イスラム教に改宗したことを知った周りの反応

こんなにもドバイで職場をざわつかせたのは、残業事件以来である。

これまで、髪丸出しでワンピース姿しか見たことがなかった職場の同僚たちは、パンツスタイルで頭を「パイレーツ・オブ・カリビアン」の海賊のごとくスカーフで覆った、180度衣替えした私の姿をみて予想以上にざわついた。


たかが服装でざわつくとは何事かと思っていたが、それほどまでに人の格好というのは周りにそれなりにインパクトを与えるものらしい。

ざわつきは主に2つの派閥に分かれていた。「新しいファッション、いいじゃん」派閥と「ムスリムなったんじゃね?」という派閥である。一見すると単なるファッションの一種で、イスラム女子だと判断しかねるのが、私のファッションのポイントなのである。

ファッションをがらりと変えてから数日は、ほとんどの人間が「そのスタイルいいじゃん。新しいね」などと微笑ましく受け入れていた。中には「あら、あなた新人さん?」と面識があるのに、まったくの別人と認識してしまう人もいた。

「イスラム教に改宗したんだぜ〜」とわざわざ個人的なことを公共の場でおおっぴらにする必要はないと思っていたのでしばらく黙していた。そのため、本気で単なるイメチェンだと信じ込む人もいれば、早々に好奇心を抑えきれずに、「ムスリムになったの?」と聞いてくる輩と人それぞれだ。どう見えるかはやはりその人次第らしい。

黙していた理由は他にもあり、やはり会社での立場というものがある。ムスリムの同僚もいるが、欧米系の上司もいたりするので決しておおっぴらにはしたくない。世俗的な人間からすれば下手すれば、「こいつ大丈夫か?」と捉えられるのではないかと思ったからだ。

一方で予想外だったのは、ムスリム同僚の反応だ。今まではあまり交流がなかった人間でさえも、ムスリムに改宗したと知った途端手のひらを返したように声をかけてくることが多くなり、協力的な姿勢をみせてくる。

「困ったことがあればなんでも言ってくれ。なんせ俺たちはもう兄妹だからなっ」

などと急に馴れ馴れしい扱いである。別に困ったことはないので、「まあ何かあれば相談しますわい」といって流しておいたが、一体この奇妙な共同体の仲間意識は何なのだろう。ムスリムになった途端、昨日までは赤の他人、同僚だったのが、いきなり兄妹に昇格する。不思議な世界だ。

ムスリムになったと知った矢先から、「おい、日本人でムスリムになったやつの動画があるぞ」、「イスラム教について疑問があればこのアプリを見ればいい。俺もよく使ってるんだ」とか「日本語版のクルーアン(イスラム教の聖典)をみつけたぞ!」と毎日のようにこうしたイスラム教関連の教材が周りのムスリムたちによって紹介されるようになったのである。

本やネットでもイスラム教の情報は手に入るし、そちらで勉強する方が手軽ではあるが、私はあえて周りの人間との対話や対話で得たものを通して学ぶことにしている。ネットや本だとやたらと専門用語が多く小難しく頭に入ってこないが、対話だとすんなり理解できるからである。

また学術的な内容であれば本を読んだり、日本でも勉強できるが、ドバイだからこそ世界中からやってきているムスリムの話を直接聞くことができる。その機会を最大限に活かしたい。教義うんぬんよりも、現代の人々が考え、実践する生きたイスラム教を見てみたいのである。

また中には、「お前がムスリムになったから俺も今後は真面目に1日5回祈ることにするわ。俺そんな手本になるようなムスリムじゃないから、俺のいうことはあんま気にすんな」などと告白し始める先輩ムスリムも現れた。

今までは「俺はムスリムたい!」などとぬかし「ムスリムというのはな・・・」と語っていたのに。先輩、しっかりしてくださいよ。

さらにシリア出身のムスリム同僚は、「おめえがムスリムに改宗したとシリアのおばさんに伝えたら、おばさんも喜んでたぜ」と報告。まさかシリアのおばさまにまで祝福されることになるとは。

このようにムスリムたちからはことごとく「おめでとう!」などと言われ歓迎を受けたが、非ムスリムたちからは「その新しいファッションええやん」といった世俗的な反応である。

宗教と世俗が交差するドバイで見えた2つの反応。この反応の違いが見えるのも多文化都市ドバイゆえなのかもしれない。