私、アラブの石油王と結婚するのが夢なんだ。
ドバイに行くことが決まって、高校生時代の変わり者の肉食女子の一言を思い出した。あの時は、「そんな夢物語みたいなこといっちゃって、ふーん」などと適当に流していたのだが、まさか自分がアラブの石油王がいる本拠地に行くとはその頃夢にも思わなかった。
未だ多くの人にとっては、UAEやサウジアラビアというのは石油というイメージが強いらしく、渡航前も一時帰国した際にも、「で、アラブの石油王との出会いはどう?」などと聞いてくる。もしくは、石油王といかなくても、「現地の金持ちメンズとの出会いはあるの?」などと目をキラキラさせて聞いてくることもある。
そうした問いには、「はは、石油王と出会うのはポケモンのレアキャラと会うのと同じぐらいムズイよ」などと言って軽く流すのだが、ちょっと真面目に回答するとこうなる。
アラブ石油王との出会いなんかない
出た!彼氏彼女いない人の間で常にトップ3入りしている言い訳。それは単にお前のせいだ、と言われるかもしれないが、そもそもアラブ石油王というより現地の人間が、ドバイには10%しかいないのだ。
しかも彼らは大体政府機関で働いているため、民間企業で働いている人間にとってはまず出会う機会もない。また、イスラームでお酒を飲まない(飲むやつもいる)人が多いので、外人が行くようなバーやレストランにはあまり出没しないのである。
逆に言えば、アラブ石油王と結婚できる確率というのは、一般人がK-POPアイドルと結婚できるぐらいのレアケースだと思う。
しかし下衆な方法だが無理やり出会いを作る方法もある。ドバイのあるバーではそうした行為を求めてやってくる現地人やサウジアラビア人の男性がいる。そうした男性を狙って話しかけるというのもあるが、あまりお勧めはしない。
文化が違いすぎて乗り越えられない
結婚以前に、そもそも全く異なる文化の人間とうまくやっていけるか?という課題が浮上する。会社でアラブ人たちの様子や街中で見かける現地人の様子を見ていると、とてもじゃないけど乗り越える文化の壁が高すぎて結婚なんで無理なんじゃないかと私は個人的に思う。
普段だって仕事をしている上で、同じ業界にいるにもかかわらずここまで前提条件や考え方が違うなんてというギャップによるショックを受けまくっている。そのショックを緩和するため、私は火星にいて彼らは、火星人だと思うことでそのショックを緩和しているぐらいである。
UAE人のほとんどはイスラム教徒である。お酒も飲まない(伴侶や付き合いによってたまに飲む人もいる)し、豚も食べない。そもそも自称「無宗教」という日本人と、唯一の神「アッラー」を信じる人間の前提がかなり違う。
実際、私は「アッラーという神を信じないのならば、一体だれが人間をつくったのだ?」と聞かれ、進化論で対応したら、話にならんわとフラれたことがある。神が人間を作ったと信じる人間と進化論を信じる人間とでは、地球は平面だと信じている人と地球は丸い説を信じている人間ぐらいの開きがあると思う。
私はその時はじめて、宗教の威力というものを知ったのである。
さらに身近なレベルで言えば、UAE人をはじめとする湾岸諸国のアラブ人たちは、身の回りのものごとを他人に任せてしまう傾向がある。何でも自分でやる日本人から見ると、それぐらい自分でやらんかということも周りにまかせるので、なんだかな〜と思ってしまう節がある(まあ、これは慣れればなんとでもなるが)。
そんなわけで、石油王や金持ちとやすやすと結婚できるほど現実は甘くないのである。