚の際に持参金を用意するのが慣例になっているそうだ。持参金といえばかつて日本にもあったし、インドでは女性側が負担する形になっているが、アラブ社会においては男性側が用意するのが一般的だという。

年収2,600万円以上の裏で・・・

実はその結婚の持参金がかつてはアラブ首長国連邦では大きな問題になっていた。石油の発掘、ドバイの急激な経済成長のおかげで、小金持ちとなったUAE人ではあったが、それに乗じて結婚時に要求される持参金、結婚資金が大きな負担となっていたのである。

新婦が高級ブランドのドレスを着たい、有名ブランドのジュエリー、カバンが欲しい!金が欲しい!などと言えばそれに従うしかない。まるでクリスマスのサンタと子どもの関係である。

あまりにも高額なものを請求された場合は、断れないのか?と聞くとそんなことをしたら婚約破綻だ!という。だから必ずしも結婚式に関係のないものであっても、未来の嫁が欲しいといえばそれに従うしかないのである。新郎の方は未来の妻に法外なものを請求されないかと不安だ。

UAE人の結婚式費用平均は900万円以上

結婚資金も新郎にとっては大きな負担となる。ドバイのブライダル関連会社の調査によると、UAE人が結婚式にかける平均的な費用は、82,000ドル(約900万円)だという。

そして湾岸諸国に住むアラブ人女性を対象にした別の調査結果では、12%以上の女性が100,000ドル(約1,100万円)、40%以上の女性が50,000ドル(約550万円)以上の費用を結婚式にかけるつもりだ結果が出ている。一方で欧米人の結婚式の平均費用は20,000ドル(約220万円)で日本は約360万円。

結婚式にかける平均費用

UAE人  約900万円
欧米人 約220万円
日本人  約360万円

なぜアラブ人の女性は結婚式に高額な費用をかけるのか?衣装やジュエリー代が高いということもあるが、招待客の数も多いのである。アラブ人は家族が多く、日本と比べると親戚や知人と親密な関係を持っている。2012年の調査によると、ドバイの結婚式で招待するゲストの平均人数は250人。この数はドバイにいる外国人も含めたデータだが、UAE人だけを見れば500人以上を招待するというカップルも少なくはない。ちなみに日本の招待客の人数は全国平均で72人である。

借りた結婚資金が返せず、ローン地獄、逮捕、そして離婚

こうした結婚費用に加え、新居の費用、さらには新婦もしくは新婦側の家族への持参金をすべて新郎側が負担する。UAE人男性の平均初婚年齢は、2012年時点で27歳である。大学を卒業して働き始めて数年の男子に、結婚式費用、持参金などを含めると1,000万円程度の負担がのしかかるのである。

すべてのUAE人が日本のメディアでとりあげられるような年収2,600万円以上というわけではない。またこの数値はあくまで世帯年収だ。おおよそ6~7人家族が一般的といわれるUAE人家庭で考えると一人当たりの年収を計算したらさらに低くなる。

さらに結婚費用が新郎一人ではまかないきれないことを考えた場合、新郎の親も経済的な援助をほどこさなければいけない。3人兄弟のうち、全員が男。大学を出たばかりで貯蓄がない22~24歳で結婚するとなると、親の負担は合計で3,000万円以上にもなる。

そんなわけで結婚費用がまかなえずブライダルローンを組む男子が続出。結婚後もローン地獄は続くことにより、さらなる借金を重ね中には離婚に至るケースもある。さらに UAEではローンの返済が不可能になると法律により逮捕されてしまうため、ローンの支払いができないということで逮捕者も相次いだ。

結婚費用が高くつかない外国人女性という選択

一方で、高額な結婚費用、持参金が請求されるUAE人女子と結婚を回避するため、非UAE人と結婚するUAE人男性も増加。国全体としては927万人の人口だが、自国民の数が150万人程度だといわれている。このままでは純粋なUAE人の減少につながる。そう危機感を覚えた政府は1990年代にある政策に乗り出した。

それが結婚基金とよばれる政府が運営する団体だ。これはUAE人同士の結婚を促進しようとするもので、UAE人の男性が結婚する際に一定の条件を満たせば助成金を受け取ることができる。

助成金の毎月の返済は銀行のブライダルローンよりも低額で、さらに子どもが一人できるたびに助成金の20%の返済が免除される。

政府が公開するところによると、設立から2014年までに6万人以上のUAE人男性が利用し、日本円にして約1,300億円が助成金として使われたそうだ。さらに結婚を控えたカップルのカウンセリングサービスを提供するなど、手厚い援助が受けられる。

結婚基金の他にも、持参金は最大50,000ディラム(約150万円)までと法律で定めるなどとして、積極的にUAE人同士の結婚を促そうとしていた。

しかし1990年代に始まった政府の援助も、UAE人同士の結婚の増加に大きく貢献したとは言い難い。国内メディア、ガルフニュースが報じたところによると2012年時点で非UAE人と結婚したUAE人男性は30%だったのに対し2014年ではその割合が57%に上っていたことが明らかになった。

またUAE人同士の離婚率が高いということも報じられており、今後も政府にとって課題となるだろう。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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