一人旅しかしたことがない人間が、グループ旅行をしてみたら

振り返ってみればいつも旅は一人旅だった。だからこそ「旅=一人旅」だと思っていたし、逆にグループで旅行するなどといった概念などこれっぽっちもなかった。思えば旅する先は、イスラエル、パレスチナ、イラン、スーダン、レバノン、ソマリアなどと同行者を募るにちと厳しい場所である。誘っても誰も行きたいなどとは言わないだろう。

なぜ一人旅を選ぶのか?


一人旅のいいところと言えば、気楽なところである。行きたいタイミングで、行きたいところに行けて自分の好きなように時間を使えるのが醍醐味である。同じ場所に行ったとしても、同行者に配慮して大して興味ないところに行ったりする必要がない。

一人旅をする人間からすれば、グループ旅行はまるで行きたくもないのに上司をたてるため、いやいや二次会に行くような社畜リーマン的な選択のように見える。

それにひとりだったらぷらぷらと気ままにひとり町歩きができるが、同行者がいると気を使って「疲れた?その辺の茶店でお茶でもしようか」と喫茶店に流れ込むのがオチである。

決定的なのは、ひとりで過ごす時間がないと死んでしまう内向的な人間にとっては、他人と四六時中いるのが苦痛なのである。他人といるとエネルギーが活性化する社交的な人間とは真逆で、他人と長時間いることでエネルギーが減っていくのである。グループ旅行に行くとすればまっさきに考えるのは、食事中や移動中に話がもつだろうかという心配なのだ。

さてそんな一人旅人間が、否応無しにグループ旅行に参加するハメになった。それがソマリア旅行である。金銭面からして、一人旅をするには高額すぎたのだ。一人の個人ツアーにすれば、1週間で約100万円。しかし3人だと60万円。金に負けて、一人旅のこだわりを譲り渡すことになった。

しかし心配はつきまとう。日本語ならまだしも、英語で四六時中会話しなければならないのである。70%の理解率で満足できる人間ではないので、理解率が100%クリアでないと自尊心が折れてしまう。そんな自尊心を折られながら旅をするのは過酷だ、と覚悟していた。

グループ旅行に参加したのはドイツ人とノルウェー人である。やはり欧米か。経済的、精神的なゆとりの上に好奇心は成り立つのだろうと実感する。ソマリアにくるぐらいだからやはり2人とも世間から見れば少しずれている。逆にそれが我々は世界でも選ばれたクレイジー集団なのだという一種の絆を深める要因ともなった。

 

辛い時こそグループ旅行の本領が発揮

そんな不安要素もりだくさんのグループ旅行となったが、結果としてはなんだか一人旅よりもよかったと言える。ソマリアという土地柄、自由に出歩くことはできないしあくまで決められたスケジュールで決められた場所を訪れるぐらいである。だから一人旅の気ままに異国の街を歩くという体験はできない。

そして何よりもソマリアで人生史上もっとも過酷な謎の胃痛&腹痛に襲われた時、旅慣れたドイツ人が差し出してくれた薬や彼らの心遣いが何よりも沁みた。これが一人旅だったらもっと惨めな思いをしたことだろう。

人と長時間過ごすことも苦ではなかった。ソマリアというと深刻に考えがちだが、二人は常に漫才調でソマリアの光景について意見を述べ合う。同じ風景を見てもこんなに感想が違うとは。つねにポジティブで笑いの風が吹き抜けていた。同じ場所にいながら、3人分の異なる体験や意見を吸収できるのだ。

 

今後はグループ旅行も悪くない?

これがグループ旅行の良さなのか。とはいえ、同じようなバックグラウンドの人間とありきたりの場所を旅行しても、「おいしいー」「かわいいー」「すてきー」しか飛び交わないようなキャピキャピグループ旅行になってしまうだろう。別に美しい景色や美味しい食べ物の感動を共有することなどどうでもいい。ソーシャルメディアでつぶやいて、いいね!を稼げればそれで承認欲求は満たされるじゃないか。

むしろ異なる人間たちが同じ体験をして、各々違うことを感じる差異を発見することが面白い。ソマリアに興味がある、ただその1点だけで結ばれた赤の他人たちで旅をしたからこそ、グループ旅行の良さを発見できたのかもしれない。ソマリアというハードな旅を終えた我々には、なぜか奇妙な連帯感が生まれていた。

ソマリアから帰国した後、ドイツ人の同行者からメールが送られてきた。ソマリアからドイツへ戻る途中、トランジットでオマーンの名の知れない島を旅するあたり、パワーが有り余る相当な冒険好き人間である。そして彼は彼なりにその後もアフガニスタン、中央アジアなどで旅を続けていたことはSNSを通じて知っていた。

フルタイムで働きながらそれだけ旅行できるなんて、やっぱりドイツの有給システムはすげえなと関心しながらも、メールでは「ミュンヘンの生活にはそろそろ飽きてきたよ。今の仕事もだんだん割にあわなくなってきたから別の仕事を探そうと思ってる。次はリビア、イラクあたりを旅行しようと思っているんだ。じゃーねー」といった具合である。

その一文を見た瞬間、躊躇する暇もなく彼の次の旅行に同行することを決意した。