社会不適合者だと家族からののしられ、ソマリアだのイエメンだのといっていた私だが、それなりに更生したので、ロンドンに行くことにした。
誰もが知るロンドン。どう考えても、更生したことを証明するのに、最適すぎる場所である。
更生したことを、これ見よがしに伝えるため、ロンドンに行くことを家族に話した。
すると、母親はこちらが白けるほどに、行ったこともないロンドンに対して、「あんたには、ドバイよりロンドンが向いているわよ」などと、ロンドン移住をオススメしてくるという、とんちんかんな感想を述べた。
イギリス人に対する印象
イギリスには、10年前に一度訪れたことがある。イギリス留学している友人を訪ねて、ブライトンに行った。
ペラペラの紙でできた金の王冠をかぶって、街中をさっそうと歩く青年が印象的な場所だった。
イギリスって変な国。
そう思った。
その10年後、ドバイでイギリス人たちと働くことになった。10年前に抱いた、直感はあながち間違ってもいなかった。そして、こんな記事まで書いていた。
そう、とにかくイギリス人はクセが強いのである。そして、ユーモアにあふれている。
王室とか紳士とかいうイメージが先行しているからなのか、実際のイギリス人の振る舞いを目にすると、そのギャップが滑稽にみえてならないのである。
愛すべき、クセのある人々。それがイギリス人である。
都会に対する田舎者の心境
イキっていたころには、「ロンドンか〜」とさして興味を抱くことはなかった。しかし、いざロンドンへ行くとなったとき、少々高揚していた。
そう、地方出身者が、大都会東京へ出る時の、あの高揚感である。
東京で暮らしているとなんとも思わなくなるが、地方の人々にとっては一大イベントである。
かつて横浜に住んでいた時。はじめて電車に乗って、東京の原宿へ行った時は、やはりワクワクドキドキしたものである。それと同じだ。
日本人からするとゴージャスなイメージがあるドバイだが、ドバイは都会ではない。規模でいうならば、東京のベッドタウンぐらいである。
ドバイが都会に見えるのは、ディズニーランドのハリボテよろしくの高層ビルや、ドバイに活気をもたらす人口2倍以上の観光客ゆえである。
ドバイは、都会のツラをした砂漠の田舎ともいうべき場所かもしれない。
ロンドンについて調べるほど、自分が田舎に住んでいることをヒシヒシと感じた。
なにせ情報が多い。私がこれまで訪れた国は、ほとんど情報がなかった。あっても、1週間程度で消化できるものばかりである。
それがロンドンはどうか。
在住日本人のブログや本、特集雑誌など、とにかく情報にあふれている。とてもじゃないが、渡航までに網羅することは難しい。
そして大都会らしく、リアルなイベントやレストランも盛りだくさんだ。なぜリアルかというと、ドバイで行われるイベントは、ほとんどが商業目的だからである。
ロンドンに10年以上住んだ後、ドバイにやってきた人も、この点にはがっかりしていた。
アートやカルチャーイベントもドバイにはあるが、ロンドンに比べると参加する人の圧倒的熱量だったり、深さが全然違うと。彼女は、1年も経たないうちに、ドバイを離れたが。
今になって、彼女のいったことがよくわかるような気がした。
ドバイとロンドンを比べてもしょうがないのだが、久しぶりに中東圏を飛び出すのだ。やっぱりドキドキしている。
そんなあたり、自分が田舎者だなとヒシヒシ思うのである。