日本のパスポートは本当に最強なのか?威力のほどを検証してみた

パレスチナ人の同僚、ヒシャームと話していると、パスポートの話になった。

パレスチナ人難民であるヒシャームは正規のパスポートを持っていない。シリア生まれだが、シリアのパスポートを持っているわけでもない。じゃあ何を持っているのかというと、パレスチナ人難民専用の旅券である。


「おれは、どこへ行くにもビザ申請が必要だから大変なんだわさー。ちなみに日本のパスポートってどないな感じなん?」

こやつ、自ら地雷を踏みに行くタイプだとみた。その時の私はすでに、圧倒的に日本のパスポートの方がパレスチナ旅券よりも優位であることを確信していたからだ。

ヒシャームを傷つけないように、「ま、そこそこの国はいけるんじゃない」と流していたら、余計にも日本のパスポートだと何カ国の国にビザなしの国でいけるのか調べ始めた。

すると一人で仰天。「まじかよ!おめえすげえじゃん。こんなにビザなしでいける国があるんかいな!」。別に私の実力でもなんでもないが、なぜか自分が褒められているようで、照れてしまう。

日本パスポートでいける国(濃いグリーンで塗られている国がビザなしでいける)

同じ手法でパレスチナ難民の旅券でビザなしでいける国を調べて、一人で愕然としている。

パレスチナ旅券でビザなしで行ける国

圧倒的な差を前にもはやなす術なしと思ったのか、「ま、おれのパレスチナ旅券なんてこんなもんよ」と一人苦笑いをする。この話を早めに収束させようとした私の努力も水の泡である。

考えてみれば巷では日本のパスポート最強説が圧倒的だが、果たしてそうなのだろうか。

最強パスポートは日本なのか・・・?

2018年にヘンリー&パートナーズ社が発表したグローバルパスポートランキングによれば、日本はシンガポールと並んで、トップにランクインしている。あたかも日本パスポートだけが最強とでもいうように、巷では騒がれているが実はシンガポールもかなりのやりてなのだ。


ヘンリー&パートナーズ社のグローバル・パスポート・ランキング2018より

2018年時点で日本パスポートでビザなしでいける国と地域は189ヶ所。パレスチナ旅券に比べればビザなしでこれだけ多くの国に行けるのは、恵まれているのかもしれない。

世界最弱パスポートは?

一方で世界でもっとも旅行に障壁があるワースト1位は、アフガニスタンとイラクパスポートだった。ビザなしで行ける国は30ヵ国。結構多くないか?というのが正直なところ。続いてワースト2位は、ソマリアとシリアである。ワースト3位はパキスタン。

このランキングを見て、パレスチナ人ヒシャームはパキスタン人の同僚を見て高らかに笑った。「うへへ。見たか。俺が持っているのは正式なパスポートじゃないけど、正式なパキスタンパスポートよりもマシなんだぜ」。ランキング上位の日本パスポート保持者からすれば、醜い争いである。

「ビザ申請の必要あり」も要チェックだ。我々日本人からすると、ビザを申請すれば必ずとれるというのが一般的な常識だと思う。けれどもパスポートによっては、ビザを申請してもビザが降りない時があるという概念をドバイに来て初めて知った。

知人のイラン人とフィリピン人のカップルが、日本旅行のためにビザを申請したのだが、イラン人の彼氏にはビザがおり、フィリピン人の彼女にはビザがおりなかった。

日本政府がフィリピン人にビザを出さなかった理由はなんとなく思い当たるが、それにしても日本政府が懸念している理由とはまったく関係ない一介の旅行者であるフィリピン人に対してビザを拒絶したことは、政府に対して腹立たしく感じる。結果的に彼らは韓国へ旅行することになった。

日本パスポートゆえに行けない国もある!?

しかし正直にいうと「189の場所にビザフリーで行ける」という最強感は、いまいち実感できていない。むしろ、ビザフリーで入国した国は、ここ数年で2ヵ国ぐらいである。

ここ最近で行った国だと、クウェート、オマーン、バーレーン、レバノン、エジプト、ソマリアではビザが必要だった。ほとんどが空港でとれるが、ビザ代が結構かかるのだ。石油があるくせに観光客から金を巻き上げるとは・・・とぶつぶつ言いたくなる国もあった。

イランも2018年に空港でビザを取得した時には、5日しかいないのに保険代込みで、なぜか1万円近くかかった覚えがある。

サウジアラビアに関しては、観光ビザを発行する予定だと発表されたものの現時点では、観光ビザを取得することは困難である。また一定の年齢以下の独身女性の入国が厳しく制限されている。

そんなわけで、巷では最強だぜ!と言われているようだが、まったくもってその恩恵を存分に受けているとは言い難い。ビザが必要なマイナーな国をチョイスするお前の嗜好の問題だ、という声も聞こえてきそうだが、この嗜好はもう生まれつきとしかいいようがないのでしょうがない。

さらに2016年のことだが、アフガニスタンの観光ビザを申請しようとしたところ、日本政府が一般国民の渡航を一切禁じていたためビザを取得することができなかった。

他の国のパスポートだったら取得できたのに、日本パスポートをもつ日本人であるがためにアフガニスタン旅行が叶わなかった恨みは今でも忘れていない。

詳しくはこちらの記事を参考に
日本政府が完全封鎖!?アフガニスタンの治安と観光ビザ情報

日本パスポートで得をしたことは?

個人的には1回だけある。ドバイで信号のない道路を渡り、警官に「法律違反だ。署まで行って罰金を払え」と御用になりかけたときがある。もはやドバイで逆らうことは許されないと思ったので、反発することなくおとなしく罰金を払う気持ちでいたが、なぜかお咎めなしで無罪放免となった。

関連記事:
人生初の職質。アラブ警察に捕まった日

この話を元ヤンチャの同僚のインド人にすると、「まじかよ!俺なんか2回もマッポにつかまって罰金払ったんだぜ」と憤慨。どうやら罰金を払わずに済んだのは、日本パスポートのおかげだったらしい。

しかし一方で強力なパスポートも通用しない時がある。

パスポートランキング4位にランクインする、イギリスのパスポートをもつ同僚。ドバイで就労ビザを申請しようとしたところ、通常であればなんなく受理されるところ、父親がイラク出身のため難航したらしい。

UAEではビザを取得するのに父親の名前を書く必要があるため、それにより最強のイギリスパスポートも効力が半減してしまったケースである。

「ビザフリー」で行ける国が最多だとはいえ、人によっては行きたい&興味がある国のほとんどがビザが必要な場合もある。逆に、日本パスポートを持っているがゆえに行動を制限されることもある。必ずしも万人にとって日本パスポートは「最強」ではないのだ。