EUに住みたい。ストックホルムの夜の街を歩いていた私は、強く決心した。今思えば、単純にヨーロッパに興奮して浮かれていただけだったのだが、その熱はEUを離れた後も続いた。
しかし、いつ、どこへは、具体的に決まらない。いつもの悪い癖で、とりあえず手当たり次第EUの仕事を探してみるという有様である。EUならどこでもいいという、女癖の悪い男と同じである。
そこで思い出したのが、ドイツのフリーランスビザだ。存在は知っていたが、ハードルが高くはなから選択肢に入れていなかった。
特にベルリンは移民が多い町、ドイツ語はおろか英語さえ話せない人もたくさんいる、労働力が足りない・・・というドイツ人の友人から聞いたわずなか情報をもとに、これなら私にもチャンスがあるのでは?と思い、ベルリンに的を絞ることにした。
ドイツで就職、フリーランスビザをとる、学生ビザをとる。いくつか方法はあったが、今の私の状況からしてフリーランスビザが最も確度が高いだろう。ということで善は急げということで、情報収集に取り掛かる。
何やらこのビザは、面接のアポを取るのがまず重要らしい。面接はベルリン本土で行われる。2~3ヶ月先にしか予約が取れないので、早めに取るべし、と書いてある。であれば、まずはアポ取りだ。ネットで予約可能ということだったが、システムがダウンしているのでメールでの受付のみとのこと。
ここから早速試練が始まる。英語がよく通じるベルリンといえど、相手は役所。Webサイトでは英語の案内もあるが、基本的なやり取りは全てドイツ語なので、ドイツ語に翻訳したメールを送ってみた。あくまでも、予約の方法を聞きたいというのが目的で、また役所なので返信も1週間ぐらいかかるだろうとみていた。
が!
数時間で返信がキタ・・・・
しかもすでに面接日時がちゃかーり記載されているのである。
長々としたドイツ語を翻訳して読み解くのに苦労したが、要はこういうことらしい。この面接日を逃したら、次の予約は3ヶ月後にしか取れまへん!しかも丁寧に赤字で、”あなたのために特別に時間を設定しました”(←自動翻訳なのでこういう表現になっていた)などという文言が付け加えられ、絶対この日に来いや、という圧を放っている。
しかも面接日は1ヶ月半後やないか
ひえ!?
早すぎる!
1ヶ月半後にベルリンに召集・・・!?
しかし、よくよく考えればビザもない状況なのに、現状の家を引き払って、ベルリンに行くなんてリスキーすぎやしないかい?後々よく調べると、日本を含む特定の国籍のみがドイツ本土で申請が可能(日本国籍の場合、日本からの申請も可能)で、その他の国籍の場合は、本国からの申請のみとなるらしい。その場合、ビザがおりるのに6ヶ月ぐらいかかるという・・・
これはいいことなのか・・・
リスキーだが、早めにビザを取れるならいいことなんかな
ということで、召集命令がかかってしまった以上、ベルリンに行くしかないのである。まだ心の準備はできていない。数ヶ月先にできればいいな、と思っていたが、こんなに早く物事が進むとは・・・
Now or never
そう、これを逃せば次は3ヶ月後。その時は、ベルリンのモチベがどうなっているかわからない。ならば、今動くしかないのである。
ベルリンに移住をする、それはすなわちマレーシアを離れるということでもある。せっかく苦労してビザを更新したのに・・・しかし、ベルリンに行けると思うとワクワクしてしまう自分もいる。これまでの移住といえば、ドバイもマレーシアもビザないし仕事を取得してからの移住がセオリーであった。今回に限っては、取れるかどうかわからないビザのために、丸腰で敵陣に踏み込むわけである。
こええ・・・
しかし、考えてみれば失うものはないのである。ベルリンがダメだったら、マレーシアに戻るなり、他をあたればいいのである。というわけで、ここはいっちょギャンブル精神で、人生をかけてみよう。
そしてベルリン旅行から1ヶ月も経たないうちに、またベルリンに舞い戻ることになったのである。