ユダヤ教の安息日、シャバットの過ごし方

安息日とよばれるユダヤ教の休日が毎週土曜日にある。しかしユダヤ教においては祭日は日没から始まり翌日の日没に終わる。なので、シャバットは金曜の午後(季節や場所によっても違うが大体17時から18時ごろになる)から土曜の18時頃にある。

安息日には、ほぼ全ての店が閉まり公共交通機関はストップする。なので休日にここぞとばかりにショッピングモールに行ったり、友達とレストランで食事をしたりするということができない。

更には移動手段がなくなるので、その間は急にある場所に行きたいと思っても行くことができない。といっても全くの軟禁状態になるわけでもなく、タクシー(シャバット料金といってやや割高になっている)や友達の車に乗せてもらえば移動することは可能である。

店やや割高であるが安息日や祝日も開店しているキオスクのような店がある。大体こうした店はアラブ人によって経営されており、というのもこのユダヤ教のシャバットであるから労働を慎むのはユダヤ人であるからだ。

では、具体的にはシャバットの日にはイスラエル人たちは何をするのか。

シャバットは5時頃に始まると言っても、店は通常14時や遅くて15時には閉店する、それは交通機関も同じだ。なので金曜の午前中は市場やスーパーマーケットや安息日用に食材を買い込む客でいつもごった返す。

安息日の夜にはたいてい家族や親せきで集まり、お母さんの大量の手料理を食べて過ごすというのが私が見てきたイスラエル人の家族の一般的な過ごし方だ。その料理の買い出しのため人々は金曜の午前から午後にかけて市場などで買い物をする。そのためいつもその時間帯は人でどこも店はごった返している。

さていよいよ安息日の始まりだ。

特別何をするというものも決まっていないが、敬虔な家庭ではシナゴーグへお祈りに行ったり、普通の家庭でも家族で集まり一緒に食事をするということが一般的な過ごし方だと思う。

ただ、敬虔な家庭では以下のような特殊な“安息日ルール”を守っている人がいる。この日は、あらゆる“労働”が禁止されている。

この労働、ただ単にお金をもらって働く“労働”のみならず、料理をしたり、書くことや掃除をしたりすることも“労働”とみなして行わない人もいる。大前提にあるのは“あらゆる生産”をしないということだ。

つまり火を使って料理を作ったりということだ。文字を書くということもその一部に含まれるので、ペンをもって何か書くということもしない。さらに厳しい家庭では、トイレットペーパーをちぎること(あらかじめ安息日の前にペーパーをちぎっておく)、お金に触る、髪もとかさないという話も聞いたことがある。しかしこれはかなり少数のレベルでの話だ。

また電気を使うこともしない。なのでインターネットやテレビはもちろんのこと、安息日中は電気のスイッチに触れないのである。これについては後ほどルームメイトのバットシェバとの安息日について詳しく述べる。

これだけのルールがあり、では一体何ができるかというと何もできない、少なくとも普通の休日の過ごし方を基準にすればである。

外に出てもバスは走ってないし、店もやっていない。ネットもテレビもしない(この辺は個人の裁量による)のであれば何をするのかと言えば、ほとんど何もしないのである。

もちろん本当に何もしないというわけではなく、公園にいったり、散歩をしたり家族と話したりすることはある。でもそれだけなのだ。休日にはショッピングにいそしんだり、映画を見に行ったりということはこの国ではないのだ。

ひどい時にはなんて怠け者なんだユダヤ人!と悪態をついていた。日本のように24時間、多くのものがフル稼働しており、私の父親のように一部の人々は土日関係なく働く国、日本からいきなり土曜日にはすべてがストップし、家族でゆっくりしましょうとでも奨励されるような国に来たわけである。何もかもがまるで静止するような空間にはとまどったし、落ち着かなかった。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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