イスラエルの宗教は?知れば知るほど不思議な国、イスラエル

現代ではスタートアップやハイテク分野など多方面で知名度を上げつつあるイスラエル。しかし一昔前にこの場所を訪れる日本人といえば、大半が「宗教関係者」であった。それもキリスト教関係者だ。

自称「無宗教」を語る日本人にとっては、イスラエルにうずまく様々な宗教や宗教心が高い人々は、身近なものではないだろう。そんなイスラエルの宗教事情をご紹介。

ユダヤ教が多数派を占めるイスラエル

CIAファクトブックによれば2016年時点で、イスラエル人口の75%を占めるのがユダヤ教である。それに次いで18%がイスラム教、2%がキリスト教である。

この流れで言えば、イスラエルはユダヤ人が多数派を占める国と言えるのだが、イスラエルのネタニャフ首相をはじめ右寄りの人々は、何が何でも「イスラエルはユダヤ人の国やねん!」とアピールするのに必死である。

あまりにも必死すぎて、「え?そこまでやっちゃうの?」みたいな強行姿勢を見せていることは、報道などで周知のことだろう。

しかもユダヤ教といっても、みなが一様に信仰心があつい人々なわけではない。ユダヤ教はおおまかに分けると、世俗派、保守派、伝統派、超正統派に分けられている。厳密に言えば、このほかにもあるのだが、これらがイスラエル国内でよく聞く分類である。

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「あいつは世俗派だから・・・」とか「ここは伝統派が多いから・・・」といったように日常生活でも頻繁にこうした宗教の話が持ち上がるのがイスラエルである。

ユダヤ人もいろいろ

世俗派は、「は?神って何?」というレベルでほとんど宗教的な教義や実践とは無縁の人々である。特にイスラエルの首都テルアビブにはこのような人が多い。テルアビブといえばビーチとヨーロッパ風の街並みが特徴的。ゲイ・プライド・パレードも毎年開かれており、パリピが跋扈する場所なのだ。

一方で、エルサレムに来ると途端に様相が変わる。宗教色が強く、住んでいる人々ももさくなる。垢抜けない人々が多いのだ。超正統派が多く住み着いているメア・シェリーム地区は有名だろう。

同じ「ユダヤ人」でありながらも、信仰心や考え方が大いに違う。宗教とは無縁で暮らしたい人々に対し、ユダヤ教を頑なに守りぬきたい人々。そうした方向性の違いが国内で亀裂を生み出すこともある。

特に国内で大きな問題になっているのが徴兵制の問題だろう。イスラエルでは18歳以上の男女ともに徴兵の義務があるが、超正統派は現在徴兵を免除されている。


ユダヤ教超正統派の男性


兵役中の若いイスラエル人女性

彼らにとってはユダヤ教を勉強することが仕事なので、徴兵はおろか、銭をかせぐという普通の「仕事」にさえつかないが一般的だ(もちろん一部の人々は働いている)。しかも彼らは国からの生活保護で暮らしている。これに対して、何事か!と怒っているのが世俗派の人々である。

そんなわけで、イスラエルにはサイバーテクノロジーやスタートアップなどに従事するインテリジェンスの高い人々がいる一方で、フェイスブックやグーグルも知らず、ネットやテレビを拒絶しひたすら宗教に寄り添った生活を送る人々が暮らしている。

その他にも、ユダヤ人でありながらイエスを崇めるメシアニック・ジュー(Messianic Jew)と呼ばれる人々や、超正統派の厳しい生活に耐えかねて家出し世俗派になる人々など。それはそれは、自称「無宗教」の日本人にはなじみのない世界が広がっている。

ちなみに私がエルサレムに留学していた当時は、伝統派のイスラエル人とメシアニック・ジューを名乗るうさんくさいアメリカ人と暮らしていた。メシアニック・ジューのルームメイトが、部屋でかけていた「Ohhhh、ジーザスー!」みたいな歌がいまだに耳にこびりついている。

多様な宗教があるイスラエル

ユダヤ教が多数派を占めるイスラエルだが、それ以外にも実に多様な宗教が存在する。

アラブ人とユダヤ人が仲良く暮らしている町という、キャッチフレーズで有名なイスラエルの第3の都市ハイファは、宗教色はエルサレムよりは薄いものの、イスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒が各々マイペースに暮らしている。


エルサレムのアル=アクサモスク近くでコーランを読むイスラム教徒たち

その他にもイスラーム教シーア派の一派であるドゥルーズ派やイランで生まれた一神教のバハイ教の総本山がハイファにある。


ハイファにあるバハイ教の本山、バハイ・ガーデン

一様にユダヤ教徒の人口が多いといっても、人によってさまざまなのだ。人の数だけ「オレの宗教ストーリー」がある。それがイスラエルなのだ。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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