正体不明のおっさんのアカペラに悩まされる日々

新居に引っ越したものの、正体不明のおっさんのアカペラを聞かされるハメになっている。それが、家の真向かいに位置するモスクから流れるアザーンである。アザーンというのは、モスクから流れる、ぼあああとしたおっさんの声であるというのが、非イスラム教徒からの見解である。

イスラム教徒からすれば、「みんな祈ろうぜ!神は偉大なり!イエーイ」といった半ば野外フェスに似たような感じの祈りの呼びかけである。1日5回の祈りの時間の度にこの呼びかけが行われる。


はじめのうちは、「ああ、パレスチナにいた頃を思い出すなあ」としみじみ感慨にふけっていたし、アラブっぽくないドバイ生活でアラブ感を醸し出すBGMでいいなあと思っていた。

通常であれば、「神は偉大なり。みんな祈ろうぜ!モスクに集まれい!」といった決まり文句を繰り返すだけなのだが、おっさんの気分がのっている時にはなにやらアカペラで楽しそうに歌いだすのである。実際におっさんを見ているわけではないので、楽しそうかどうかは未確認だが、声からして正体不明のおっさんがのっていることだけは断言できる。

おっさんにとっては、一人アカペラを大音響で歌うという爽快な行為に他ならないが、近隣住人からすれば騒音行為スレスレの行為である。しかしここはイスラームの国。宗教的な行為として容認されている。騒音扱いするもんなら、イスラーム教徒のブーイングはまぬがれない。実際、マレーシアでは「アザーンがうっせえ」とSNS上に書き込んだ男性が、やり玉にあげられ刑事事件までに発展するという事件もあったらしい。

日中であれば、スルーできるが、夜や朝方となると、もはやおっさんの一人アカペラを聞かされるという苦行に他ならない。しかも、祈りの呼びかけにツッコまざる得ない時もある。

「・・・・・・んあ、アッラーアクバル・・・・・・・んあっ・・・・・・んあっ・・・・んアッラー・・・・」

といったようになまめかしく、ためるのである。呼びかけるならアナウンサーのようにハッキリとスラスラ発音してくれ!正体不明のおっさんのなまめかしい吐息にツッコまざる得ない状況に追い込まれ、睡眠が妨害されたこともある。

夜の呼びかけは午後9時頃が最終なので、これをやり過ごせば夜は安泰である。しかし、朝は地獄だ。朝5時頃から、大音響でおっさんのアカペラが始まるのである。イスラーム教の休み、金曜日ともなるとおっさんの歌唱力は一層パワーが増すらしい。

というわけで週末だというのに、朝5時に起きてしまい今に至るわけである。週末だからといって、昼まで寝かせてくれない。おっさんはどうやら近隣住民を健康的な人間に仕立てあげたいらしい。