プレミアムフライデーに対する海外の反応

日本の労働環境について周知していない人間であれば、そのニュースを目にした瞬間、「何やら日本が摩訶不思議な制度を取り入れたぞ」とまるで世にも奇妙な世界に入り込んだ気持ちになるだろう。

一方で、周知している人間であれば、そんなもんで景気も労働環境も変わるかいと冷ややかな目で苦笑してしまう。


家のテレビから流れてくるBBCニュースが報じた日本のプレミアムフライデーについての、私の反応は先ほどの、周知しているもの、周知していないものの中間ほどである。

長時間労働改善の目的を強調する海外メディア

日本のメディアでは、あくまで個人消費を推進するものとして取り上げられている一方で、ガーディアンやBBCを始めとする海外メディアでは、労働環境の改善対策として報じられているのが主流だ。

日本をめぐる労働環境といえば、電通の高橋まつりさんが100時間を超える残業により過労死をしたという事件が海外ではよほど衝撃だったのか、しきりのこの事件を持ち出し、日本の過労死について報道するメディアも見られた。

BBCでは「プレミアムフライデーで自殺者数減らせるか?」といった過激なタイトルをつけたニュース動画を配信。動画は、赤く塗られた背景に、「Karoshi (過労死)」という文字が浮かび上がり始まる。なんともホラーちっくな作りである。その後は高橋まつりさんの母親の動画が映し出される。

どうにもこうにも日本の劣悪な労働環境を報じたくてたまらない。それが海外メディアの姿勢なのかもしれない。

国民以上に政府の取り組みをあざ笑う海外メディア

問題は深刻だ。けれども推進しているのは、「夕飲み」だの「午後ブラショッピング」だのお気楽すぎる。こんなお気楽キャンペーンで長時間労働という問題が解決されるものか、と半ばこの取り組みをあざ笑うような論調が海外にはある。

問題は労働環境改善であり、その改善策として毎月金曜は15時に退社できるプレミアムフライデーを実施。算数ができる小学生であれば、問題と解法がてんで噛み合っていないそんな公式を見たら、これはどうかしてるぜと思うだろう。

いかにも「やはりニッポンは不思議で滑稽な国」感がいなめない。個人的にはそんな海外メディアによる嘲笑と、一方で彼らの方が真摯に日本の過労死環境について報じているようにも見える。

アメリカのブルームバーグは、「プレミアムフライデーにどんちゃん騒ぎのパーティーなんか期待するな!」といったタイトルで、取り組みに対し、国民の反応がいかにひややなかなものであるかを冷静に伝えている。

また同記事は、

金曜の午後は、無料のリムジンでシャンペンをいただく。ソフトバンクグループは、金曜の午後を楽しむためのお小遣いを社員に支援金として渡している。これが日本政府による、長年問題視されてきた労働環境改善の一策だ。

という冒頭から始まる。これだけを見れば、遠まわしに日本政府はアホですね、といっているようにしかとれない。けれどもそんな政府のもとで生きている日本人からすると、「そうなんですよ、アホなんですよ」と身内の恥を認めなければならない。

ちなみに冒頭でやり玉にあげられたのは、東京エキマチがプレミアムフライデーに際して、企画したイベントである。

日本のメディアが報じたプレミアムフライデーに関する調査も、単なる数値を報道するのではなくどこか「国民はそんなものに期待していないぜ」という論調をはさんでくる。

「日本人の40%はプレミアムライデーに期待せず。そんなもん必要ねい」というタイトルがつけられたプレミアムフライデーに関するアンケート調査グラフ。

プレミアムフライデーは何をする?というアンケート結果を持ち出し、大半の人々は「家でくつろぐ」という回答を見せつける。

個人消費を推進するはずのキャンペーンのはずが、家でくつろがれては消費につながらないぜよ、という日本政府の取り組みを遠まわしにあざ笑うという高度な手法を用いている。

海外メディアの方が日本国民を理解している?

このような海外メディアの冷静な論調は、どこか日本国民たちの冷ややかな対応と似ている。ハフィントンポストでは、すでに怒れる国民のブロガーが「プレミアムフライデーは労働者を馬鹿にした愚策」という記事を発表し、共感を集めている。

その対比で、労働環境の根本的な問題や改善について言及せず、個人消費の推進や商業的な取り組みにフォーカスする日本メディアは政府と同じくお気楽である。

日本のNHKでさえも、プレミアムフライデーに関してはこのような調子である。

プレミアムフライデーは停滞する消費を盛り上げようと、月末の金曜日は午後3時をめどに退社できるようにして、買い物や旅行などを楽しんでもらおうという全国的なキャンペーンで、24日にスタートしました。

このうち東京・霞が関の経済産業省では、世耕経済産業大臣が館内放送などで早めに仕事を切り上げるよう呼びかけ、午後3時になると職員が次々と職場をあとにしていました。

世耕大臣自身も退庁したあと、東京・渋谷区のデパートで初めてカーリングに挑戦し、「思ったより難しかったが、ふだん仕事をしている時間にやってみたかったことができて、とても楽しかった」と話していました。

個人消費を盛り上げようというキャンペーンなのに、カーリングとはいったいなんぞや?カーリングはパフォーマンスなのかもしれないが、キャンペーン立案者であれば、もっと「個人消費」らしいことをしてもよいのではないかと思う。

NHK「 プレミアムフライデー始まる 働き方の見直しにつながるか」より参照

しかしこの世耕大臣というものはうさんくさい。デパートのカーリングだなんて、土日でもできるではないか。わざわざ金曜日に早く帰れるからといってやるものではないだろう。

上から変わらなければ下も変わらないといったものではあるが、上がこんな調子だから下も辟易するのである。