野郎しか存在しない、男だらけの街【クウェート・シティを歩く】

見渡す限り男しかいない空間。そんな空間に身を置いたことがあるだろうか。もちろん男子校や刑務所といった特殊な場所を除いてである。

日本で普通に生活していれば、そんな空間に入り込むのは稀かもしれない。私も、この湾岸諸国にやってくるまではそんな異次元空間に出入りしたことはなかった。

しかし、この男だらけの空間は湾岸諸国ではおなじみの風景である。

湾岸の石油産油国では仕事の需要はあるが、自国民の数が少ない&仕事に必要なスキルがないということで、とにかく労働力が足りない。かくして、多くの出稼ぎ労働者たちが国外から流入することになったのである。

以前にも述べたが、それゆえにこうした産油国の人口構成比は、通常の国と比べるとかなり異なる。いわば、20~30代の男が圧倒的に多い、つまりは一般的な会社のような構成比なのである。

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また、出稼ぎ労働者事情もクウェートはドバイと異なる。現在、ドバイの人口の過半数を占めるのが、インドやパキスタン人といったアジア系である。自国民は国全体で2割弱である。

一方でクウェートは、自国民が全体の人口の3割を占める。そしてアラブ系労働者が3割と、6割がアラブ系である。つまりアラブ系が人口の過半数を占める。それにイラク侵攻以前は、多くのパレスチナ人たちが働いていた。パレスチナ人たちは、クウェートの国家建設を支える重要な柱だったのである。

そんなわけで、英語よりもアラビア語が優勢なクウェートでは、出稼ぎ労働者は出自がアジアであっても、アラビア語を流暢に話す。

インド人らしさを失い、すっかりアラブ人風になってしまったインド人タクシー運転手や、英語がまったくしゃべれず、アラビア語を流暢に話すインド人を見てびびったものである。これが、人間の進化というものらしい。

そんなクウェートで、男しかいない野郎スポットに出くわした。


カバン用の布を裁断する男性。アル・ムバラキヤスークにて。ナイロン製のカバンやスーツケース(中には銃弾ベルトも売られていた)など、とにかくカバンに関するものが売られている一角があった。そこでは、手作りでそうしたカバンを作っている職人たちを多く見かけた。


カバン屋の店の奥には、裁断された布を加工し、カバンの形にしていく男たちの姿が。


クウェート・シティーのバスステーション付近では、野郎による野郎のための野郎市が開かれていた。客も商売人もみな野郎。


花にたかる野郎集団。さらに進むと、これまた野郎しかいない野郎モールが。おもちゃ屋、アクセサリーショップなど実用的なショップが並んでいた。おもちゃ屋で、おっさんがおっさんにおもちゃを紹介する様はシュールであった。そこはせめて、家族か子どもがいてほしい場所である。


仁義にあふれる野郎だけのピクニック大会。クウェート・タワー近くのビーチの芝生にて。


男だらけの休日。海の肩車は産油国のビーチではおなじみの光景。インド人にとってはこの肩車で写真をとるのが、マイブームらしい。

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クウェート・シティで歩く女の人は、みなアバヤを着ていた。欧米系は少なく、かろうじてフィリピン人の女子グループを数組見つけたぐらいである。

どうやら東洋の女がウロウロするのは、異常なことのようで、しきりに人々はこちらに視線を向けた。

男女バランスが極端に崩れた空間。まるで大人版の男子校状態である。時には、そんなねじれた不思議空間に身を置くのも悪くない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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