詐欺が多発!苦労したベルリンでの家探し

さて、いろいろやることがある。何せドイツへの移住手続きとマレーシアからの引越し手続きを同時進行でやらなければならない。プロジェクト管理能力が問われる時である。

面接のアポが取れたことですっかり安堵していたが、次なる試練は家探しである。エアビーとかで行けるっしょ、と思っていたら、住所登録などが可能な家の証明書なるものが必要だという。つまりホテルやエアビーではダメなのである。

慌てて家を探し始めるが、ここで更なる悲報が。ベルリンは、とにかく詐欺が多いのである。家探しの情報を探すと、必ずセットで出てくるのが詐欺に気をつけろ、という警鐘。あまりにもその数が多いので、どれだけ常態化しているかがわかる。そしてよくある話なので、警察もあまり動かないらしい。

ヨーロッパなのに治安悪すぎないか・・・?

次々と移民がやってくることに加え、物件が不足、ゆえに完全なる貸し手市場。これはベルリンに限った話ではなく、イギリスやオランダでも聞くので、ヨーロッパ全体に蔓延している問題なのだろう。ベルリンは古い建物が多く、タワマンがほぼない、という印象だった。タワマンさえあれば、ちょっとは解決になるんじゃないか、とぼやきながらも詐欺がうごめく物件を漁っていく。

詐欺と言っても、バレバレの詐欺ではなく、とても巧妙なのである。内見に行ったら家がないというのはレベル1である。レベル5ともなると、入居日までのやり取りはすべてスムーズだったのに、入居日当日になって、家主が現れないという、もはや詐欺として見抜くことが不可能なレベルである。入居前にデポジット(日本でいう敷金礼金みたいなもの)や初月の家賃を払うので、お金はもちろん返ってこない。実際に現地の日本人もこの手の詐欺に引っ掛かっており、日本人ないしは日本人を装った人物による詐欺もよくあるとのこと。

ドイツ人の友人に物件を探してるというと、内見に行ってあげる!とやたら内見を推してくる。内見せずに引っ越すなんて、ありえないらしい。それは、上記のように架空の家だったりすることが多いからだろう。

こんなん無理ゲーやないか

というわけで、私はあらゆる手法を駆使し、物件の精密検査を行った。Googleストリートビューで、外観と物件の写真が一致するか、物件情報や写真の撮り方がうさんくさくないか、会社が管理している場合はその会社が本当に存在するのか、などなど。やっていることが、もはや物件探しというより、特殊詐欺の捜査である。

あまりにも詐欺が怖くて、もはや何も信じられなくなってしまうという事態にも陥った。疑おうと思えば、すべて詐欺っぽく見えてしまうのである。ここまでくると私も観念して、ええいもう詐欺にかかってもいい、とすら思うようになる。詐欺かどうかで疑心暗鬼になるより、ギャンブルだと思って賭けた方が、気持ちとしてはスッキリである。

この詐欺フィルターをかけた後に、本当の勝負は始まる。予約をしてみるのだが、ほとんど拒否もしくは返信がない。よって、受験のごとくなるだけ多くの物件に申し込むのがコツらしい。そして、めでたく”受かった”物件から選ぶという、選んでいるのか選ばれているのかよくわからないシステムである。中には、空室の日を減らしたいから、この日程ならいいよ、などという返信も来る。なんて上から目線なんだ!と思ったが、これが貸し手市場というものらしい。

驚いたのが、ドイツの不動産屋は土日には全く動かない(働いていない)ということ。平日に働いているものからしたら、週末にゆっくり決めたいというのもあるし、他の国の不動産屋でも土日が全く音信不通になるということはなかった。実際に決めた家は、不動産会社が管理しており、週末の入居と転居がNGとのことで、仕方がなく平日にした。

ドイツでは、家を選ぶにもルールがある。大人の場合、住むには必要最低限の広さがこれぐらい・・・みたいなルールがあるのである。人間として最低限の生活を営むためのルールなのだろうが、それがまさか明文化されているとは・・・

さらにビビったのが、家賃の詳細をみると光熱費や通信費は含まれているが、”radio tax”なるものは含まれていないという。調べてみるとテレビの受信料だという。これが実に恐ろしい。何せ、テレビを持っていてもいなくても、退職した老人でも、学生でも一律に徴収され、慈悲もクソもない。しかも値段は18ユーロで日本円にして約3千円。NHKの受信料より憎むべき存在である。

規律社会のドイツの洗礼を早速受けるのであった。

ちなみにドイツの物件を眺めて思ったのは、キッチンが粗末な家が多いということ。ドイツでは夕飯は質素に済ませることが多いらしく、コンロを使った料理はあまりしないらしい。

家がなかなか決まらないのは、焦りしかない。詐欺捜査でヘロヘロになりながら、そして何十件の家からお祈りメールをもらいながら、渡航1ヶ月を切ってようやく契約にこぎつけることができたのである。

契約が終わった後も、ソワソワする。何せベルリンの物件はブラックボックス。内見をしていないので、当日にならないと、詐欺かどうかわからない。すがる思いで、管理会社をもう一度洗い直してみる。会社のメールアドレスから、やりとししている人物が実際に存在するか、会社のWebサイトをつぶさに調べてみる。

すると”私たちについて”の欄で、会社メンバーを写真付きで紹介しているではないか。どれどれ、ずらっと並んだ社員を見ていくと、最後に”ハッピーマネージャー”なるうさんくさい役職がある。ハッピーマネージャーは、人間ですらなくワンコであった。

その時私は確信した。

これはシロだと。

詐欺だったら、ハッピーマネージャーにワンコを就任させるはずがない。

いや、もはやワンコのハッピーマネージャーだったら、騙されてもいいとすら思ってしまった。

さて、結果はどうなるのか。当日までのお楽しみである。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。

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