電子書籍出版で分かった!文章を読みやすくする原稿校正の14ポイント

すでにアマゾンでのキンドル電子書籍出版方法については多くの記事が出ているので、そちらを参考にされたい。しかし自分で初めて出版をしてみて分かったのは、ブログ記事が謳うほど「セルフ出版」というのはそんなに楽なものではないということだ。

出版手続きやファイルの書き換えはさほど難しくはなかったのだが、一番時間がかかったのが編集、校正である。これだけ大変な作業なのに、ネットで探してもあまり情報がない。

しょうがなくある情報だけで進めるが、やはり「校正のプロ」が存在する限り、いくら自分で校正をしても心許ない。今回の出版を通じて感じた個人でできる範囲の校正のコツをお伝えしたい。


読み返しと校正は違う

間違いのない文章を書くためには、とにかく何度も読み返すことが重要だと思っていた。初めのうちは、「読み返し」と「校正」をごっちゃにしていたほどだ。けれども様々な本を読むにつれ、読み返すだけでは不十分なのでは?と気づいたのである。

読み返しはあくまで、誤字脱字といった明らかな間違いを見つける作業であるが、校正では自分が正しいと信じてきた表現や言葉使いにもメスを入れ、それが本当に正しいのか、論理が通っているのかまでチェックする。

これがまあ時間がかかる作業なのである。こうしてようやく、なぜ「校正」のプロがいるのかという意味が分かってくる。

この校正とやらを一度やると、ちょっと文章を書くことが臆病になる。なにせ今まで自分が正しいと思い込んできた表現や言葉遣いが、ことごとく誤りであるという現実に直面しなければならないからだ。

セルフ校正に役立った本

電子書籍から日常の文章まで、校正に関する本は多く出ている。ただ電子書籍におけるセルフ校正のアドバイスはだいたい「よく読み返しましょう」の一言で終わるし、新聞社が出しているような校正本は、正しい日本語を使いましょうというコンセプトのものが多い。必ずしも本で紹介される表現をすべて使うわけではないので、いまいち役に立たない。

また校正ブックや記者ハンドブックなどは電子書籍化しておらず、海外在住者にとっては読みたいと思っても、すぐに手に入れることが困難だった。そうした制限がある中で、特に役に立ったのが毎日新聞社の校閲グループが出している「校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術」という本だ。

校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術
毎日新聞校閲グループ
毎日新聞出版 (2017-09-01)
売り上げランキング: 7,267

現役の校閲記者がどのような視点で、文章をチェックしているのか、実際の事例とともに掲載されている。実際の用例は少ないのだが、基本的なプロの校閲記者の「視点」を理解することで、自分の文章にも広く応用することができる。

同社の校閲グループによるサイト「毎日ことば」もおすすめ。校閲者のブログやこちらでも実際の間違いを公開している。


毎日新聞の校閲グループによるサイト「毎日ことば」

その他にも同じテーマを扱う既存本をチェックすることも役立つ。地名表記や一般になじみのない専門的な言葉の説明、いい言葉が浮かばない時にプロはどんな表現を用いているのかがよくわかる。プロの本は最高の「参考資料」なのだ。

もし日本にいたら、共同通信社の記者ハンドブックでも買って、もっとガシガシやっていただろう。

記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集
一般社団法人共同通信社
共同通信社
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セルフ校正のポイント

こうした本を参考に私が実践したいくつかの私なりのポイントが以下である。

1.数字表記の統一

横書きであれば算用数字、縦書きであれば漢数字が一般的。初めはブログ同様に横書きで書いていたが、実際の本は縦書きにしたため、後から算用数字から漢数字に直すのに時間がかかった。原稿を書き始める前に、縦書きか横書きかをまず決めておくべきである。

2.文章の基本は5W1H

そんなの知ってるよ〜と言いながらも意外とできていないこの基本。これを心がけることで、文章がだいぶわかりやすくなる。逆に言えばわかりにくい文章というのは、「誰がどこで何をした」ということが明確にわからない文章ということである。

