エミレーツ航空のビジネスクラスにアップグレードしない理由

エミレーツ航空のビジネスクラスにアップグレードするにはどうすればいいのか?という質問は山ほどありそうだが、その逆はあり得るのだろうか。すなわち、ビジネスクラスにアップグレードしない理由は何なのかという奇問であり、愚問である。


エミレーツ航空のエコノミーを予約した。エコノミーとはいえ、日本とドバイの往復チケットで12万円ほどする。ああ、高い。そう感じるたびに長らく連れ添った、カタール航空という空の相棒を思い出す。

航空チケットもリーズナブルで、サービスの質も高い。フライト時間も数時間しか変わらないのに、エミレーツ航空と比べると3万円以上も安かったのだ。

そんな相棒を2017年6月に国交断絶という外交的な理由により突如として失った。いまだ、私はその悲しみから立ち直れないでいる。

エミレーツ航空のビジネスクラスに6万円でアップグレード!?

フライトの1週間ほど前に、突如としてエミレーツ航空からメールが届いた。一体エミレーツ様がなんの御用でしょう?と思いつつ見ると、

ビジネスクラスへのアップグレードへの案内だった。

エコノミーの価格に約6万円上乗せするだけで、片道だけビジネスクラスに乗れちゃうというお誘いである。しかも、24時間限定というタイムリミット付きである。

いかにも「あなただけ」というような特別感があふれている。フィリピンパブや新宿のキャバクラで、「好きなのは、あなただけよ」などと言われる時のあの感覚。自分は選ばれた特別な人間なのだ、という恍惚感。エミレーツ航空に光栄にも選ばれたのかしら?と愚かにも私は一瞬、頬を紅潮させた。

しかしなんてことはなかった。知人がエミレーツ航空で働くという友人曰く、「利用客の人数が足りないと、飛行機を飛ばしても赤字になるだろ。そういう時は、アップグレードさせて少しでも採算を合わせる」ということらしい。

ちっ。赤字回避のためかい。やっぱりエミレーツ航空もキャバクラのお姉ちゃんと同じだ。愛や仁義ではない。金のためなのだ。

さて、どうしたものか。6万円を払ってビジネスクラスに乗るべきなのだろうか。24時間以内の英断を迫られている。プロモーションメールを受信して数時間、私の心は揺さぶられ続けた。

エミレーツのビジネスクラスは片道だけで30万円以上はする。それが、たった6万円で購入できる。24万円以上お得だ。速攻でアップグレードするべきだ。ちなみに以下がおおよその価格表。

エミレーツ航空 ドバイ東京間 片道料金の例
エコノミー 5万7千円
ビジネス  32万円
ファースト 51万円
参照:エミレーツ航空公式サイトより

ビジネスクラスにアップグレードしない理由

しかし、6万円を払ってまでビジネスクラスに乗りたいだろうか。6万円を払って得るものとは何なのか。おいしい機内食?ブルガリアのポーチセット?高級なお酒が飲み放題?ゆったり過ごせる空間?

それをたった8時間のフライトで消費するための6万円・・・?

6万円あったら何ができる・・・?

クウェートやオマーンといった近隣の湾岸諸国に2回は行ける。そこそこいいホテルに1泊できる。がんばれば本50冊ぐらいは買える。

そもそもエミレーツのビジネスクラスは、インボランタリー・アップグレードで1度乗ったことがある。つまりは、オーバーブッキングのため無料でのアップグレードだ。

あれをもう一度味わいたいか、と聞かれると正直よく分からない。シャンプーやボディーシャンプはブルガリじゃなくて、Doveで十分。酒ももう飲まない。というかビジネスに乗ったら、調子こいて酒を飲んでしまいそうで怖い。おいしいご飯を食べても多分1年後にその感動は残らない。

まあ、私のような平凡な市民にとっては、一度ぐらいで十分な経験じゃないかと思う。

ビジネスクラスにアップグレードすべき理由

こんな話をすると、シリアからやってきた自称パレスチナ難民の友人は、鼻の穴を膨らませて興奮していた。

「あんたバカあ?こんな大チャンスが転がってるのになんでアップグレードしないのよ。あたしだったら速攻アップグレードしてるし。つーか、あたしが唯一、飛行機に乗った時といえば、シリアからドバイに来る時ぐらいよ。しかも、そん時の飛行機ったら、シリアのバスみたいで、超ダサいの!」

こんな感じの飛行機だった、と見せられた写真は、よくあるLCC航空の機内画像だった。バスじゃなくて、フツーにLCCじゃん?

一方で、何度かビジネスクラスに乗ったことがあるという別の友人は、ビジネスに乗った方が体への負担が少ない、という加齢に伴う体への気遣いを理由にビジネスクラスに乗るべきだと主張した。彼は、飛行機の中ではどうしても眠れないという不思議な特徴を持っている。

ビジネスクラスの機内食の原価計算をし始めたあたりで、なんだかもう面倒くさくなり、アップグレードすることをやめた。この結論に至るまでの数時間の徒労と興奮はなんだったのか。

というわけで、こうしたプロモーションメールに踊らされるのは、安いからといって不必要なものを購入するセールの仕組みに似ている。ただ、それが初めてのビジネスクラス体験だったり、体への配慮といった側面からすればビジネスクラスに乗る理由になるのだろう。

と考えていたら、なんとエミレーツ航空自らビジネスクラスに乗らない理由を提言していた。

動画はエミレーツ航空のCM。カウンターで、「アップグレードできない?」と客が次々と尋ねる。実際にそうした客が多いのだろうか。そして最後のメッセージには、「エミレーツ航空はエコノミーでも十分最強クラス!」みたいなことをぶっ放している。

そう、エコノミーでも十分なのがエミレーツ航空なのである。