男は恋愛においてこんなに単純なのか・・・?と思った瞬間

玄人親日家ことパレスチナ人ヒシャームはやたらと話すのが好きである。恋愛や自分の銀行口座情報、車のローンの支払い状況など、そんなこと会社の人間に言わなくても・・・というような個人情報を自らだだ流しする人間である。

そんなヒシャームには気になっている相手がいるらしい。「最近気になる異性がいましてね」、ぐらいでとどめておくのが大人のマナーというものだろうが、個人情報流出マシーンと化した彼の暴走は止まらない。一応愛想で、「へえ、どんな人なん?」と聞くと、嬉しそうにわざわざ彼女の写真を見せてくる。


「!!!!」

これは・・・プレイ・ボーイの表紙か?と見紛うほど、そのセクシーオーラといい、格好といい。そのただならぬセクシーぶりに一種の寒気を覚えた。こいつは、「クモ」だ。エミレーツCAなんて比じゃない。

さらに聞けば彼女はアゼルバイジャン出身で、年齢は39歳。そしてヒシャームは24歳である。

これが美魔女というものか。

ヒシャームは、「彼女のことが好きでたまらない」というが、じゃあどこが好きなんだと聞くとはっきり答えられない。はたからみれば美魔女にやられているだけの若い男という単純な構図である。

そこで思わず、「いや、おまえはそいつが好きなんじゃない。ただその女と寝たいだけなんだ。それは生物学的にみて自然なことなのさ。だから一度寝ちまってすっきりしちまいな」

と簡単なソリューションを提供すると、「いや、逆にそれを皮切りに彼女に一層ハマってしまったらどうしよう」とさらなる悩みを提供してしまった。割り切れない様子を見せつつも、目をとろ〜んとさせ、美魔女のセクシービームにやられてしまっているようだ。

そんな状態なので、こいつがイスラム教徒で、婚前前の性交渉がどーのだのという論点はなおざりになっている。むしろ、イスラム教徒に対して、婚前前の性交渉を積極的にすすめる私って一体・・・

本題に入り、「いや、僕は彼女のことが好きで毎日Whatsapp(LINEみたいなもの)でメッセージするんですが、全然返事が返ってこないんですよ。後で返すねと言っておきながら、僕のメッセージには返さないでプロフィール写真を変えちゃったりして。そんな暇があるならなんで返信してくれなかったんだろうって」。

恋に落ちているやつはこれだから面倒である。

話だけで済ませばいいのに、これまた彼の悪いクセが出て、わざわざ実際の彼女とのやりとりのチャット画面を見せつけられる。

ふむふむ。絵文字1つだけで返信するあたりから、これは面倒くさいと思っている相手に対しての消極的な返事の手法だなと推察する。そして私は単純な戦術を彼に伝授した。

「ここのところずっと連絡し続けてるんだろ。ならばしばらく彼女に連絡するのをやめてみな。すると向こうが今までは連絡くれたのに、どうしたんだろう?と不安になって向こうから連絡がくるわい」

半ば冗談半分で言ったのだが、数日後驚きの報告がヒシャームからあった。

「姉さん!聞いてくださいよ。あの戦術を実行したところ、実は彼女の方から連絡があったんです。今まではあんなに連絡くれたのに、突然どうして連絡くれなくなったのって。あの戦術でうまくいきましたよ!」

我ながらまさかあんな単純な戦法が、百戦錬磨の39歳のセクシー美魔女に効くとは思ってもいなかったので、この単純なシナリオ展開ぶりに椅子から転げ落ちそうになった。単細胞か!

彼女から連絡があった後どうやら二人で飲みに行ったらしく(ちなみに一線は超えていない模様)、私はその密会があったであろう翌日、ヒシャームのある異変に気づいた。仕事中だというのに、帽子をかぶったままなのである。

別に帽子をかぶったまま仕事をしてはいけないというルールがあるわけではないが、人類の暗黙のルールとして着帽したまま仕事が許されるのは、アパレル業界のおしゃれ人間かアパホテルの社長ぐらいだろう。

個人的に言うと着帽したままオフィスで仕事をするのは違和感があることこの上ないが、もしかしたら世界では着帽で仕事をするのは意外と普通なことなのかもしれない。以前にも、イギリス人の同僚が会社から配られたちんけな帽子を着帽したまま、仕事をしていた。

そして誰もツッコまない。やはり世界はこれを異常ととらえないのか?これが世界の常識なのか?誰か世界の常識ってやつを教えてくれよ!とひとり島国の人間は心の中で叫んだ。

話をヒシャームに戻すと、着帽の理由は98%以上の確率で見当がついているが、あまりにも異変を醸し出しているのに誰もそれにツッコまないので、こらえきれずに聞いてしまった。

「なんで今日は帽子かぶったままなの?」

「いやあ昨日、噂の彼女と会いまして。帽子をかぶっていたら、帽子がキマってるね!と言われたんすよ」

いかにもおしゃれな帽子であればうなずけるが、ヒシャームがかぶっているのは推定1,000円ぐらいのどこにでもある、いやホームレスのおっちゃんがかぶっても違和感がないレベルの無難な帽子なのだ。

数日前のヒシャームの言葉を思い出す。今日は女友達に合うからおしゃれしていくのだ、と自慢げにいいながら見せつけられた帽子と同一犯である。そんな帽子をおしゃれアイテムと信奉するあたり、こいつのおしゃれセンスはいかがなものか・・・と心の中でつぶやいたことが思い出される。

帽子をディスることはさておき、気になる女に帽子を褒められたからといって、会社でまで着帽せんでもいいだろう。陳腐な男女の駆け引きに引っかかる相手のセクシー美魔女もしかりだが、この男、相当な単細胞と見えたる。

そんな私のツッコミはおかまいなしに、もはや彼女に褒められた嬉しさに舞い上がってしまった若き男子は、仕事中だというのにあからさまに目がとろ〜んとしてしまい、もはや仕事どころじゃなくなっている。

一体こいつの行方はどうなってしまうのだろう。