3.文章はなるべく短く

ついやってしまいがちなのが、だらだらと文章を書くこと。1つの文章に言いたいことが複数入っていると伝わりにくい。文章を見返しながら、ここは2つの文に分けられるだろうか、この表現がなくても意味が通じるだろうか、などと文章の断捨離をしていく。

適切な言葉の選択も同時に行わなければならない。ふさわしい表現や単語がバシッとはまれば、多くの言葉を用いて説明する必要がない。しかし、そのためには語彙力が必要だ。

4.ワードの表記は参考程度に

マイクロソフトのワードを使うと校正機能が使える。が、この機能はあくまで参考程度、人間が行う校正の10%ぐらいをやってくれる程度と考えた方がいいだろう。ワードの校正機能に、校正のすべてを委ねてしまうのは危険だ。

またワードの類推候補も要注意だ。途中まで文字を入力すると「この言葉じゃありません?」と丁寧に表示してくれる。気が利くやつだと思いきや、安易にやつの言葉を信じてはならない。

私の場合、ソマリアの首都「モガディシュ」と入力しようとしたら、「モガディシオ」と表示された。なのでワードのおすすめに従い、「モガディシオ」と書いていたのだが、他の文献をみるとそうでもないらしい。

新聞社のケースを確認してみる。英語表記の「モガディシュ」を使用している方が多数で、イタリア語読み(ソマリアは元々イタリアの植民地だった)の「モガディシオ」と表記するのは少数派だった。

一方で、「謎の独立国家ソマリランド」の高野氏の本では、ソマリ語読みの「モガディショ」と書かれている。一体どれが正解なのだ?と困惑したが、もっとも一般的と思われる英語表記の「モガディシュ」を採用した。

おそらく高野氏は、ソマリ語も勉強しており、ソマリ人に帰化したいというぐらいソマリアに思い入れがある人なのであえてソマリ語読みの「モガディショ」を選んだのではないかと思われる。

5.すべてを疑って一字一句確認

自分の中では正しいと思っていても、一字一句正しい意味と漢字で使われているのかを調べる。私の場合は、8万字近くあったので、それらを一つずつチェックするのにはまるまる2週間を要した。実際に調べると、間違った意味や表現を使っていることが次々と判明する。

日本語の難しさを恨みながらも、いかに自分の文章が正しい表現からかけ離れていたかに気づかされる。自尊心をえぐる作業だ。本の辞書が手に入らなかったので、私はひたすら語句や表現をネットで検索しまくった。

個人的によく迷った「超える」と「越える」の違い
「超える」:上に出る、超過。例:30度を超える気温。想像を超える
「越える」:通り過ぎる、年月を経る 例:国境を越える。冬を越える。

他にも、「りんごの出荷量が日本一」といったよく耳にするフレーズをそのまま書いてしまうと以下のようなことになる。ラクダは肉になっていない限り「量」ではないから、「頭数」に修正した。

<実際の修正点より>
訂正前

ラクダの出荷量が世界一

訂正後
ラクダの出荷頭数が世界一

6.助詞の「の」は2つ以上連続で使わない

「の」が連続した文章は、読み手に負担がかかり、理解力の低下を招く可能性がある。「の」は使いやすいのでつい使ってしまいがち。なので、どう別の表現に置き換えるのかでやや苦労した。

<実際の修正点より>
訂正前

日本離島空港

訂正後
日本の離島にある空港

「の」は「〜にある」、「〜に住んでいる」といった表現で置き換えることができる。

7.意外とやっている二重表現

文章としては、正しいように見えるが、よく考えてみると同じ意味を繰り返しただけのもの。例えば、「約10分ほど」。「約」も「ほど」もおおよそという意味なので、 「約10分」もしくは「10分ほど」で十分。読者の読むというエネルギーを無駄に消費させないためにも、最低限の表現で最大限のことを伝える。これがいかに難しいことかを体感した。

