東京ジャーミイ見学ガイド。美しきモスクの見どころを解説

東京で異国を感じられるスポットとして話題の東京ジャーミイ。誰でも見学可能ということで、連日美しいモスクを見ようとやってくる人が絶えない。そんなモスクの見どころについてご紹介。

東京ジャーミイとは

東京ジャーミイとは、東京の代々木上原にあるトルコ系のモスクのこと。トルコ以外の地域では、モスクやマスジッドと呼ぶが、トルコではジャーミイと呼ぶのが一般的。ジャーミイはトルコ語でモスクを意味する。トルコ政府の援助によって建てられたこのモスクは、東京を代表するモスクとなっている。現在の姿のモスクが建てられたのは2000年。もともとこの地にあった東京回教礼拝堂が古くなったため、建て替えられた。

東京ジャーミイの歴史

トルコを抜きにして、東京ジャーミイの歴史を語ることはできない。東京ジャーミイの前身である東京回教礼拝堂(当時はイスラーム教のことを回教と呼んでいた)は、戦前の1938年に建てられた。イスラーム教徒のいないところにモスクは建たない。前身のモスクは、ロシア革命のイスラーム教徒への迫害を逃れるため、満州を経由して日本へやってきたタタール人コミュニティを中心に建てられたものだった。

モスクのオープン式典には、日本史の教科書にも出てくる頭山満などが参加した。日本がイスラームに関心を持ち始めたのは、戦時中のことであった。アジア進出をするにあたり、イスラーム教徒が多い地域も攻略せねば、ということで、イスラームの研究が始まったのである。

ジャーミイの見どころ

東京ジャーミイ

モスクの中へ入ると、巨大なドーム空間に圧倒される。モスク建築のために、トルコ現地から職人と資材を連れてきただけあって、現地のモスクにも劣らない、精巧で美しいモスクとなっている。モスク内全体も圧巻だが、異国情緒漂う空間を演出する、細かい装飾にも注目したい。

モスクの建築と装飾に関する詳細はこちらの記事を参照
建築と装飾からみる東京ジャーミイ

モスクは一般的にイスラーム3大装飾と呼ばれる、幾何学模様、アラベスク模様、カリグラフィーで彩られている。人物や動物がモスクに描かれることはほとんどない。

東京ジャーミイの装飾

モスクを彩る模様の精密さに職人の技術の高さがうかがえる


トルコでよく見られるルーミーと呼ばれるモチーフを使ったアラベスク模様


東京ジャーミイはいたるところがアラビア語のカリグラフィーで装飾されている。アラビア語のアルファベットの形をしたシャンデリア。そのシャンデリアにぶら下がるランプにも、カリグラフィーが書かれている。

平日も見学OK!モスク見学ツアー

モスクが空いている時間帯は、イスラーム教徒でなくても見学ができる。写真撮影も、礼拝中の人々を写さなければ基本的に自由だ。

午後以降になると礼拝が立て込むので、ゆっくりと建物内を見学するのであれば、午前中がおすすめ。礼拝中は、セキュリティのためモスクのドアを閉めていることがある。礼拝は10分程度で終わるので、閉まっていた場合は、少し待ってみるべし。

毎週土日には、ガイド付きのツアーが開催される。ツアーガイドを担当するのは、下山茂さんという方。大学生の頃、アフリカのスーダンを1年かけて旅行。旅で出会ったムスリムの人々に惹かれ、改宗したのだという。

物腰柔らかそうなおじさんで、ジブリ映画に出てきそうな人である。ツアーは、モスクの成り立ちに始まり、日本とトルコの関係、イスラーム教の考え方などについてわかりやすく説明してくれる。


東京ジャーミイの案内人、下山さん(右端)がモスクについて丁寧に案内してくれる

モスクというのは、イスラム教徒にとっては神聖な場所であるから、異教徒が入ることはできない。海外では観光客用に解放しているモスクなどもあるが、全体の数から見ればごくわずかだ。そんなわけで異教徒にも開かれている場所、東京ジャーミイというのは非常に稀有な場所だといえよう



見学時の服装

モスクに入る際は、短パンやタンクトップ、スカートなど露出する服装は避けるべし。

女性の場合は、髪の毛を隠す必要があるため、スカーフを巻かなければならない。

モスク内ではスカーフを貸し出しているため、わざわざ自分で持ってくる必要はない。ただ、貸出用のスカーフは、スカーフというよりガーゼみたいなものなので、映えにこだわりたいという人は、持参した方が良いだろう。

