【決定版】ソマリランド観光ガイド&旅行前に知っておきたいことまとめ

世界最恐と言われたソマリアに、治安が良い独立国家があるらしい。そんな奇妙な噂を聞きつけて、興味を持った人も多いのではないか。それがソマリランドである。

果たして本当に治安が良いのか。そもそもどうやって行くのか。どんな観光スポットがあるのか。ソマリランド旅行前に知っておきたいことをまとめてみた。

ソマリアとの違い

ソマリランドとソマリアは一体何が違うのか。

ソマリランドは、独立国家であるが、ほとんどの国に承認されていない。よって、一般的にはソマリアの一部としてしかみなされていないのである。

ソマリランドとソマリアの関係地図
ソマリアとソマリランドの位置

簡単にいえば、ソマリランドはソマリアと離婚したいが、ソマリアにそれを許してもらえないという状況にある。だから、ソマリアのままでいるしかない。これが現状である。

けれども、ソマリランド人の独立心は強く、せっせと独自の通貨や、政治体制を作り、国としての体裁を整えている。

パスポートもソマリアのそれとは違うし、入国スタンプもソマリランド独自のものである。旅行者からすれば、実質的にはソマリアとは違う国である。

ソマリランドへの行き方

ソマリランドの首都ハルゲイサへは、多くのフライトがある。

国として認められているソマリアの首都モガディシュよりもその数は多く、ほぼ未承認国家でありながら、格の差を見せつけている。

フライドバイ、エミレーツ航空、ダアロ航空、ケニア航空、ジブチ航空、エチオピア航空、トルコ航空とオプションは色々。ただし、週に2~3回しか出ていないというケースが多い。

エチオピアやジブチから陸路で入国することも可能。エチオピアからであれば、ディレ・ダワ、ハラール、ジジガといった町を経由して行くことになる。

日本から行く場合は、エチオピアのアディスアベバかドバイ経由になるだろう。

観光ビザの取り方

ビザは大まかに2通りある。エチオピアやイギリスにあるソマリランド領事館でビザを取る方法。もしくは、ソマリランドのホテルに依頼し、ビザ手続きをしてもらう方法がある。

後者の場合は、アンバサダーホテルなど国連やビジネスマン利用者が多いホテルに限られる。ホテルにビザサポート頼む!といえばサポートしてくれる。

空港でのアライバルビザもあるが、日本パスポート保持者には発行されない。世界最強と言われる日本パスポートの実態がこれである。

エチオピアでのビザ取得方法

私がアディスアベバにあるソマリランド大使館で、ビザを取得した時は、観光ビザ代は100ドルだった。ビザは当日に申請してから、2~3時間で発行される。ビザ申請には、パスポートコピー、パスポート用写真1枚、ビザ代を持っていけばOK。大使館へは、午前中に行くべし。

治安はどうなのか?

ソマリランド人が胸を張って自慢するのが、ソマリランドの治安の良さだ。

町を歩いていても「どや。ソマリランドは安全やろ」と聞いてもいないのに、自慢げに言う市民もいる。ソマリアに対してのマウンティングなのだろう。

確かに治安はいい。ただし、ハルゲイサ以外に行く場合は、政府のルールとして護衛を必ず雇わなければいけない。

・・・

ソマリランドの安全神話は一体どこへ行った?

これは、ハルゲイサの外が危険というわけではなく、万が一に備えてとのことで政府のルールとして決めているためである。ソマリランド国内の雇用を増やすため、という見方もあるようだが。

確かにソマリランドの治安はいい。ハルゲイサ市内に限っては、エチオピアのような感覚で歩ける。外国人を狙った強盗やひったくりが多発しているナイロビやダルエスサラームよりかは、断然に治安が良いと言えよう。

一方で、日本政府はソマリランドを国として認めておらず、ソマリアと同じやろ!ということで、危険度レベル4の退避勧告を出している。政府の安全情報は、必ずしも事実を反映しているとは限らないのである。

ちなみに治安はよいのだが、ソマリランドはチャイナコールがひどい。心して行くべきだろう。また、写真を嫌がる人も多いので、むやみやたらと写真をとってジモティーを激昂させないように気をつけたい。

言語

ホテル従業員や一部のジモティーには英語が通じる。しかし、町中では通じないことの方が多い。ジモティーが話しているのはソマリ語。アラビア語もほとんど通じない。

服装

ソマリランドは保守的なイスラーム教の国。女性はスカーフで頭を隠し、肌を見せないようにしなければならない。男性は、肌が見える短パンは避けるべし。

ソマリランドの観光シーズンは冬季である11月から3月頃。その他の時期だと暑すぎる。ただ冬季とはいえ、日中は30度近くになり蒸し暑い。速乾性のある服や肌に密着しない服を持ってきた方が良いだろう。