ありがちな二重表現
一番最初
車に乗車
必ず必要
あらかじめ予約
余分な贅肉
元旦の朝

8.馴染みのない事柄は丁寧に説明

私が個人出版をしたのはソマリアの旅行本である。ソマリアは、日本人にはなじみがほとんどない場所だ。日常では使われない用語が頻出したので、こちらは新聞社がどのように書いているかを参考にした。また国や新聞社の方針によっても表現がだいぶ違うものもあるので、そちらは自分の感覚とすり合わせる形にした。

以下は私の原稿からの例である
アル・シャバーブ→ ソマリア南部を中心に活動する過激派組織
媒体によってはイスラム過激派組織と書かれている場合もあるが、たとえ事実であってもイスラーム教徒=テロという認識を助長するのではないかと思い、私の本ではあえて過激派組織とだけ記した。

UNHCR→ 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
新聞表記をみるとこうした国際組織は必ず日本語名と一緒に紹介されている。UNHCRといって分かる人もいるだろうが、より多くの人に理解してもらうには日本語をつけた方が、伝わりやすいのだろう。

スマホのBluetooth→ スマホの無線通信
若い人は「Bluethooth」が何なのか分かる人も多いだろうが、もしかしたら世代によっては伝わらないかもしれない。こうした自分にとっては当たり前に分かる言葉も、親や身近な友人が読んだら理解できるだろうかと様々な読者を想定して見ていく。この場合はBluetoothを日本語に置き換えた。

なるべく難しい用語は使わないように心がけたが、それでもほかの言葉で置き換えられない場合は、その後の文章で説明をつけたりした。

9.論理の確認

日本語としては間違っていない。けれども論理的にはおかしい・・・これが一番やっかいである。これは個人の知識量や経験に左右されがちなので、気合を入れてチェックしていかなければならない。

<実際の修正点より>
訂正前

3歳ほどの赤ちゃんを連れて

訂正後
8ヶ月ほどの赤ちゃんを連れて

何気なしに書いた文章だが、よく見ると「3歳」は赤ちゃんなのだろうかという疑問が浮かぶ。そこで「赤ちゃん」の定義を調べてみると、1歳の誕生日を迎えるまでの「乳児」と「新生児」を赤ちゃんと呼び、それ以降は「幼児」になるのだという。

次に「赤ちゃん 8ヶ月」とGoogleの画像検索をし、自分が目撃した「赤ちゃん」と一致するかを確認。

ちなみに3歳だとこんな感じ・・・赤ちゃんでないことは明白。

このGoogleの画像検索はおすすめである。自分の認識と世間の認識のギャップを確認するには最適のツール。

さらに「知恵熱を出した」という表現も使っていたのだが、「知恵熱」というのは生まれて半年から1年までの乳児が出す熱だという。大人が出すのは「知恵熱」ではなく、単なる「熱」だということになる。

10.それって思い込みじゃない?事実の確認

思い込みというのはやっかいである。特に一人で作業しているとその罠に陥りやすい。何気なく書いている文章でもきちんと調べて事実確認をすることが大事。面倒だが意外と思い込みで書いていることが多いことに気づく。

例えば私の場合、原稿の完成間際まで自分が訪れた場所を「アフリカ大陸の最東端」だと思っていた。地図上で見ても最東端だからである。しかし改めて検索してみると、なんと別の場所が最東端として紹介されているのではないか。地図を拡大化させてようやく見えるほどである。


大陸の先っちょに訪れた私はそこが「最東端」だと信じていた


地図を拡大してみる。ここがアフリカ大陸の最東端。えええーーー?そんな「最東端」あり?

