ソマリアに嫉妬する

新事実。やきもちをやく相手は人間に限らず。

この事実を知った時、私はひどくおののいた。もしかしたら、ついに気が触れたのかもしれないと自分の正気を疑った。


「ソマリアを旅する」という本を2018年1月1日に出した。この達成感を誰かに伝えたい!ということでまず最初に伝えたのが、プントランド(ディズニーランドの一種ではなくソマリアの地域の一部)の世話役であったアブドゥラジズである。アブドゥラジズは、私と同じ年齢で、もともとドバイに住んでいた。

男なのにブラジルのサンバ美女のようなプリケツの持ち主であり、バツイチで3人の子どもがいる。ちなみにスマホの機種はiPhoneである。

アブドゥラジズは、唯一「本はもう出たのか?」と聞いてきた人間だった。本を出してみせる!と周りには言っていたものの、彼らの反応は一様に「ふーん」か、少々よくて「へえ、まあ頑張って」というものだった。

まあ、素人の出す本なので誰からも望まれないことは百も承知である。しかし、せっかく「(たぶん)日本で初めてのソマリア旅行本だよ!」と大々的なキャッチフレーズをつけても、誰一人食いついてこない。素人であることがいけないのか、それともソマリアという題材が、あまりにも非現実的過ぎるのだろうか。

ともかく、唯一期待してくれたアブドゥラジズだけには報告しようと思い、いの一番に「おかげさまで本出せました。その節はどうも」と、アマゾンに掲載された自著のキャプションを証拠として送りつける。

アブドゥラジズの反応は上々だった。ソマリ語や英語ですらない本で申し訳ないなあと思いつつも、なぜかアブドゥラジズはGoogle翻訳を使ってわざわざ日本語でメッセージを送ってくる。

それにいい気になっていたのも束の間。私のスマホはある写真を受信した。一体何の写真なのだろうと見ると、そこに写り込んでいたのは、若い日本人男性だった。あどけない、おそらく学生だろうか。

アブドゥラジズの説明によると、ある日本人がソマリアの首都モガディシオにやって来たという。しかもその妹は、モガディシオに住んでいる、という。後半部分はあえてツッコまないこととする。

その瞬間、私は違和感を覚えた。あれ、これは本来の用途ではない。なぜならその時、芽生えた感情が「嫉妬」だったからである。

人間界で言えばこんな感じだろう。

「ちょっと!私の知らない間に、なんで知らない女を連れ込んでるのよ!」

それが、私の場合だとこうなる

「ちょっと待った!アタイの知らぬうちに、モガディシオに日本人を連れ込むなんてどういうこと!キー!!!モガディシュは私のものなのに!!!」

といった感じである。冷静に考えればモガディシオが己のものである訳もないし、どこの誰がモガディシュへ行こうと勝手である。ソマリアに嫉妬をした自分が恐ろしくてしょうがない。

しかし、そんなにソマリアに思入れがあるわけでも、ソマリ人が好きなわけでもないのに、この執着は一体どこからやってくるのだろう。しいていえば、私が好きなのはソマリアの中でもプントランドである。

プントランドは私にとってはディズニーランドみたいなものである。みなが大挙してディズニーランドに押し寄せ、ネズミたちと宴を楽しむのであれば、私はプントランドで自由気ままな遊牧民たちとラクダに囲まれて宴を楽しみたいと思う。