無税天国の終焉?ドバイで「罪税」が導入開始

これまで散々ドバイは無税天国だぜー!とのさばってきたが、ついにドバイも財政的に耐えきれなくなったのか、ついにあるものに税金を導入始めた。その名も「罪税」である。なんともおぞましい税金の名目ではある。一体この聞きなれない「罪税」とは一体なんなのか。

「罪税」というのは、タバコやエナジードリンク、砂糖を多く含むソフトドリンクにかけられる税のことである。タバコは100%、ソフトドリンクは50%の税金がかかる。どれも健康を損ねそうなものばかりである。


石油価格の下落によりUAE政府の財政が厳しくなったことが税金導入に踏み切った大きな要因とのこと。またUAEでは2018年1月から一部の商品に対して付加価値税(VAT)の導入が予定されているが、低所得者に優しい国なのか日常生活でよく消費する食品などに関してはVATの対象から外れている。

「罪税」の対象となったタバコだが、ドバイの喫煙率は2016年時点でドバイ政府の公式発表によると21%である。しかし実際はもっと高いのではないかと思う。ドバイで公表されている統計に関しては、統計手法が怪しいものがあるし、メディアによって数値に大きなばらつきがある。

政府公式の発表調査書で、

「神のおかげで、なんと3,298もの家族にインタビューできたのれす!」などと堂々と抜かしているあたりからうさんくささがわかるだろう。

ドバイは喫煙天国だ。外であればとにかく皆おかまないなしに、スパスパやっている。ほとんどのレストランでもタバコが吸える場所がある。ドバイに長らく住んでいる友人に聞けば、今では全館禁煙のモールの中でもタバコが自由に吸えた時代があったのだとか。またモール内でのアルコール提供もOKだったらしい。世界中から観光客が集まる今のドバイの姿からは信じられない話である。

「モールでタバコを吸ったら商品に臭いがつくじゃないか」というと、「あの頃は誰もそんなの気にしていないで買ってたぜ」と、ひと昔前のドバイ住民たちは、ちっちゃいことは気にしない性格だったよう。

一方でエナジードリンクやソフトドリンクへの課税は、UAE人(エミラティ)の肥満抑止に一役買うのではないかという見方もできる。なぜなら、車社会、そもそも人間が歩く場所が限られている(ドバイは車が移動しやすい車フレンドリーの都市である)、日中の気温が40度以上を超える夏が半年近く続くといった肥満の温床が、そこかしこにあるのがドバイの暮らしなのである。

その上、UAE人は酒を飲まないせいか甘いもの好きである。モールに行けば、カフェではUAE人のおっさんやお兄さんが野郎同士でパンケーキやケーキなどのスイーツでお茶をしている姿をよく見かける。

ぽっちゃりエミラティおっさん軍団。みな美しいまでにそろってぽっちゃりである。

WHOが2015年に発表した調査によると、UAE人の48%は肥満とされている。肥満は国内でもかなり深刻な問題で、ドバイではこうした肥満を撲滅させ、健康への意識を高めるためのチャリティーマラソンなんかを催している。しかしこうしたマラソン大会に出るのは肥満の当人たちではなく、健康志向の高い欧米人なんかが多く参加するので、大会の意義を問わざる得ない。

それにドバイ政府も気づいたのか、中にはウォーキングとマラソンをかけあわせたウォーカソンも開かれた。ウォーカソンなので建前上は競歩となるはずだ。しかしドバイ市民にかかれば、競歩ですらなく、ただのウォーキング大会なのである。もはやマラソンを掛け合わせる必要がない。


ウォーカソンの参加者。参加者はだらだらと歩きスマホをしているだけである。

こうした「罪税」は、所得に限らずドバイ市民全員に等しくかけられるのである。それゆえ税金の重みも人によってさまざまだ。高所得のUAE人からすれば、50%程度の税金は大したことがない。レッドブルの価格が100円が150円になったとしても痛くはない。

一方でこうしたエナジードリンクやソフトドリンクというのは灼熱の下、建築業に従事する低賃金の労働者たちにとっても欠かせないものだ。


外に5分といるのも困難な炎天下の建設現場で働く労働者たち。彼らの中には外の暑さに適応しすぎた結果、クーラーがガンガンにきく室内に耐えられないものもいる。

スーパーのレジに並んでいると、前に並んでいたのは青い作業服を着た労働者だった。気温40度を超える炎天下でも仕事をしている。そんな中仕事の息抜きにでもやってきたのだろうか、彼は6本入りのエナジードリンクのパックだけを買っていった。

おそらく建築現場の仲間たちとわけあって飲むのだろう。エナジードリンクだけをさげて、スーパーから出て行いく彼のかぼそい姿が印象に残った。

こうしたドバイの労働者の年収はおおよそ82万円。そして年間の食費は4万円だという調査結果が出ている。年間4万円、月にすれば3,300円に対して、100円が150円になるのはは大きな違いだ。水で我慢すればいいじゃないかという見方もできるが、暑い中働いている人間にとっては、炭酸が入ったソフトドリンクは喉に潤いを与えるささやかな至福でもある。


道端で出会ったバングラディシュからやってきた労働者たち。おっちゃんのメガネの位置が・・・

そんなドバイを支える労働者たちのことを考えれば、もっと別のことで財源を捻出してもいいんじゃないかと思ったりする。年収に関わらず、すべての市民から平等に搾取する。その意味で確かにこの税金は「罪税」だ。