この瞬間、椅子から転げ落ちそうになった。今まで「最東端」だと信じていたのに・・・ドヤ顔で「アフリカ大陸の最東端に行きました!」と言って大恥を書くところだった。

特にこうした最大級表現を使う場合は注意が必要だ。「アフリカの最東端」であれば、それを堂々とアピールできるが、2番目となれば一気にスゴさが下落する。そして2番目の先端など、人々にとってはどうでもよい。よって本のタイトルにも影響が出るぐらい、大幅な変更を迫られた。

11.無駄を省く

とにかく素人の文章は無駄が多い・・・自分の文章を読んで気がついた。プロがすごいのは、最小の表現で、最大限に表現をすることである。これだ!という語彙を最適なタイミングで選び、組み合わせている。

一方で素人はそれができないから、だらだらとした文章を書き、間違った語彙を選定することで読者にあれっ?と思わせる文章になってしまう。と個人的には解釈している。

このことを出版間際になって痛感した。自分で「本もどき」を書いてはじめて、なぜ彼らがすごいのかが分かった。

個人によって文章のクセがあるようで、特に私は「〜という」表現が散見された。「〜という」のはあくまでつなぎ言葉であるから、省いてもいい表現だということに気づき、せっせと「という」を削除していった覚えがある。

このようにいかに無駄を省くか、自分の文章のクセを見つけることも原稿を書く上では重要である。

12.プロの本を確認

先述したように出版社から出されている本は、プロの校閲者の手が入っている。つまり個人出版をする人間にとっては、お手本なわけだ。表現や表記方法で迷った場合には、プロの本を参考にすると良い。本によっても行間の入れ方や改行方法が異なるので、自分の本のテイストにあった本を数冊持っておくとよい。

また新聞にしろ、本にしろいくらプロの手が入っているとはいえ、第3版といったように改訂が入っている場合も見受けられる。つまり、プロがどんなに見てもやはり見落としや変更せざる部分が出てくるわけだ。プロでも見落とすのだから・・・校正でがんじがらめになりそうな時は、この事実を知っておけば、少し余裕を持って取り組めるだろう。

特に大手出版社が出している有名作家の本で、明らかな間違いを見つけた時は、ちょっと嬉しくなる。しかしプロの本であればいちいち指摘する人はいないが、素人の本だと真っ先に槍玉にあげられるので気をつけたい。

13.正解がないものもある

使用方法や意味合いが明白な言葉もある一方で、本来の意味と一般的に使われる意味合いが異なる場合もある。そうした場合は悩みどころだ。先ほどの毎日新聞社の本でも、表現によってはある新聞社は直すけど、ある新聞社は直さないということも紹介されていた。

つまりどんなに正しさを追求しても、最後は書き手の意図や新聞社の方針によって決定する表現もある。これもまた、正しい表現を追求しすぎて気が狂いそうになった時に知っておきたい事実である。

14.校正は紙で綺麗な字で校正しよう

最後に言うのもなんだが、よく言われるように文章をチェックするには紙が一番である。家にプリンターがない私は、100ページ強もの原稿を会社のプリンターを使って印刷していた。明らかな職権乱用である。

そんな後ろめたさを感じても、絶対に紙でチェックすることをおすすめしたい。デジタルでは発見できない間違いも、紙だと浮かび上がってくるからである。

校正には専門の記号を使うようだが、素人なら覚えなくてもいいのではないか。ただ、一つだけ言えるのは、丁寧な文字で校正をするべきということだ。私の一番の後悔は、自分の殴り書きの文字が読めず、後で読み返してみた時に、解読に時間がかかったことである。その時の自分は分かっていても、未来の自分には伝わらないのである。

セルフ校正は大変だけど・・・

校正というのは非常に時間がかかり、細かい作業でもある。このセルフ校正をやってみて感じたのは、自分がいかに言葉の意味をあいまいにとらえ、適当に使っていたかということだ。けれども一つずつ面倒だなと思うことでも調べていくうちに、「へえ、そんな意味もあったんだあ」とちょっと楽しくなってくる。

特に論理を確認する部分は、自分で自分の表現の矛盾を発見し、指摘するわけだから爽快なことこの上ない。もちろん今回のなんちゃって出版で、完璧な校正や文章が書けるようになったとは全く思っていない。それでも、出版をしなかった時よりもずいぶん文章への感度や知識が高くなったことは事実だ。

やっている最中は非常に辛いけど、終わってみると手にしているものが増える。そんなセルフ校正体験であった。