詳細はこちら
女性は要注意!ソマリランド観光へ行く時の服装アドバイス

空港から市内までの移動

空港から市内までは車で10~20分ほど。ホテルに迎えを依頼する方法もあれば、空港タクシーを利用する方法もある。お値段は両方とも20ドルが相場。

空港に到着すると、入国・出国税として60ドルを納めなければいけない。ユーロでも支払い可能。

市内移動

市民が使うバスもあるが、ハルゲイサの町は小さいので、歩きだけでも十分である。タクシーもある。ソマリランドのSIMカードを持っていれば、「*3000#」と番号を入力するだけで、タクシーがやってくる。

タクシー料金は、距離によって異なるが市内だと2~3ドルが相場。SIMカードを持っていなくとも、その辺のジモティーに頼んで、タクシーを呼んでもらうという方法もある。

旅費と物価

ソマリランド旅行は、やたらと金がかかる。いや、ソマリアに比べればまだ可愛いものだが・・・それでも他のアフリカ諸国に比べると、高めと言えるだろう。

まずビザ代に100ドル。そして入国税に60ドル。国に入るまでにすでに160ドルもかかる。ハルゲイサ市内は、そこまでお金がかからない。

しかし、ソマリランドの3大名所のうちベルベラとラスギールの2つが、ハルゲイサ市外にある。ハルゲイサ市外へ行くには、護衛と4WDが必要になる。これが1日100~200ドルぐらいかかるのだ。

また、何気にお金がかかるのが食費。ホテルのレストランで食べると1食につき10ドルはかかる。周辺の中級レストランやカフェでも6ドル以上はする。

もちろんローカルレストランだと3ドルぐらいで食べられるが、外国人旅行者が食事をするのにはちょっと勇気がいる雰囲気。

ローカルショップで売っているのは、ビスケットやプリングルズ、チョコ、デーツぐらいである。食のバラエティーはそこまで広くない。よって、しっかり食べようと思えばやはりホテルのレストランが無難なチョイスとなる。

ホテル

ホテル宿泊費は1泊10~50ドルが相場。国連職員御用達のアンバサダー・ホテルやマンスール・ホテル(Mansoor hotel)なんかだど1泊50ドル。部屋は綺麗でサービスも良いが、両者とも市内からはかなり離れている。

旅行者に人気なのは、市内のど真ん中にあるオリエンタル・ホテル(Oriental hotel)やダマル・ホテル(Damal hotel)。近くにレストランやカフェがあり便利。

ソマリランドのホテルは、Booking.comやExpediaなんかでは出てこない。よって、ホテルの公式サイトから予約する必要がある。

ハルゲイサは高地に位置するが蚊が結構出る。しっかりとしたホテルだと蚊帳があるが、安ホテルにはそれがない。心配な人は、マラリアの予防薬を飲むなり、蚊除けグッズを持っていった方が良いだろう。

通貨

ソマリランドはここ数年でインフレが激しく、自国の通貨であるソマリランドシリングは、ほぼ紙切れと化している。現在は、1ドルあたり8,700シリング(2020年現在)である。

500シリングが一番小さい単位なので、結局は1ドルあたり9,000シリングということになる(300シリングというお釣りはないため)。単位が一番大きい紙幣でも5,000シリングである。

ソマリランドの紙幣
ソマリランドの紙幣。紙幣のほとんどはボロボロの紙切れである。

ホテル代や食事を現地通貨で払おうとすると、山のようにシリングを持たねばならない。いちいち数えるのも大変である。

よってソマリランドでは米ドルを主に使った方が良い。ドルで払うと小さなお釣りは、現地通貨で返ってくるので、現地通貨に両替をする必要はないだろう。

両替屋は、街中の至る所にある。小さな檻の中に、輪ゴムで束ねられた大量のシリングが両替屋の目印だ。

ホテルや店ではカードが使えないので、現金を多めに持ってくるべし。ATMでもドルを引き落とせるが、手数料が9ドルとかになるので、持ち込みの方が良いだろう。

ソマリランドの観光スポット

ソマリランドの見どころは、主に3つ。

まずは、およそ1万年前の人類によって描かれた岩絵があるラス・ゲール。そして、ソマリランドの重要な貿易港ベルベラ。最後にハルゲイサ市内である。ソマリランド人に聞いても、だいたいこの3つを推してくる。

