新卒から定職につかず、ずっとボランテイアで食いつなぐ男

パレスチナ留学時代に、たまたまカウチサーフィンというサービスを使って出会った男性がいる。パレスチナという土地柄か一体どんな日本人なのか、物珍しく会ってみることにした。パレスチナにいる間には、何人もの日本人(といってもだいたいJICAや政府関連の仕事の方)に会ってきたのだが、どうにも5年以上たった今でも彼が印象に残っている。

パレスチナのアイスクリーム屋で落ち合い、まずは自己紹介がてら一体どういうことをしているのかを聞く。しかし彼は、今でも衝撃的すぎて印象に残る自己紹介を開口一番かましてきた。イギリスの大学院を卒業して以来、ずっと定職につかずボランティアで世界を回ってきたという。パレスチナでも音楽関連のボランティアをしているとのこと。ちなみに出会った時点で彼の年齢は30代だったので、おそらく5,6年ずっとボランティアをして食いつないできたのだろうか。しかも日本にはほとんど帰っていないとのこと。

当時就活を控えた学生であった私は、定職につかずしてボランティアで食いつないでいく、しかも世界各地で、という発想は想定外であった。とにかく会社で働いて、お金を稼ぐという生き方しか知らなかった私にとってはかなり衝撃的だった。なぜずっとボランティアを?と聞くと、大学院では音楽を専攻。音楽じゃ就職は難しいとのことで、音楽関連のボランティアをしながら今に至るらしい。芸術というのは、いつの世もお金に困るものらしい。


世の中生きて行くためには、必ずしも会社勤めをする必要はないんだ、と。パレスチナという場所にいながら、まだまだ世界が狭かった私と未だ会社勤めの雇われの身として生きる自分にとっては、思い出すたびに何かを教えてくれる出会いだった。と同時に何かと絶望体質な私にとっては、こういう生き方もある、ということを思い出すたびに救われるような気がするのだ。