だから私は海外で働くのをやめられない!海外で働き続ける理由

日本人からすれば海外で働くのは特別なこと、という認識を持っている人が多いのではないか。

一方で、海外に飛び出て働く人の中には、日本式の働き方をディスりながら海外で働くことがいかに素晴らしいかなどと説いて日本人よもっと外に出ろ!みたいな発言をする人もいる。

なぜ海外で働く人は日本で少数派なのか?

日本人はもっと海外に出た方がいい、その発言の裏には内向きな日本を懸念する意図も含まれているのではないか。

けれども私は日本人が内向きのままでいいと思っているし、海外に出た方がいいとも思わない。自分の人生なのだから、行きたいやつだけが行って好きにすればいいと思っている。

イギリスやドイツ、フランスを含む西欧諸国を除けば、ドバイにいるほとんどの連中は生活のための出稼ぎのためにドバイにやってきている。

もちろん先の国々の連中も、自国より高い賃金を求めてやってくるため、出稼ぎといえば出稼ぎである。

しかしそうした高額な賃金で消費されるのは、高級車だったり、自国よりもゴージャスな生活だったりするので、決して生きていくために必要不可欠な海外就職、海外移住というわけではない。

また中には、海外で数年間暮らしてみたいというパリジェンヌもいたが、いずれにしても生活に迫られてというよりかは日本人が持ちそうな、さらにより良い生活求めて、もしくは好奇心ゆえにというのが彼らの移住理由だったりする。

一方であげたらきりがないが、ドバイの労働者の大多数を占めるバングラディシュ、インド、フィリピン、パキスタン、シリア、レバノン、エジプトなどこうした国では自国民が生活を送るのに十分なお金を稼げるだけの仕事にありつけない(特にインドは人口が多いので、同じインドでも欧米諸国の連中と同じような理由で来る人もいる)。

中には内戦といった生活の安全面という理由からドバイに生活の拠点を移す人もいる。

つまりは生活のためになくなく自国を離れて、生きていくための銭を稼ぐという消極的な選択の結果がドバイ移住なのだ。

世界の大半の人間にとって、海外移住、海外就職というのは生きていくための選択として当たり前にあるものなのである。

このことを鑑みると、日本人にとって海外就職が一般的でない理由は、やはり日本国内でも十分に食べていけるだけの仕事の需要があり、生きていくための安全が確保されているからだろう。

この生きていくための安全というのは、日本人にはあまりピンとこないかもしれない。

けれどもシリアやソマリアの連中と話していると、安全に対しての渇望が並大抵のものではない。

また自分でそうした場所に行った限りでも、ドバイや日本のような生活をするにおいて命への危険性を感じないことがどれほどありがたいなことなのかがわかる。観光先としてドバイを選ぶ理由の1つに、「安全だから」という理由が上がるのも納得できる。

日本にいれば食いっぱぐれることもないし、日常的に命への危険性も感じない。大半の日本人にとっては、海外に出る大義名分などないのである。

しかしあえて日本人が海外で働く理由を提案するとすれば、個人的には以下のようなものがあると思う。

それでも日本人が海外で働く理由

外に出てみて初めてわかるのだが、日本は相当な成熟市場である。もはや何をやるにしても、たいがいのことは確立しているし、その道でできる人間などごまんといる。

けれどもドバイで働いて気づいたのは、日本では専門としてやっている人間や経験の多い人間がごまんといる分野であっても、ドバイではまだマーケットが未成熟だったり、マーケットのニーズにあった人材が不足しているといった実情がある。

そんな中へ飛び込んでいくと、人材としてはかなり希少の高い人間になる。なぜならドバイにいる人間のほとんどが日本のような成熟マーケットでの経験やスキルを持っていないからだ。

もちろん英語ができることは絶対条件になるが、それさえできれば専門スキルを持つ日本人が活躍できる場はドバイに多くあるのではないかと思う。

またモロッコやエジプト、サウジアラビアといった市場もまだまだ伸び代がある。こうしたマーケットで働いていると、成熟市場の日本では絶対に見られないような場面に出くわす。まるで日本の高度経済成長を見ているような感じだ。

だからこそそうしたマーケットで働いていると、自分がこのマーケットをリードできる(あくまで私の専門分野においてだが)、ドバイにおいて一番成果を出せるトップのデジタルマーケターになれる。周りの人間が聞いたら失笑してしまうような、そんな自信すら抱いてしまう。

日本でやってきたことをそのままドバイや中東でやれば成功するのか?と思うかもしれないが、そこが海外で働くことの面白さである。

もちろんある程度の部分は通用するが、日本と同じ考えで同じことをやってもうまくいかない。

あくまで、その国のニーズを押さえた上で現地仕様にカスタマイズさせていかなければ、成功は見出せないのである。

けれどもそのニーズをある程度掴め、思惑通りに行った時がもっとも仕事をやっていて楽しい瞬間なのだ。

その国ごとのニーズを知るのが、個人的には一番面白いプロセスだと思っている。ドバイというのは、世界中の人間が集まる国なので、ターゲットをひとくくりにするのが難しい。

同じ英語ネイティブでも、イギリス人、フィリピン人、インド人、パキスタン人では家族形態、お財布事情、消費事情も異なる。たとえばシャネルの英語広告をこうしたすべての英語話者に発信したのでは効果は今ひとつだ。だからこそ、こまかくターゲットを見ていく必要がある。

またこれはドバイに限らないことだが、大きく分ければドバイにはアラビア語話者と英語話者がいるわけで、そうした話す言語によってもニーズや消費者の動きは異なる。それを一つずつ発見していくのが醍醐味だ。

そうした作業にアラビア語が必要かと言われれば、必ずしもそうではない。できたらいいにこしたことがないが、自分がアラビア語ができなくとも、アラブ人に協力を要請したり、ある程度のアラビア語を読めるようにさえしておけばなんとなくつかむことはできるからだ(私の仕事の場合、文字が読めるだけでもかなり仕事で使えたりする)。

そんなわけで、海外(ここでいう海外というのは、日本以上もしくは同等に成熟している国ではなく、まだ発展途上の国だということを強調しておきたい。)で働く理由とすれば、今の日本市場が持っていない成長の伸び代を目の当たりにでき、自分もそこに参加できること。

さらに、年功序列で実力があっても上にいけない若手がどんどん活躍できる機会があるということになる。

もちろん万人がこうしたものを求めていないのは、百も承知だが、今の日本では見ることができない光景が見たいのであれば選択肢の一つとして考えてみるのもいいのではないか。

海外で働きたい・働く人へのおすすめ本

開高健ノンフィクション賞受賞作家による本。パリの国連で働いていた著者が、現地で活躍する日本人のストーリーをまとめたエッセー。フランスやパリというワードに興味がない人でも、楽しめる。

海外で働いていて、最も救われた本と言っても過言ではない。言葉ができないから、文化が違うから、と言って片付けてしまいがちなことでも、ちゃんと理由があるということを教えてくれる。海外で働く人のバイブル。

湾岸やイラン、トルコなどイスラーム圏で働く日本人の話をまとめたもの。海外で働く系はよくあるが、イスラーム圏に特化したものは珍しい。イスラーム圏ならではの文化の違いや、苦労話を知ることができる一冊。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

管理人をフォローする
デジタルノマド
シェアする
進め!中東探検隊