東京ジャーミイスカーフ
モスクの入り口に女性向けの貸出用スカーフやアバヤ(黒いガウンのようなもの)が置かれている

スカーフの巻き方

スカーフの巻き方は、人それぞれで決まった巻き方はない。一般的なスタイルというのはあるが、最近ではインスタグラマーなどがおしゃれな巻き方を紹介している。フランスのパリジェンヌ風にシルクスカーフを巻いてもいいし、アフリカ風にターバン風に巻いたりと、スカーフの巻き方も進化している。

お土産も買えるハラールマーケット

東京ジャーミイハラールマーケット

1階の建物入り口からまっすぐ進むと、ハラールマーケットへつながる。コンビニほどの広さがある店内には所狭しと、異国情緒漂う食料品や雑貨が売られている。

ハラールというのは、アラビア語で”許された”という意味。イスラーム教徒が口にするのは、ハラールフードと呼ばれるイスラームの戒律に沿って作られた食べ物が中心となる。イスラーム教徒が大多数を占める国であれば、食べ物はどれもハラールが当たり前なので、わざわざハラールという表記をしない。けれも、日本のように非イスラーム圏の場合は、ハラールフードと表記しておくとイスラーム教徒が安心して食べられるのだ。

ハラールフードについての詳細は下記の記事を参照
イスラム教徒の食事を徹底解説。ハラールフードとは?

ハラールマーケットというと、なんだかかしこまって聞こえるが、要はカルディみたいな異国の食料品店みたいなものだ。ロクムと呼ばれるトルコの銘菓やトルココーヒーといったトルコならではのものはもちろん、栄養価が高くスーパーフードとして最近は知られるデーツもある。デーツはパレスチナやチュニジア産など、海外でもなかなかお目にかかれない品揃えである。

ジャーミイならではの書籍コレクション

1階の建物入り口横には、本がずらりと並べられている書籍コーナーがある。以前はお土産コーナーだった場所が、本のセレクトショップになったらしい。

モスクの本屋ではあるが、歴史や芸術、文化人類学などイスラーム地域に関する幅広い分野の本が並ぶ。少数ではあるが、英語やトルコ語の本もある。普通の本屋には置いていないような専門書などもあるので、立ち寄る価値は十分にある。

日本とトルコのつながりを知る展示スペース

東京ジャーミイ展示室

カフェがある2階には、こじんまりとした展示スペースがある。親日な人が多いトルコと日本が交流するきっかけとなった「エルトゥールル号遭難事件」に関する資料や、事件を元にした日本・トルコ共同制作の映画「海難1890」のポスターなどが展示されている。

同じスペースには、日本人アーティストによるトルコの伝統美術作品が展示されており、トルコの伝統美術に触れる貴重な場所にもなっている。

モスクに併設するカルチャーセンターでは、定期的にアラビア語書道講座やイスラーム基礎講座から、フローラルワークショップやクラフト講座などトルコの芸術を学べる講座もある。

また同じ建物内には、カフェスペースがあるので、トルコの味を堪能することもできる。カフェは、文化センターの催し等で、閉まっていることもある。カフェ狙いでいく場合は事前に営業しているかを確認した方が良いだろう。


建物内に飾られている伝統美術作品。アラビア書道(写真上)、コーランの写本(写真下)、「エブル」と呼ばれるマーブル模様とカーネーションを描いた作品(写真左)

東京ジャーミイは、単なるモスクというよりもカルチャーの発信地でもある。モスク内だけでなく、施設内の至るところに、モスクの歴史に関する資料やトルコの伝統美術作品が並ぶ。普通のモスクでここまでやるのも珍しく、カルチャーの発信地である東京ジャーミイならではだろう。

見学ツアー概要&アクセス

見学ツアー日程

毎週土日の14時半から。予約は不要。ツアー時間は1時間弱。基本はどこでも撮影OK。ただし許可なく礼拝中の人を撮影するのはNG。

開館時間

年中無休。10時から18時まで。金曜日は礼拝のため、正午前後の時間帯は多くの人が出入りする。静かな時間帯に見学するなら、金曜以外の平日の午前中がオススメ。

公式サイト

http://tokyocamii.org/
トルコ料理教室や文化交流イベントも随時開かれているので、ぜひチェックしたい。

アクセス

小田急線もしくは千代田線の代々木上原駅から徒歩5分。

マンガでゆるく読めるイスラーム

普通の日本人がムスリム女性と暮らしてみたらどうなる?「次にくるマンガ大賞」や「このマンガがすごい!」などでも取り上げられた話題のフィクション漫画「サトコとナダ」。

イスラーム芸術についてもっと深く知るなら

アブダビのグランドモスクが表紙。言語や芸術など様々な方面からアラブ世界を美しいビジュアルと共に紹介。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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