インドにいったことがある人や、インド人が身近にいるという人は、一度は思ったことあるのではないか。
このにお〜いなんだろ、気になる気になる〜という状態だ。
そう、時々インド人独特のスパイシーなにおいを発する人がいるのだ。そのにおいは、洗濯物の生乾きや、夏の満員電車よりも強く、我々に強烈な印象を与える。
3メートルの距離からでも感知できる臭い
事件は起こった。ある日の職場での出来事である。
オフィスに入った瞬間、あの臭いが蔓延していたのだ。
え?なんで?
どうやらにおいの発信源は、オフィスの中心部に座る新参者インド人たちのようであった。
年末で人手が足りないということで、急遽別の会社から応援にかけつけた人々らしい。
5人ほどのインド人が円卓テーブルを囲み、鎮座しているのだが、誰が発信源かはわからない。そのなぞなぞ感が、一層我々を困惑させるのであった。
それにしても、である。
彼らと私の距離は、おおよそ3メートルはある。
すぐ近くで臭うならまだしも、3メートルの距離までにおうとは、相当である。「におい飛ばし」などという競技があれば、彼はダントツで世界ランク入りしているだろう。
むしろ、その距離に敬意を表したいぐらいである。
しかし、臭いは強烈だ。3メートルの距離を経ても、決してその勢力はおとろえていない。
臭いに対する人々の反応
あまりにも強い臭いなので、周りの人に「ちょっと、変じゃね?」とオブラートに包んで同意を求めようとした。
けれども、となりに座っていたのが、これまたインド人だったので、人種差別的な発言になるのでは?と思った私は、その言葉をひっこめた。
のちに聞いたら、彼女はまったくその臭いに気づいていなかったらしい。そんなことは臭いの強烈度からいってありえないのだが、慣れなのだろか?
多様なお国の人々が働く場所では、発言一つにしても気を使ってしまう。
一方で、多様な人々が働いているからこそ、臭いに対する反応も多様だった。
とあるヤングモロッコ人は、「なんかこの部屋くっさくね?別の場所で仕事しよ〜ぜ」などといい、誘われたヤングソマリ人も「まじで、くっせえよな」とそれに呼応した。
ほう。口に出して堂々と述べるとは。
一方で、あえて口にしないフランスやイギリスの女性陣は、 いい香りスプレーやアロマキャンドルで、無言の応戦に出た。
その結果、キャンドルのにおいと、先の臭いが混合されて、新たな異臭を発生させるという最悪の事態を招いてしまったが。
別のモロッコ人は、強硬な手段に出た。強烈な臭いには強硬な手段で、と言わんばかりである。
新参者インド人をよびつけた別の部署にいる責任者にたいして、「あの臭い、なんとかせいや」と直談判したのである。
この発言のおかげで、なぜか関係のない役員レベルまで、異臭事件が知れ渡る結果となった。
インド人に聞いた、臭いの原因
あの臭いの原因は何なのか。
ネットで調べてみたが、釈然とする答えが見つからない。加齢臭やワキガと違って、原因がはっきりしないものなのだろうか。
原因をつきつめたいという衝動に駆られ、インド人同僚たちに聞いてみた。得られたのは、意外な答えだった。
・ 彼らは1~2時間かけてオフィスにやってきている。歩きやバス、メトロを使っているとみられるので、職場に来るまでに結構な汗をかいているからだ。
・ 彼らのような人々は、洋服をほとんど洗濯しない。先週着た服をまた着るということもありえる。
・ 体臭がきつくなるような食べ物をよく食べているから。特に、にんにくと生姜はきつい。
・ 個人の身だしなみの問題。オフィスで働くということにおいて、彼は身だしなみに気を使ったり、清潔感を保つという、基本的なマナーへの配慮が欠けている。
彼らは同じインド人なのだが、臭いの主と自分は住んでいる世界が違う、という風にみなしている感じがあった。高慢でも差別でもなく、あくまで区別という感じだ。
同じインド人とはいえ、月収数万円で働く労働者から、貿易会社で成功し世界一高い高層ビルに、現金一括で家を購入するビジネスマンまでと、ドバイにいるインド人はさまざまだ。
インド人たちは、一通り己の見解を述べたが、私はどうも納得しなかった。
単に通勤時間が長くて、汗をかいただけなのか?それだけの移動だけで、あれだけの臭いを発生させることができるのだろうか。
スパイシーな料理のせいであれば、私も食べ続けるとそのような臭いを発するのか?
そもそも風呂に入らないとか、洋服を洗わないということがあり得るのだろうか?
謎は一層深まるばかりであった。
私が思うに、それはワキガの一種なのではないかと思う。通常ならば、ワキガっぽい臭いがするが、この場合はやはり食べているものなどと相まって、インド人独特のワキガ臭を発生しているのではないかと。
この臭いを私は知っている。
かつて私の上司(インド人)がそうだったのだ。
普段はなんてことないのだが、汗をかいている時には、今回同様の強烈な臭いが発生していた。本人は、それに気づいていたようで、香水でごまかしていたが。
インド人は「くさい」というのか?
先ほど話を聞いたインド人たちに、ふたたび聞いた。
「クサいなあと思う時、本人にクサいっていう?」
反応はみな同じだった。
「そんなん、いえるわけないやんか!」
そりゃそうだ。日本人同士だって言いづらい。仮に同僚や部下がそのような臭いを持ち込んできたら、対処に困る。
だからこそ、役員にいいつけるという、先ほどのモロッコ人の対応は、非常に好戦的、とインド人たちの間ではとらえられていた。というか、若干ひいていた。
さて。結果はどうなったのか。
延々と遠回りをした結果、派遣先の会社の上司が、当人に注意をすることになったそうな。