英語ネイティブと非ネイティブのプレゼンを比べてわかったこと

会社の総会が行われた。総会といっても株主総会のようにお堅いものではない。要は会社のCEOを含めた経営陣らが今までの業績を振り返って、「みなさんのおかげでここまで会社は成長できたのれす!これからもみなはん、がんばりましょう!」と従業員に呼びかける決起大会のようなものである。

やはりドバイにある会社なので、こうしたイベントというのはそこそこ良さげなホテルで行われる。会場も会場なので、半数近くの人間(とくに女性)は、カクテルパーティーのごとくめかしこんでやってくる。会場の雰囲気は半ば社交パーティーと化していた。



決起大会の会場があるホテル。欧米人が優雅にプールでくつろいでいる。


会場からの眺め。無駄に景色がゴージャスすぎるぜ

そんな中で経営陣らによるプレゼンが次々と行われた。登壇者はUAEで本社を仕切る英語ネイティブのイギリス人やアメリカ人から中東各地の支社で働くモロッコ人、シリア人、エジプト人といった具合だ。

英語力とプレゼン力が比例するとは思っていないが、それでも英語がスラスラ話せた方がスムーズに伝えたいことを伝えられるし、情報も正確に伝わる。その点において、すごいプレゼンをするにはやはり英語ネイティブの方が有利なのではないかと思っていた。

特に英語でプレゼンをするとなると途端に緊張してしまい、うまく言葉が出てこなくなる私にとっては、英語ネイティブであるのはうらやましい限りなのである。

けれども英語ネイティブ、非ネイティブのプレゼンを見ていくうちにあることに気づかされる。もちろんネイティブの方が、しゃべりはスムーズであるし、情報量も多い。全体として見ればきれいに決まったプレゼンなのだ。

一方で非ネイティブたちは、非ネイティブであることを観念した上でプレゼンを行う様子が見られた。非ネイティブならではのプレゼン戦略というべきだろうか。

お国のなまりが強いあるモロッコ支社代表のプレゼンターは、「ま、僕のモロッコ訛りの英語を聞き続けるのはお聞き苦しいでしょうから、動画にてプレゼンさせていただきたいと思います!」といって早々に話すことを放棄。自ら喋らずとも作成した動画がすべてを物語ってくれる形式をとっていた。そんな方法があったのか!ずるくね?と思いつつも言いたいことは動画がすべて語ってくれるわけである。

モロッコで当初ビジネスを立ち上げたものの、会社の認知度も低く、モロッコのクライアントのレベルが、そもそもビジネスでインターネットやモバイルアプリを使うことすら知らないという状態。ドバイと同じサービスをモロッコでやろうとしても、そもそもそれを十分に理解し、使いこなすクライアントの知識がなかったわけである。

そこでまずはクライアントの知識を強化するトレーニングを行うことから始まり、路上で仕事をしていたクライアントがオフィスでパソコンをカチャカチャやりながら仕事をするようになったのです!という途上国でのビジネスサクセスストーリーのようなものだった。ビジネスを展開するというよりも、まるで途上国支援のような印象を受ける。

そんなストーリーがドバイで働く従業員にとっては新鮮だったのか、動画が終了し終わりの言葉を述べるモロッコ支社の代表に大きな拍手が起こった。

さらにドバイ本社で働くモロッコ人(いつもスティーブ・ジョブスのような格好をしている)は、プレゼンの冒頭で

「まさか自分が白人や日本人の前でプレゼンをする日がやってくるとは思いもしませんでした。なにせ僕は茶色い肌で英語の非ネイティブですからね」

といって人種差別すれすれの発言をしながら自虐ネタで笑いを誘っていた。白人というのは会社でも過半数を占めるヨーロッパ人をさしてのことだろうが、まさかたった1人しかいない人間の国名をあげるとは予想だにしていなかったのでこちらもあっけにとられた。

しかし同じことを私がいっても彼ほどの笑いは取れないだろうし、むしろ苦笑になってしまうだろう。つまり彼の人柄だからこそこうした発言が許されるわけである。

その後も、モロッコのスティーブ・ジョブスは、真面目な内容のプレゼンだというのに彼ならではの発言で要所要所に笑いをいれていく。

蓋をあけてみれば印象に残ったプレゼンというのは、英語ネイティブの情報盛りだくさんなプレゼンではなく、こうした非ネイティブによりプレゼンだったのである。なぜ彼らのプレゼンが印象に残ったのか。

それは、人柄のユニークさとストーリー性にあると思う。

人柄のユニークさで笑いを誘い、ストーリーで人を感動させる。どちらも感情に関わる部分だ。一方で英語ネイティブのプレゼンは情報量や情報伝達という上では優れているが、感情が揺さぶられるほどではない。

もしかしたら同じ非ネイティブとしてプレゼンを聞いていたため、非ネイティブへのバイアスがかかっていたのかもしれないが、周りの反応を見る限りでもやはりプレゼンの聞き手を揺さぶるには、人柄、ユニークさ、笑い、ストーリー性といったものが印象に残るプレゼンのキーになるのではないかと考えさせられた。