ラス・ギールとベルベラは、ハルゲイサ市外なので車をチャーターし、護衛を雇う必要がある。いずれも数時間でいけるので、日帰りで行ける場所だ。

ラスギール_ソマリランド
5,000年以上前に描かれたというラス・ギールの岩絵。アフリカにある岩絵の中でも非常に保存状態が良い。

ベルベラの港町
ベルベラの港。ソマリランドがイギリス領だった時、ベルベラは首都だった。現代ではラクダやヤギをアラビア半島へ輸出する重要な港になっている。

ハルゲイサの町歩き

ハルゲイサは首都といっても、こじんまりとした町である。端から端まで歩いても、3時間ほどである。

市内で見るものといえば、中央マーケット、内戦モニュメントぐらいだろうか。観光スポットをめぐるというよりかは、町を歩いて雰囲気を楽しむべし。

ソマリランドの中央マーケット
ハルゲイサの中央マーケット

ソマリランドの観光スポットMIGジェット
市内の中心部にある内戦メモリアル。モニュメントとして飾られているのは、ソ連製のミグジェット。1980年代にソマリランドがソマリアから独立しようとしたところ、ソマリ空軍によって爆撃を受け、ハルゲイサの町の80%が破壊された。

ソマリランドのショップアートソマリランドの名物といえば、店の外壁に描かれたアート。1980年代から始まった内戦で仕事を失ったアーティストが描き始めたのがきっかけ。識字率が低いソマリランドでは、人々が何を売っている店かを理解するのにも役立っている。

ハルゲイサの独立記念モニュメント
ソマリランドをかたどった独立モニュメント

ハルゲイサのモスク
ハルゲイサで一番大きなジャマ・モスク(Jama Mosque)。

ここソマリランドでは多くの日本車が走っている。幼稚園バスや旅館バスなども現役で活躍中だ。「左へ曲がります。ご注意ください」、「ETCが挿入されていません」。土埃が舞うソマリランドで、誰にも理解されない日本語もまた宙を舞う。

ソマリランドの日本車
ソマリランドで派手にデコられた日本車たち。

市内から30分ほど歩いたところに、家畜マーケットがある。メインはラクダだが、牛やヤギなどもいる。マーケットがオープンしているのは、朝の8時から11時まで。

ソマリランドの家畜マーケット
ソマリランド経済を支える家畜マーケット

海外に住むディアスポラソマリ人からの送金についで、ソマリランド経済を支えるのが、こうした家畜の輸出である。家畜は主にサウジアラビア、UAE、オマーンといったアラビア半島の国々へ輸出される。

とりわけ、イスラーム教の巡礼シーズンはかき入れ時だ。巡礼シーズンが終わると、イード・アル・アドハと呼ばれる犠牲祭がやってくる。この祭では、家族や親戚単位でヤギや羊など家畜を丸ごと購入し、屠ってお肉をいただくのである。

ソマリランドのおじいさん
ソマリランドおじいちゃん。東南アジアで見られるバティック布を腰に巻きつけたスタイル。

そのほかの観光スポットといえば、サルヤン博物館(Saryan Museum)やヒッド(Hiddo – Dhawr Somaliland Tourism Village)と呼ばれるソマリランドカルチャーが体験できるレストランがある。

博物館の方はかなりこじんまりとしたもので、博物館というか個人コレクションみたいなものである。

一方でレストランの方は、木曜と金曜の夜にはソマリランドの民族音楽やダンスが楽しめるショーが開かれる。ソマリランドっぽい料理も楽しめるということで、観光客には人気。

ソマリランドの食べ物

観光客が訪れるレストランはどこも恵比寿ランチの価格だが、日本人の舌にあう優しい味付けが特徴。羊やラクダ、鶏肉を使った炒め料理に、ご飯というのが一般的。

美味しいのだが、どこのレストランに行っても大体同じようなメニューと味付けなので、食の選択肢は限られてくる。

ソマリランドの料理
優しい味付けが特徴のソマリランド料理。ラクダ肉を炒めた”ラクダの焼肉定食”がおすすめ。

ソマリアやエチオピアといった周辺諸国はかつてイタリアの統治下にあったためか、ソマリランドでもパスタやピザもある。イエメンと同じく、朝食にレバーや腎臓といったヘビーな肉を食べる習慣もある。

ソマリランドのアイスクリームショップ
こじゃれたサーティーワンもどきのアイスクリームショップもある。

イスラーム教の国なので、もちろんお酒はない。が、ショップに行くと、ノンアルビールは売っていた。

ちなみにソマリランドには「ソムチャイナホテル」という中華系ホテルがあり、その中には、中国ショップや中華料理レストランもある。お値段は高めだが、ソマリランドで中華を食べたくなったら立ち寄ってみるのもいいだろう。

ソマリランドに行くべきか?

ソマリランドは入国にお金がかかる割に、それほど見どころがあるわけでもない。少しでも外貨を稼ぎたいソマリランドには申し訳ないが、事実なので言わしてもらう。

見どころは少ないが、むしろ安全な場所に居ながらにして、あのソマリア感を体験できる、というのがウリだろうか。

なにせ道を行くのは、ソマリ人。町の風景もソマリアやプントランドのそれとほぼ同じである。

多くの旅行者は、ちょっとしたソマリア感を味わいに来ているのが事実だろう。その意味では、ソマリランドはある意味ディズニーランド的な場所でもある。

ソマリランド旅行前に読んでおきたい!

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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