スウェーデンのパリピと行くストックホルム観光

スウェーデンで目が覚めた。とあえて書いてみたが、なんという心地よい響きだろう。心地よいのは響きだけではない。ホームステイしているエリクソン氏の家から窓を見やると、そこには北欧の木々が静かに揺らいでいた。

私はもはや北欧の魔法にかかっていたのかもしれない。見るものすべてが、新鮮で美しく見えてしまう。

スウェーデンのゴミ屋敷

私は近辺を散策することにした。といっても田舎町なので、あるのは森と、オシャーな家が数軒である。先日の夜中のハイキングでも感じたが、スウェーデンの森は、かなり高級である。何せ地面がエアウィーブのようにふかふかで綺麗なのである。ここで寝ろと言われれば、喜んで寝たい場所である。


同じ自然でも日本ともマレーシアとも全く毛色が違う。


迷い猫を探すチラシ。早く見つかりますように・・・

昼食のハンバーガーを家の裏庭で食べていると、隣人らしき男性の姿が見えた。明日には家を退去する隣人だという。彼は離婚して子どもがたまに訪れるらしいが、基本的には一人暮らしとのことである。

「隣人とうちの家のオーナーが同じ人なんだけど、あの家はやばいって聞いたぜ。とにかく家の中がゴミだらけ。掃除をしたっていってたけど、十分じゃなくてオーナーがまた掃除をしたぐらいなんだ」

ゴミ屋敷は家の問題というより、住居人の心の問題である。周りからは、福祉国家だの幸せだの言われているが、スウェーデンにだって問題はあるのだ。完璧な国家などない。アル中も身近な話題である。実際にエリクソン氏の父親もアル中とのことで、離婚歴は3回。エリクソン氏は、母親が2人いる。これが本当に個人を尊重する美しい結果なのかは、疑問である。

期間限定の太陽

「ああ、この太陽ももう少ししたら見られなくなるんだよな・・・」。エリクソン氏がぼそっとつぶやいた。

ああ、そうか。

長い冬に突入すれば、北欧は暗闇の世界と化すのだった。太陽を惜しむことなど、思いもよらなかった。何せ、年中常夏のマレーシアで太陽の光はコンビニと同様、いつもそばにいる。いるのが当たり前すぎて、その存在を慈しむことなどはない。「チッ。太陽がまた顔出してきやがった・・・」とむしろ、悪態をつくこともある。

ある場所では当たり前にあるものも、それがない人にとっては貴重なものなのだ。ソマリアでは無料の安全。パキスタンでは無料で無害の空気と水。失われて初めてそれが、大事なものだったと気づくのだ。

スウェーデン人のおしゃれとは

その後、ストックホルムに向かうことにした。エリクソン氏の家から電車の駅まで歩いていくのだが、その道のりの99%が森であった。駅に行くだけなのだが、これでは軽ハイキングである。駅でも衝撃が走る。切符売り場などという野暮なものはない。ただクレカでタッチするだけ。紙の切符も出てこない。これぞ真のペーパーレス。

ストックホルムは、ただエリクソン氏セレクトのおすすめの場所に、のこのこついて行っただけなので、どこに行ったのかよく分からない。普段の旅は、いつも一人なので、大体自分がどの辺にいるのかを把握して歩く。訳もわからない場所をトコトコ歩くのは、つれがいたとしても不安になる。

私のどうでもよい特技は、知らない国で一度も歩いたことのない道をいつも歩いていますよ、というツラで歩くことなのだが、それを発揮することはなかった。


ルーフトップバーからの眺め。魔女の宅急便のような世界観が広がっている

ストックホルムの人々はとてもオシャーだったが、あえて「おしゃれなんかしてませんよ」という空気をどことなく醸し出している。そのさりげなさは、多くの人々がメインカラーにブラックやホワイト、グレーなどを選んでいることからもみて取れる。国旗とイケアだけは、あんなに明るい色なのに、人々の服装にはそれがない。エリクソン氏の解説いわく、スウェーデン人は目立つのが嫌いなので、目立ったオシャれはしないという。

高身長国における低身長の悩み

エリクソン氏のチョイスは、すべてパリピ御用達な場所であった。正直いうと、私は人が多いところが苦手である。特に人で賑わうバーは、声を出してもかき消されるので、苦手とするエリアである。

最後に我々がやってきたのは、ライブミュージックバー。ステージ上では、わざわざシカゴからやってきた歌手を筆頭に、スウェーデンのおじさんたちがジャズを奏でるというもの。


渋い・・・

バーは人でごった返しているのだが、背が小さい私は気づいたらステージの目の前に立たされていた。そう。道端を行くパレードで、小さい子どもを前に押しやる理論と同じである。

わしゃ、子供かい。

悲しいかな。スウェーデンではキッズサイズなのである。見た目は子供、頭脳は大人、まさしくコナンである。

ライブミュージックは初めてなので、ノリがわからないのだが、適当にその辺の人の真似をして体をゆすってみる。しかしゆすりが大きかったためか、周りを囲む”大人”の”肘”パンチを顔面に何度も食らうのだった。この時ほど、低身長を恥じたことはない。

自身も低身長だというエリクソン氏の身長は、175センチ。日本の平均からすれば高身長になる訳だが、スウェーデンの男性の平均身長は180センチ。よって、低身長に降格してしまうのである。ここスウェーデンでも、身長の高さはモテに連結しているようで、エリクソン氏は少々嘆いていた。

騒音が騒音にならない

帰宅したエリクソン氏は、興奮がまだ冷めやらないようで、家の中で爆音ミュージックをかけ始めた。さすがにこの音量は、どう考えても隣に聞こえるぞ・・・しかも深夜だし。

「えーの、えーの。いつものことだから」

とエリクソン氏はお構いなしである。また翌る日にも庭に備え付けたスピーカー(さすがパリピ)から、大音量で音楽を流していたのだが、最後まで隣人から怒られることはなかった。EDM大国故に、爆音ミュージックには寛容なのだろうか・・・

こうしてスウェーデンの騒がしい夜はふけていった。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。

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