ドイツに来るにあたり、クリスマスマーケットを楽しみにしていた。甘美な響き、そして暖かなイルミネーションとともに、何やらとっても楽しいイベントに違いない、と期待を寄せていた。
しかし、今や私の中で、クリスマスマーケットは幻想的な羽衣などまとっていない。
飲み屋と化しているクリスマスマーケット
日本では、ドイツのクリスマスマーケットといえば、とにかく楽しい幻想的なイベントとして語られている。そうした噂に乗っかり、私も本場のクリスマスマーケットを堪能することを楽しみにしていた。
が!
現実はそうでなかった。
確かにマーケットでは、木の小屋をイメージした露店が立ち並び、甘いお菓子やクリスマスツリーの飾りを売るショップが展開しており、遠目から見るとものすごくクリスマス感がある。
クリスマスマーケットではお馴染みのクリスマスピラミッド。キリスト生誕をイメージした人形が飾られている。なんだか楽しそうな催しだぞ・・・
プレッツェルやソーセージなどを売る屋台。クリスマスマーケットぽいぞ・・・!
あま〜いお菓子が売られている屋台。うんうん、これはクリスマーケットだ。
クリスマスツリーの装飾を売るお店
店内には数百種類以上の飾りが売られている
しかし実際に近寄ってみると、あれ・・・?
クリスマス風のなりをして、どこにでもあるチープな商品を展開している店たち
アイススケート風だが、実際は地面でローラスケート
何より、人々が楽しんでいるのは酒である。クリスマスマーケットの傾向として、店によりつく人はまばらで、とにかく立ち飲みテーブルで飲んでいる人が多いというのが、主な印象である。
ただひたすら酒を飲んでいる
楽しい屋台をスルーし、酒と食事にありつている人々
これじゃあ、新橋の飲み屋と変わらないじゃないか・・・
そんなバカなと思い、ベルリン市内のいくつかのマーケットに行ってみたが、結果はどこも同じであった。
ドイツ人にとってのクリスマスマーケットとは
ドイツ人の友人とクリスマスマーケットに行くことになった。私が単独で訪れたマーケットよりも規模が大きく大勢の人で賑わっている。
シャルロッテンブルク宮殿の近くで開かれているクリスマスマーケットへ
マーケット内には仮設レストランが建てられていた
これなら期待できるかも・・・屋台も幅広く展開しており、どれもクリスマスっぽいなあと思っていると、
「クリスマスならではのものは、グリューワインだけ。他のものは、いつでも食べれるものだよ」
ひえっ
こんだけ大々的にクリスマスマーケットを展開しているのに、クリスマス限定なのはグリューワインだけ。なんということでしょう。もう少し、クリスマスならではのものを増やして、特別感をアピールした方がいい、と思ったのは私だけだろうか。しかし、それも質素なドイツ人らしさを反映しているように思える。
しかも食べ物も飲み物も、グラスや皿ですべてデポジットを取られる(5ユーロぐらい)。返却後にデポジットは受け取れる。ゴミを出さないための、ドイツらしい取り組みとも言えるが・・・そして、マーケットの大半は現金オンリー。ドイツは今だに現金社会である。
我々はジャガイモとチーズを混ぜた郷土料理?的なものを頼んだが、人が多すぎるため食べる場所が見つからない(マーケットでは立ち食いが基本)。ようやく空いてる!と思ってよくみたらそこはゴミ箱の上だった。
「はは、そんなの気にしないよ。食べるには問題なし」
と同じくゴミ箱で相席になったドイツ人たちが言う。さすが実用性を重視するドイツ人といったところだろうか。
友人はとにかく酒を飲んで、あったまりほろ酔いになったことで、十分満足していた。
「酒を飲んで、あったまる。これがクリスマスマーケットの醍醐味だね」
雰囲気もクソもない。
これでは赤羽の飲み客と同じではないか。もうちょっとこう、クリスマス感を楽しむとか・・・そういう発想はないのだろうか。
クリスマスマーケットの悪夢
そして悪夢はやってきた。クリスマスマーケットで食あたりになった。嘘だろ・・・食あたりなんて何十年ぶりだよ・・・飲み食いしたものは全部火を通していたし、食あたりになる要素など何もない。友人も全く同じメニューを食していたが、全くもって平気だったそうだ。
マーケットから帰ってきて1時間もしないうちに、メガトン級の吐き気と腹痛に襲われた。ここ20年であったかないかの最大級レベルである。
というわけで、トイレでおえおえ言いながら、クリスマスマーケットの幻想はすべて水に流れていったのである。
期待しすぎたクリスマスマーケット
夢をぶち壊すようで大声ではいえないが、ドイツのクリスマスマーケットは持ち上げられすぎていないか、という疑問を持つようになった。もちろん素敵なクリスマス感をまとっていたが、私の想像とは大きく違っていた。というか私が大きく期待しすぎたせいだろうか。
その要因となっているのは、暖色系のイルミネーションだと勝手に思っている。暖色系の光を灯すだけで、大体のものはよく見えるのである。インスタのフィルター機能と同じである。
これはクリスマスマーケットだけでなく、ドイツの街全体にも言える。ドイツの家やレストランでは、白色ではなく暖色に溢れている。暗闇に暖色が灯る光景は、単に明るく見せるだけでなく、対象物を幻想的に見せるのである。
暖色ライトを使うだけであら不思議。素敵なレストランに見える。
そうした暖色ライトに照らされるクリスマスマーケットの写真や動画を見ることで、脳が過剰に期待を抱きすぎていたのかもしれない。