イスラーム教徒にとって、犬はタブーだと思っていた。だから、イスラーム教の国では、犬は駆逐され、存在しないのではないかと。
しかし、実際にイスラーム教の国で生活してみると、ワンコが結構いるのである。
これは、一体どういうことか。その実態を探ってみよう。
なぜイスラーム教において犬は不浄?
そもそも、なぜイスラーム教では、犬を不浄だと考えているのだろうか。
一般的にイスラーム教徒の間では、犬はこんな風に語られている。
- 犬の肉は食べてはいけない
- 犬が飲んだ水で体を洗ってはいけない
- 犬がなめた容器は7回洗わないと、使用不可
- 犬がモスクにきたら、モスク自体を清めなければならない
犬が飲んだ水で体を洗うってどんな状況よ?と思われるかもしれない。イスラーム教が成立したのは7世紀の始め。インフラが整っている現在とは、状況が違うということを理解されたし。
「おまえが犬か豚になればいいのに」といった侮辱言葉にも使われる。しかも、最大級の侮辱である。
この言われようといったら、もはや病原体並みの扱いである。
重宝される犬もいる
一方で、すべての犬たちが不浄とされ、無下に扱われているわけではない。同じ犬でも、猟犬や牧羊犬といった犬は、人間に利益をもたらす犬として、昔から重宝されているのだ。
重宝されている犬の中でも有名なのが、「サルーキ」である。ぬいぐるみサイズのおペットワンコが蔓延する日本では、あまりみかけない犬種。
サルーキ。痩せ型で長身というモデル体型のワンコ
UAEでひらかれたサルーキビューティーコンテストにて
しかし、このサルーキは、現在飼育されている犬の中では、かなり古い犬種。歴史をさかのぼると、7,000年前からいたのでは?と言われている。
サルーキを主に飼っていたと言われるのが、砂漠の遊牧民ベドウィンたちである。ベドゥインが多く暮らしていたアラビア半島では、いまでもサルーキーが飼育されている。
アラビア半島にあるUAEで開かれた伝統フェスティバルに行った時のこと。UAEは、イスラーム教の国である。そしてその祭りには、多くの地元民がやってきていた。
そこで目撃したのがこれだ。
サルーキをなでまくるUAEの子どもたち
んんん?待て待て。
このちびっこたちも一応、イスラーム教徒ですよね?めっちゃ写真とって可愛がっていますけど・・・イスラム教にとって犬はタブーじゃなかったのか!?という激震が走る。
ちなみにサルーキがガチで走ると、最大時速は69kmにもなるという。車なみである。
ルームメイトのサルーキを連れて、散歩に行った時のハプニングはクリスマスに起こった悲劇にて。車並みに速い犬が逃げていった時のあの焦りといったら・・・
ルームメイトのサルーキたち。かわいいけど全速力で走る時の時速はやばい
イスラーム教の国で犬は虐げられている?
イスラーム圏では、どちらかというと猫の方が多い。街中で犬をみる確率は少ない。
けれども、オマーン、イエメン、バーレーン、ソマリア、スーダンといったイスラーム教の国では、ごくまれに犬を見かけた。というか、野良犬は結構その辺をうろうろしているのだ。
オマーンの街中でくつろいでいたワンコ一家
不浄な犬とはいえ、そのまま放置されているパターンらしい。
さらに、私が住んでいるドバイでは、犬を販売するペットショップもあり、犬を街中で散歩させている人もいる(たまにメトロの駅まで乗り込んでくる犬もいる)。
ドバイは外国人の人口が8割ということもあって、非イスラーム教徒に対しても寛容なのだ。さらに、犬を収容している動物愛護センターがあったり、譲渡会もひらかれるなど、動物に対する意識は結構高い。
ワンコの散歩ボランティア。砂漠の動物愛護センターに行ってみた
さらにイランの首都テヘランでは、イスラーム教徒でも犬を飼う人が増えているらしい。イラン警察が、公の場で犬を散歩させるのは禁止とおふれを出したほどだ。
もちろん国や人によって、犬への反応はさまざまだ。けれども、イスラーム教徒だから、イスラーム教の国だからというだけで、ひとくくりにはできない。
我々が思うほど、犬はそこまでぞんざいには扱われてない。さらには、犬の中でも重宝されている犬がいるということは、知るに値するだろう。