寿司屋、ホテル業界、日本伝統。なぜ日本人が海外で働く場合は特殊な仕事になるのですか?

2012年から2015年まで元アラブ首長国連邦(UAE)特命全権大使を勤めたという筆者による「日本人だけが知らない砂漠のグローバル大国UAE 」という本を読んだ。特命・・・というと特命係長只野仁しか思いつかず、その特命感がいまいち理解できていない私である。役職だけをみればものすごく万能感にあふれている。

その一方で、その役職柄、一般市民では体験できないようなUAE皇族たちとの交流を踏まえた、UAEという国のおもしろさ、奥深さについて紹介された紹介された、これからドバイやアブダビで生活しようと思っている人には非常にわかりやすく解説されたとっつきやすい本である。


本書の醍醐味はその部分にあると思うのだが、その中にこれからUAEで働こうと思っている人のための働き方ガイドなるものも紹介されている。

「ドバイなんかではなくて、どうせ住むならニューヨーク、百歩譲ってもシンガポールだ」と反論されそうですが、筆者のお勧めはドバイやアブダビです。

確かにニューヨーク、シンガポールもグローバル化が進んだ代表的な都市ですが、モノには順序があります。最初から「本丸」を目指しても敷居が高すぎて跳ね返されてしまうかも知れません。UAEはグローバル人志望の日本人が最初に扉を叩くのに手頃感があり、格好の試行地なのです。

とりあえずUAEで修行して自身と実力をつけ、それからシンガポールなりニューヨークに進出するのも悪くないと思いませんか。

加茂佳彦「日本人だけが知らない砂漠のグローバル大国UAE」第8章 グローバル社会UAEで働くより

UAEがニューヨークやシンガポールに比べて生活インフラや治安において遜色がないということをあげつつ、単にブランド力で遅れを取っているだけだと説明している。それは確かに賛成だ。

私自身は、ニューヨークやシンガポールで働いたことはないけれども、アメリカやイギリスやシンガポールといった海外就職先として認知度の高い国で働いてドバイにやってくる日本人をみると、ああ、ドバイもそんな場所と同じく日本人にとって海外就職先になるのだなと思う。

それに、意外にもドバイで働いてみたいという人がいるという事実を知り、もしかしたらドバイは東南アジアに続き、若者がはじめて海外で就職するための場所にすらなるんじゃないかとさえ思うこの頃。ただ単に海外就職を考える上で、ドバイというのが彼らのリストになかっただけで、海外就職先としての認知度を上げていけば彼らのリスト入りできるんじゃないかと。

確かにUAE、特にドバイは日本人に限らず外国人労働者を多く受け入れ、外国人が働くチャンスであふれている。しかし一方で気になったのは、著者によるUAEで日本人が働くとしたら・・・という実践的な部分である。

実際にUAEで活躍する日本人たちの経歴を紹介した後に、UAEで働くならこうした職業がおすすめとして紹介されているのだが、その職業があまりにも偏りがあるように見えてならない。

本邦企業に依らず、ドバイ、アブダビで活躍する日系グローバル人の職種を調べてみると男女問わず圧倒的多数がホテル業界で働いています。グローバル人になる近道はホテルマン、ホテルウーマンになることです。

ホテルでの雇用なグローバル社会で生きていこうという日本の若者に好機を与えてくれます。ホテル業界での就労からコネを得て、異業種のより魅力的な仕事・職場に移っていく人も多いと聞きます。要するにホテル勤務はつぶしが利くのです。

加茂佳彦「日本人だけが知らない砂漠のグローバル大国UAE」第8章 グローバル社会UAEで働くより

ホテル業界、日本料理屋のオーナー、寿司職人、日本の伝統やデザインを伝える職・・・といったように4年制の大学を卒業して、就職する際には一般的な選択肢としてあがらないものばかりである。むしろ特殊である。

海外だからこそ日本人としての強みを生かして・・・ということだろうと思うが、UAEでは一般的な外国人が自国と同じような環境で働ける機会が多いとしながらもなぜ日本人に限ってはこのような職種に偏ってしまうのだろうか。

英語なくして日本というバックグラウンドを生かす、という前提にたつとこのような職に限定されてしまうかもしれない。それはドバイに限らず他の地域も同じである。

海外での仕事は単に海外で生活するための付属的なものでいいのだろうか。そこに日本と同じくキャリアアップを目指す道があったっていいんじゃないか。普通に新橋のリーマンが勤めるような仕事だってごまんとあるわけだから、ドバイでリーマンをするという選択肢だってあっていいはずだ。とドバイの広告代理店で働くしがないリーマンは思うわけである。

日本人が海外就職において一番ネックになるのは、英語という語学になるかもしれない。けれども英語さえできれば、日本と同じような感覚で就労、転職できるのがドバイの良さなのである。外国人へのビザ発行規制が厳しいがために働けない、といった風潮はほとんどない。

純ジャパで、日本の英語教育+YouTubeというガサツな英語学習環境で育った私ですらやっていける状況である。英語がそこそこできて、日本で評価される専門スキルや経験があれば国内での転職感覚同様にドバイは非常に参入しやすい。

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むしろ海外に出るための妥協として、日本人の特殊性しか活かせない仕事を選んでしまうのはとても寂しい。それが本当に自分のやりたいことならいい。けれども、海外就職のための足がかりとして、自分のキャリアに妥協してしまうことほどリスクなことはない。

ドバイだって、日本と同様のリーマン職にで働いたっていいじゃないか。国は違えども同じ業界、職種でキャリアアップしていく選択肢だってあっていいじゃないかとしがないリーマンは思うわけである。